●my favorite things 81 - 90
my favorite things 81(2013年2月26日)から90(2013年3月7日)までの分です。 【最新ページへ戻る】
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81. 1962年の『土曜日の本』(2013年2月26日)
82. 1963年の『土曜日の本』(2013年2月27日)
83. 1964年の『土曜日の本』(2013年2月28日)
84. 1988年のケヴィン・エアーズのライブ(2013年3月1日)
85. 1965年の『土曜日の本』(2013年3月2日)
86. 1966年の『土曜日の本』(2013年3月3日)
87. 1967年の『土曜日の本』(2013年3月4日)
88. 1968年の『土曜日の本』(2013年3月5日)
89. 1969年の『土曜日の本』(2013年3月6日)
90. 1970年の『土曜日の本』(2013年3月7日)
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90. 1970年の『土曜日の本』(2013年3月7日)
●『土曜日の本』その30
1970年の刊行。本文用紙に白色の紙のほかに青灰色の紙も使用しています。今号で初めてISBN(International Standard Book Number,国際標準図書番号)の10桁の番号(ISBN-10)が登場し,ダストラッパーやクロス表紙,刊記に掲載されています。
また,イギリスの通貨単位が,1971年2月13日から,1ポンド=20シリング=240ペンスから,1ポンド=100ペンスに切り替えられ,本の値段もこれまでのシリング単位の「50s net」からポンド・ペンス単位の「£2.50p net」と表記されるようになりました。1つの時代が終わり,次の時代への変わり目でもありました。
今号では,オリーヴ・クックが語る自己表現のアートとしての「収集」,ヴィクトリア期に発明された絹地に織り上げた絵スティーヴングラフ,蒸気式の農業用機械,初期の自転車や自動車のポスター,飲み物用グラスの収集,火打ち石・マッチ・ライターなど発火するもの,ローレンス・ホイッスラーのグラス・エングレイヴィング,作曲リチャード・ロジャースと作詞ローレンツ・ハートのソングライティング・コンビ,19世紀末に人気になった5人のバリソン姉妹のダンス,1920年代のミュージックホール,フレッド・アステアのダンスの魅力,1871年~1902年の商品カタログから,決闘用の対のピストルセット,西洋とイスラムの刀剣,英国近衛歩兵第一連隊歩兵の銀の像,西洋甲冑など戦闘用装身具や狩猟着,詩人バイロンの娘で数学者のエイダ伯爵夫人が暮らしたホーズリー・タワーズ,ヴィクトリア期の庭,ジョージ・マックレイの木版で描く橋などを扱っています。
■『The Saturday Book 30』の内容
The Saturday Book
EDITED BY JOHN HADFIELD
30
HUTCHINSON OF LONDON
£2.50p net / 50s net
ISBN 0 09 104560 6
THE SATURDAY BOOK was founded in 1941 by Leonard Russell and has been edited since 1952 by John Hadfield.
This thirtieth annual issue has been made and printed in Great Britain by The Anchor Press Ltd, Tiptree, Essex.
1970
『The Saturday Book 30』の目次
ダストラッパー: Philip Goughのイラスト。コーティング。
口絵: A. F. de Prades画のMiss Adeline Horsey de Horsey(1824~1915)の肖像。
003 title page
005 Introduction: J. H.
前2号の題材は人中心だったが,今号はもの中心で。コレクターの動向をリードしてきた『土曜日の本』で,収集についてオリーヴ・クックに書いてもらった。
006 Contents(目次)
♦007 Collectors' ITEMS
008-035 The Art of Collecting: OLIVE COOK
(フォト・エッセイ)オリーヴ・クックが,自己表出の方法の1つとして「収集」というアートについて語ります。EDWIN SMITHのカラー写真10点・モノクロ写真34点。
036-049 Stevengraphs AND OTHER COVENTRY RIBBONS: MICHAEL DARBY
(フォト・エッセイ)ヴィクトリア期の絹地に織り上げた絵。1860年代にリボン製造業者Thomas Stevens(1828~1888)が始める。カラー図版7点・モノクロ図版6点。
050-057 Down on the Farm: L. T. C. ROLT
(グラフィック・エッセイ)蒸気式の農業用機械。LESLIE THOMPSONのモノクロ挿絵3点。
058-073 Early Transport Posters: D. B. TUBBS
(グラフィック・エッセイ)初期の自転車や自動車のポスター。カラー図版4点・モノクロ図版10点。
074-084 A Glitter of Glass: ANNA HADFIELD
(フォト・エッセイ)飲み物用グラスの収集。古代から現在まで。モノクロ写真10点。
085-090 Strike a Light: AMORET AND CHRISTOPHER SCOTT
(エッセイ)火打ち石・マッチ・ライターなど発火するもの。
091-100 Pictures on Glass: Laurence Whistler
(フォト・エッセイ)ローレンス・ホイッスラーのグラス・エングレイヴィング。第10号・第16号に続いて3回目。モノクロ写真10点。
♦101 The Performing ARTS
102-109 The Years of Rodgers and Hart: JOHN FOSTER WHITE & IAN MacBEY
(エッセイ)作曲リチャード・ロジャース(1902~1979)と作詞ローレンツ・ハート(1895~1943)のソングライティング・コンビ。「Blue Moon」「My Funny Valentine」など。
110-120 The Barrison Sisters: PHILIP KAPLAN
(グラフィック・エッセイ)スカートをたくし上げるダンスで人気となった5人のバリソン姉妹。19世紀末ベルリンとパリで人気となり20世紀初頭ニューヨークで人気を失う。モノクロ図版11点。
121-124 Music Hall Memories: FRED BASON
(エッセイ)フレッド・ベイソンが回想する20年代のミュージックホール。
125-140 Astaire: J. J. CURLE
(フォト・エッセイ)フレッド・アステアのダンスの魅力。モノクロ写真17点。1974年にMGMミュージカル映画のアンソロジー『ザッツ・エンターテインメント!』(That's Entertainment!) でリヴァイヴァルするまで,アステアのダンス映画は見ることが難しく,ヴィデオの時代になってようやく改めて見ることができるようになりました。
♦141 THE LURE OF THE CATALOGUE
141-155 The Lure of the Catalogue
(グラフィック・エッセイ)古い商品カタログが持つ魅惑。「Army & Navy Stores」「Harrods」「LIBERTY」「Gamage's」の1871年~1902年のカタログから。モノクロ図版14点。
♦156 A CALL TO ARMS モノクロ図版1点。
157-170 Pistols for Two: W. KEITH NEAL
(フォト・エッセイ)決闘用の対のピストルセット。モノクロ写真16点。
171-183 A Flash of Steel: HOWARD L. BLACKMORE
(フォト・エッセイ)西洋とイスラムの刀剣。モノクロ写真14点。
184-191 The Bearskins' Silver: RONALD LEWIN
(フォト・エッセイ)英国近衛歩兵第一連隊歩兵の銀の像。PETER PARKINSONのモノクロ写真4点。
192-223 Dressed to Kill: JAMES LAVER
(フォト・エッセイ)西洋甲冑など戦闘用装身具や狩猟着。カラー図版4点・モノクロ図版20点。
♦224 ESSAYS IN THE PICTURESQUE
225-231 Horsley Towers: ROBERT TYRRELL
(フォト・エッセイ)William Currieが建てラヴレイス伯爵(1st Earl of Lovelace,William King-Noel,1805~1893)に譲られ,その妻エイダ(Ada)伯爵夫人が住んだホーズリー・タワーズ。エイダ伯爵夫人(1815~1852,数学者)は詩人バイロンの娘。MARIA TYRRELLのモノクロ写真4点。
232-245 The Victorian Garden: MILES HADFIELD
(グラフィック・エッセイ)ヴィクトリア期の庭。モノクロ図版6点。
246-256 Thoughts on Bridges: GEORGE MACKLEY
(グラフィック・エッセイ)橋について。ジョージ・マックレイの木版挿画11点。
▲オリーヴ・クックのコレクションから。
▲決闘用のペアの銃のコレクションから。
19世紀末ダンスで人気があったバリソン姉妹。
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89. 1969年の『土曜日の本』(2013年3月6日)
●『土曜日の本』その29
1969年の刊行。本文用紙として白色の紙のほかに青灰色の紙も使用しています。ISBNの前段階として9桁の番号を掲載しています。
前号が女性の図像中心だったので今号では男性の図像が多くなっています。1600年代から現在まで処女礼賛の詩,古代ギリシアから1960年代のミック・ジャガーまで男性像の系譜,誘惑の技術,男性を引きつけるための女性の化粧術,無声映画に見るさまざまな愛の形,冒険小説家ハモンド・イネスのラスコーなど洞窟絵画が見られる地域探訪,噴水の歴史,フェリックス・ケリーの描くロマンティックなアメリカ,女優フローラ・ロブソンとのデート,日曜画家J. B. プリーストリー,オーケストラ指揮者の肖像写真,パーカッション奏者の回想,庭木の装飾的刈り込み術,切り抜きおもちゃの劇場で主役になる盗賊の長,ジグソーパズルの歴史,手作りの陶器,男装の麗人などを取り上げています。
■『The Saturday Book 29』の内容
The Saturday Book
EDITED BY JOHN HADFIELD
29
HUTCHINSON OF LONDON
09 099280 6
THE SATURDAY BOOK was founded in 1941 by Leonard Russell and has been edited since 1952 by John Hadfield.
This twenty-ninth annual issue has been made and printed in Great Britain by The Anchor Press Ltd and bound by William Brendon & Son Ltd, both of Tiptree, Essex.
1969
ダストラッパー: Philip Goughのイラスト。コーティング。
箱: ダストラッパー同様。
▲見返し。ロンドンのデパートGamageの1893年クリスマスカタログからサイクリング用スーツ。
『The Saturday Book 29』の目次
001 モノクロ図版1点。。
002 カラー口絵: シャルダン(CHARDIN)の『La gouvernante』(1738)
003 title page
005-006 Introduction: J. H.
若さについて。「トレンディーな若い人(the young trendies)」も模倣したくなるものが含まれていると『The Times』紙に評されたこと。『土曜日の本』がつくってきた「trend」について。今後もごたまぜ路線で。
007 Contents(目次)
♦008 A LOOKING GLASS FOR LOVERS
009-017 Hymns to Hymen ANCIENT AND MODERN
(詩)1600年代から現在まで処女礼賛の詩。Thomas Otway,Dante Gabriel Rossetti,John Smith,Laurie Lee,Anonymous,Christopher Logue,John Dryden,Dannie Abse,Charles Sackvilleらの詩。
018-051 The Male Image: MADGE GARLAND
(グラフィック・エッセイ)紀元前400年ギリシアのアポロ像から1960年代のミック・ジャガーまで男性像の系譜。カラー図版1点・モノクロ図版50点。
052-063 The Art of Seduction: JAMES LAVER
(エッセイ)誘惑の技術。ホガースのカラー図版2点・モノクロ図版2点。
064-075 Arts of Attraction: RAYMOND LAMONT BROWN
(エッセイ)男性を引きつけるための女性の化粧術。古代から現在まで。モノクロ図版1点。
076-093 Love without Words: RODNEY ACKLAND(1908~1991,劇作家)
(フォト・エッセイ)少年時代に見た無声映画から学んだいろいろな愛の形。モノクロ写真11点。
♦094 PICTURESQUE TOURS
095 Autumn Night on the Dordogne: GEORGINA MASE
(詩)詩1編。ドルドーニュ川の秋の夜。
096-107 The Country of the Caves: HAMMOND INNES(1913~1998,冒険小説家)
(フォト・エッセイ)ラスコーなど洞窟絵画が見られる地域探訪。カラー図版1点・モノクロ図版5点。
108-125 ON FOUNTAINS: MILES HADFIELD
(グラフィック・エッセイ)噴水の歴史。MICHAEL FELMINGHAMのモノクロ挿画5点。
126-137 Romantic America PAINTINGS BY Felix Kelly: ROBERT HARLING
(グラフィック・エッセイ)フェリックス・ケリー(1914~1994)の描くロマンティックなアメリカ。カラー図版4点・モノクロ図版5点。
♦138 A MISH-MASH OF THE ARTS
139-144 A Date with a Dame: FRED BASON
(エッセイ)フレッド・ベイソン,女王から悪女まで演じ分けた女優のDame Flora Robson(1902~1984)とデートする。
145-156 A Holiday Painter: J. B. PRIESTLEY
(グラフィック・エッセイ)休日画家J. B. プリーストリー。カラー図版3点・モノクロ図版4点。
157-175 A Gallery of Conductors: CHARLES REID
(フォト・エッセイ)オーケストラ指揮者の肖像写真。ERICH AUERBACHのモノクロ写真。Thomas Beecham,Adrian Boult,Malcolm Sargent,Giovanni Batista Barbirolli,Pierre Monteux,Bruno Walter,Leopold Stokowski,Ernest Ansermet,Otto Klemperer,Rudolf Kempe,Benjamin Britten,Leonard Bernstein,Herbert von Karajan,George Solti,Colin Davisらの指揮写真15点。
176-191 The Man behind the Drums: JAMES BLADES(1901~1999,パーカッション奏者)
(エッセイ)イギリスを代表するパーカッション奏者による回想。モノクロ図版2点。
192-203 The Curious Art of Topiary: OLIVE COOK
(フォト・エッセイ)庭木の装飾的刈り込み術。EDWIN SMITHのモノクロ写真12点。
204-215 The Brigand in the Toy Theatre: GEORGE SPEAIGHT
(グラフィック・エッセイ)切り抜きのおもちゃの劇場で主役になる盗賊の長(Brigand Chief。イタリアのロビンフッド)。カラー図版4点・モノクロ図版8点。
216-232 Joys of the Jigsaw: LINDA HANNAS
(グラフィック・エッセイ)ジグソーパズルの歴史。カラー図版3点・モノクロ図版9点。
233-243 Making a Pot: TONY BIRKS
(フォト・エッセイ)手作りの陶器。モノクロ写真10点。
244-256 Male Impersonators: DAVID CHESHIRE
(フォト・エッセイ)男装の麗人について。モノクロ写真10点。
▲ひげを推す。
ジグソーパズルのページから19世紀前半のもの。
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88. 1968年の『土曜日の本』(2013年3月5日)
●『土曜日の本』その28
1968年の刊行。見返しは無地の青灰色の紙です。本文用氏に白色の紙のほかに青灰色・桃色の紙も使用しています。ISBN(International Standard Book Number,国際標準図書番号)の前段階として9桁の番号が,ダストラッパーやカヴァー,本文刊記に初めて掲載されています。
今号では『土曜日の本』の中心執筆者・読者層が若者だった1920年代を中心に,各世代の「若者」を特集しています。若者の前世代への反抗について,1960年代の「DOLLY(かわいこちゃん)」の解剖学,1959年の世界回想,1929年10月24日木曜日に終わる1920年代的なもの,セシル・ビートン撮影の1920年代の美女,1920年代前半のファッション,1920年代の文学愛好者の生活,78回転のレコード盤に聴く1920年代のミュージカル・コメディ,第1次世界大戦以前のレコード鑑賞,85歳の作家コンプトン・マッケンジーが回想する第1次世界大戦以前の若いころ,トゥールーズ・ロートレックの19世紀末パリ,1860年代のロンドン街歩き,ヴィクトリア期育ちの画家エリザベスと詩人アリスの姉妹などです。ほかにも,運河の舟旅,ハモンド・イネスのマチュピチュへの旅,幻灯機について,1900年代の幻灯用スライド「Ostler Joe」の誌上再現,画家ロドニー・ハバックのゴシック的想像力,19世紀の裸体画・裸体像などを取り上げています。
各時代の若い世代を取り上げることで,1968年の若い世代が特別のものというわけでなく,各時代の若い世代に反抗的な性格があったことを示す形になっています。
■『THE SATURDAY BOOK 28』の内容
THE SATURDAY BOOK
28
Edited by John Hadfield
Published by Hutchinson of London
45s net
09 089190 2
THE SATURDAY BOOK was founded in 1941 by Leonard Russell and has been edited since 1952 by John Hadfield.
This twenty-eighth annual issue has been made and printed in Great Britain by The Anchor Press Ltd and bound by William Brendon & Son Ltd, both of Tiptree, Essex.
1968
ダストラッパー: マイケル・ブレット(Michael Brett)のデザイン。コーティング。
『THE SATURDAY BOOK 28』の目次
口絵: Jules Chéretの「La Comédie」(1891年)
003 title page
005-006 Introduction: J. H.
ヴィクトリア懐古,若い男性のひげ復活,アール・ヌーヴォーやビアズリーの再評価に『土曜日の本』が果たした役割の自慢。現在(1968年)のヒッピーより20年代の「the Bright young People」のほうが無茶苦茶で面白かったのではないか。
007 Contents(目次)
♦008-009 In the Days of my Youth...
(詩)ジョン・ゲイ(JOHN GAY)の詩から。1920年と1968年のファッション画2点。
010-016 The Rebellious Years: James Laver
(エッセイ)前世代への反抗について。
017-036 Faces and Figures of the 'Sixties: AN ANATOMY OF THE DOLLY: Madge Garland
(フォト・エッセイ)DOLLY(かわいこちゃん)の解剖学。1960年代の女性アイドル・女優のカラー写真1点・モノクロ写真27点。
037-043 The Scene ... 1959: Kenneth Allsop
(エッセイ)「1960年代」の幕開けとなる1959年の世界動向回想。
044-051 The 'Twenties: Alec Waugh(1898~1981,作家。作家イヴリン・ウォーの兄)
(エッセイ)1929年10月24日木曜日に終わる1920年代的なものの回顧。ノエル・カワード(Noël Coward,1899~1973)ら第1次世界大戦の実戦には行かず,戦後に20歳代を迎えた世代。
052-067 Beauty in the 'Twenties: Cecil Beaton
(フォト・エッセイ)セシル・ビートン撮影の1920年代の美女。モノクロ写真15点。
068-081 The Forgotten Years 1919-1924: Doris Langley Moore
(グラフィック・エッセイ)1920年代ファッションを回想するときチャールストンを躍るときの短いスカートや短い髪で回想しがちだが,長く細いスカートなど1920年代前半のファッションも確かに存在したこと。1920年代前半に始まった新しい傾向として,胸やお尻の大きくない細身の女性像が理想的と受け入れられはじめ,モデルの体型が変わったこと。ダイエット記事や広告のはじまった時代。カラー図版4点・モノクロ図版7点。
082-084 Literary Life in the 'Twenties: A FOOTNOTE Fred Bason
(エッセイ)フレッド・ベイソンが回想する1920年代の文学愛好者の生活。
085-095 Records of the 'Twenties: John Moffatt
(エッセイ)78回転のレコード盤に聴く1920年代のミュージカル・コメディ。モノクロ写真5点。
096-103 By Disc to Dream: J. B. Priestley(1894~1984,作家)
(エッセイ)レコード盤『Highlights from Edward German's Tom Jones』が呼び起こした第1次世界大戦以前の回想。モノクロ写真1点。
104-111 The Scene .... 1909: Compton Mackenzie(1883~1972)
(エッセイ)85歳の作家コンプトン・マッケンジーが回想する若かりしころ。1909年のシーン。
112-137 Paris in the 'Nineties: Tudor Edwards
(グラフィック・エッセイ)パリの19世紀末。トゥールーズ・ロートレック(1864~1901,Toulouse-Lautrec)を中心に。カラー図版9点・モノクロ図版11点。
138-152 London in the 'Sixties: ‘ONE OF THE OLD BRIGADE’
(エッセイ)1860年代のロンドン街歩き。モノクロ図版1点。
153-165 A Victorian Upbringing: Raymund Fitzsimons
(エッセイ)ヴィクトリア期育ち。エリザベス(後の画家Elizabeth Butler,1846~1933)とアリス(後の詩人Alice Meynell,1847~1922)のトンプソン(Thompson)姉妹。モノクロ図版2点。
♦THE SATURDAY STORY
166-186 Debt of Honour: V. S. PRITCHETT
(小説)Thwaite夫人の9年間行方知れずだった夫が…。SANDRA ARCHIBALDのモノクロ挿絵3点。
♦PICTURESQUE TOURS
187-192 On Waterways: GEORGE MACKLEY
(グラフィック・エッセイ)運河を舟で旅する。ジョージ・マックレイの木版挿画6点とテキスト。
193-203 To Machu Picchu: Hammond Innes
(フォト・エッセイ)ハモンド・イネスのマチュピチュへの旅。カラー写真3点・モノクロ写真2点。
♦204 A Cabinet of Curiosities
205-208 Lantern Moralities: Olive Cook
(エッセイ)幻灯機について。モノクロ図版1点。
209-223 Ostler Joe: GEORGE R. SIMS
(フォト)1900年代の幻灯用スライド「Ostler Joe」の物語の誌上再現。オリーブ・クックとエドウィン・スミスの幻灯用スライド・コレクションから。幻灯用スライドガラスはJoseph Bamforthが作成。モノクロ図版15点。
225-235 The Gothic Visions of Rodney Hubbuck: John Betjeman
(グラフィック・エッセイ)画家ロドニー・ハバック(1940~)のゴシック的想像力。モノクロ図版10点。
236-256 Nineteenth-Century Nudes: William Gaunt
(グラフィック・エッセイ)19世紀の裸体画・裸体像。モノクロ図版21点。
▲60年代の「DOLLY」のページから。シャーロット・ランプリング,クラウディア・カルディナーレ,ジュリー・クリスティー。みな「DOLLY」から女優になりました。
▲世紀末のパリのページから。ルイ・ルグラン(Louis Legrand,1863~1951)の石版。
1968年のマチュピチュ観光。
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87. 1967年の『土曜日の本』(2013年3月4日)
●『土曜日の本』その27
1967年発行。本文用紙に白色の紙のほかに青灰色の紙も使用しています。
今号の前半は東洋趣味題材を集めています。ヨーロッパから現実逃避の対象としての東洋,エルサレムのイスラム教聖地「岩のドーム」,肖像・風景画家ジョージ・チネリーの描いた19世紀中国,18・19世紀イギリス王室の東洋趣味建築物,フランスの郵便配達人フェルディナン・シュヴァルが独力でつくりあげた夢の宮殿,17~18世紀ヨーロッパでの家具や陶磁器の中国趣味大流行,サイモン・ロディアが独力で建てたロサンゼルスのワッツ・タワー,西洋の東洋風ファッション,18~19世紀ヨーロッパでの中国趣味庭園などです。ほかに,コヴェントガーデンでのシェーンベルグ作品『モーゼとアロン』上演,ハリウッド最初の歌うスター,アル・ジョンソン小伝,ヴィクトリア期の魔術師,マック・セネット映画の水着美人,1768年にロイヤル・アカデミーが設立されるまでの経緯,レイモンド・ワトソンが描く水鳥,1780年~1820年ごろ「Pratt」という銘のある英国陶器の探索,ブリテン諸島で使われる言語の多様性の擁護,建築家グリーヴスが描く空想的乗り物,ハイチの支配者となった黒人奴隷出身のアンリ・クリストフなどです。
序文で,マルクス主義者は「現実主義(realism)」「実情調査(fact-finding)」「対決姿勢(confrontation)」という立場から「現実逃避(escapism)」に否定的だが,『土曜日の本』の基本姿勢は現実逃避だと開き直っています。「現実逃避(escapism)」に対する姿勢は,20世紀のアートを考えるとき,それぞれの立場を知る指標,あるいは試金石の1つになるのかもしれません。
美しいものが「現実逃避した者(escapist)」からも生まれるのですが,現実と直面せず「現実逃避した者(escapist)」が生んだ美しいものなど単なるまやかしではないかという考え方が根強くあって,それも20世紀を奏でる主旋律の1つだったような気がします。
■『The Saturday Book 27』の内容
The Saturday Book
EDITED BY JOHN HADFIELD
27
HUTCHINSON OF LONDON
40s net
THE SATURDAY BOOK was founded in 1941 by Leonard Russell and has been edited since 1952 by John Hadfield.
This twenty-seventh annual issue has been made and printed in Great Britain by The Anchor Press, Ltd., and bound by William Brendon & Son Ltd., both of Tiptree, Essex.
1967
ダストラッパー: Michael Felminghamのイラスト。コーティング。
▲見返しにMichael Felminghamのイラスト。
『The Saturday Book 27』の目次
口絵: Raymond Watson画「ハジロコチドリとひな(Ringed Plover with Young)」
003 title page
005-006 Introduction: J. H.
サンフランシスコの禅やジョージ・ハリソンのシタール,ベンジャミン・ブリテンと能など,東洋への関心の「New Wave」に乗ってみて東洋特集。
006 Contents(目次)
♦007 THE ORIENTAL DREAM
008-017 The Image of the East: JAMES LAVER
(エッセイ)ヨーロッパ視点で,現実逃避の対象としての東洋。
018-031 The Dome of the Rock: ALISTAIR DUNCAN
(フォト・エッセイ)エルサレムのイスラム教聖地,岩のドーム。カラー写真4点・モノクロ写真5点。
032-047 An Artist in Cathay: RAYMUND FITZSIMONS
(グラフィック・エッセイ)肖像・風景画家ジョージ・チネリー(George Chinnery,1774~1852)の描いた中国マカオ。カラー図版1点・モノクロ図版10点。
048-070 The Prince's Pavilion: CLIFFORD MUSGRAVE
(フォト・エッセイ)18・19世紀イギリス王室の東洋趣味建築物。CLARENCE JOHN LAUGHLINのモノクロ写真11点。
071-083 The Postman's Palace: Olive Cook
(フォト・エッセイ)フランスの郵便配達人フェルディナン・シュヴァル(Ferdinand Cheval,1836~1924)が独力でつくった夢の宮殿。Edwin Smithのモノクロ写真10点。
084-103 Chinoiserie Indoors: FRANK DAVIS
(フォト・エッセイ)17~18世紀ヨーロッパでの家具や陶磁器などの中国趣味大流行。モノクロ写真21点。
104-115 A Pleasure Dome in Los Angeles: CLARENCE JOHN LAUGHLIN
(フォト・エッセイ)サイモン・ロディア(Simon Rodia,1878~1965)が独力で建てたロサンゼルスのワッツ・タワー(Watts Towers)。カラー写真4点・モノクロ写真7点。サイモン・ロディアの肖像はビートルズの『サージェント・ペッパーズ』のジャケットにも登場しています。
116-135 The Oriental Look: JAMES LAVER
(グラフィック・エッセイ)西洋の東洋風ファッション。カラー図版1点・モノクロ図版17点。
136-144 Chinoiserie in the Garden: MILES HADFIELD
(グラフィック・エッセイ)18~19世紀ヨーロッパでの中国趣味庭園。モノクロ図版1点,MICHAEL FELMINGHAMの挿絵3点。
♦145 WESTERN NIGHTS ENTERTAINMENT
146-161 Orgy in Covent Garden: RICHARD HUGGETT
(エッセイ)コヴェントガーデンでのシェーンベルグ作品『モーゼとアロン』の上演。DONALD SOUTHERNのモノクロ写真3点。
162-174 The Singing Fool: ROBERT KELLY
(エッセイ)ハリウッド最初の歌うスター,アル・ジョンソン小伝。モノクロ写真8点。
175-183 Victorian Magicians: OLIVE COOK
(グラフィック・エッセイ)ヴィクトリア期の魔術師。モノクロ図版9点。
184-190 A Night in Swinging London: FRED BASON
(エッセイ)60歳のフレッド・ベイソンがスウィンギング・ロンドンの夜の愉しみを探索。バニーガールと並んで写るモノクロ写真1点。
191-199 The Bathing Beauty: CHARLES GIBBS-SMITH
(フォト・エッセイ)マック・セネット映画の水着美人。モノクロ写真8点。
♦200 COLLECTORS' ITEMS
201-208 The Birth of the Royal Academy: DEREK HUDSON
(エッセイ)1768年にロイヤル・アカデミーが設立されるまでの経緯。モノクロ図版1点。
209-217 Raymond Watson's WATERFOWL
(グラフィック)レイモンド・ワトソンが描く水鳥。ジョン・ハッドフィールドの讃辞。カラー図版4点・モノクロ図版5点。
218-235 In Quest of Pratt: GRISELDA LEWIS
(フォト・エッセイ)1780年~1820年ごろの「Pratt」という銘のある英国陶器の探索。ROBERT ALCOCKのモノクロ写真12点。
♦236 A CABINET OF CURIOSITIES
237-244 The Way We Speak: FRANK SHAW
(エッセイ)ブリテン諸島で使われる言語の多様性の擁護。
245-247 MORE FROM THE GREEVES PORTOFOLIO
(グラフィック)T. A. グリーヴスが描く空想的乗り物。カラー図版1点・モノクロ図版1点。
249-256 Black Monarchy: BRIAN W. ALDISS
(エッセイ)ハイチの支配者となった黒人奴隷出身のアンリ・クリストフ(Henri Christophe,1767~1820,軍人,ハイチ大統領,ハイチ国王)。モノクロ図版1点。
▲フランスの郵便配達人フェルディナン・シュヴァルが建てた夢の宮殿のページから。
▲サイモン・ロディアが独力で建てたロサンゼルスのワッツ・タワーのページから。
1910年代マック・セネット映画の水着美人ではAlice Maisonがお気に入りだったのでしょうか。
♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦
86. 1966年の『土曜日の本』(2013年3月3日)
●『土曜日の本』その26
1966年の刊行。本文用紙に白色の紙のほかに桃色の紙も使用しています。
今号の題材は,エドマンド・ブランデンの詩,ヴィクトリア期のヴァレンタイン・カード,生誕100周年の画家ジェイムズ・プライド,ヴィクトリア期のアメリカ建築,セイロン島の古代仏教都市,北アフリカの古代ローマ都市,アイルランドの初期キリスト教都市,クリスマスのナポリ散策,中世の狩猟,戦いにかかわる女性,グリーヴスの飛行機械,ヌーディズムの社会史,フレッド・ベイソンのモームとのお金をめぐる苦い思い出,庭造りにおける奇想の系譜,19世紀末オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子と男爵令嬢の心中事件,惨事の図像集,葬式・喪服など英国の死の流儀,古書オークションで見つけた女性の詩などです。
序文で,「Pop Culture」は永続性に敵対的だと述べて,どちらかというと「はかないもの(ephemera)」を扱う『土曜日の本』ではあるけれど,絶え間ない流行の変化で忘却していくことより,記憶に与したいと語っています。こうした発言は,新しいものを次々更新していく時代の感覚からすれば反時代的な姿勢になってしまいます。
『土曜日の本』を見続けてきて思ったのですが,異文化の紹介ということに関して,例えば日本の60年代,70年代において澁澤龍彦や種村季弘,由良君美らが占めた役割に相当する存在は,例えばイギリスで,あるいは,ほかの国々でどういう立場で存在したのかということが気になってきました。時期は違いますが,アーサー・ウェイリーは確かにそうした存在です。ただウェイリーだと澁澤龍彦にあった18禁の大人のおもちゃが充実しすぎている輸入雑貨店みたいな感じはありません。
一種の見立てというか,思考実験ですが,気に掛かる存在を「日本の○○」であったり「英国の△△」であったりと想定してみるのも面白そうです。「英国の澁澤龍彦」や「台湾の澁澤龍彦」は誰かを考えて,異言語文化で類似する存在を探してみるのも意味のあることかもしれません。特に相当する存在が見あたらない場合でも,存在しないことに意味があるような気がします。
■『The Saturday Book 26』の内容
The Saturday Book
EDITED BY JOHN HADFIELD
26
HUTCHINSON OF LONDON
40s net
THE SATURDAY BOOK was founded in 1941 by Leonard Russell and has been edited since 1952 by John Hadfield.
This twenty-sixth annual issue has been made, printed in England by The Anchor Press, Ltd. and bound by William Brendon & Son Ltd., both of Tiptree, Essex.
1966
ダストラッパー: ピーター・リリー(Sir Peter Lely)画のネル・グウィン(Nell Gwyn)の肖像とされる作品をもとにしたビーロ-(Biro)のイラスト。コーティング。
『The Saturday Book 26』の目次
口絵: 1803年のヴァレンタイン・カード
003 title page
005-006 Introduction: J. H.
不吉な数13×2である第26号。13号の時購入した孔雀のルシファーは元気(ジョン・ハッドフィールドの妻Anna Hadfieldが『芝生の孔雀(A Peacock on the Lawn)』を1965年に出版)。前号で画家ビアズリーを取り上げたら,各メディアが追随して人気となり,V&Aで回顧展まで開催されたと自慢。
007 Contents(目次)
♦009 Collector's ITEMS
010-014 Random Tributes to British Painters: EDMUND BLUNDEN(1966年,ロバート・グレイヴスの後を継いでオックスフォードの詩学教授に。)
(詩)英国画家をたたえる詩。
015-031 Valentines: ARTHUR CALDER-MARSHALL
(フォト・エッセイ)ヴィクトリア期のヴァレンタイン・カード。MIKE PETERSのカラー図版5点・モノクロ図版4点。
032-046 James Pryde: DEREK HUDSON
(フォト・エッセイ)生誕100周年の画家ジェイムズ・プライド(1866~1941)。モノクロ図版9点。
♦047 Picturesque TOURS
048-067 American Fantastica: CLARENCE JOHN LAUGHLIN
(フォト・エッセイ)ヴィクトリア期のアメリカ建築。モノクロ写真23点。
068-083 Ruined Cities of Ceylon: STEPHEN HARRISON
(フォト・エッセイ)セイロン島の古代仏教都市。カラー写真4点・モノクロ写真7点。
084-099 Sands of Time: JOHN GUEST
(フォト・エッセイ)北アフリカの古代ローマ都市サブラータ(Sabratha)とレプティス・マグナ(Leptis Magna)。モノクロ写真24点。
100-115 Glendalough The Monastic City: OLIVE COOK
(フォト・エッセイ)アイルランドの初期キリスト教都市グレンダロッホ。EDWIN SMITHのモノクロ写真15点。
♦116 A CABINET of Curiosities
117-129 Neapolitan Christmas: LAURENCE SCARFE
(グラフィック・エッセイ)ローレンス・スカーフェがクリスマスのナポリを散策。モノクロ挿画10点。
130-146 The Noble Art of Venery: MARCELLE THIÉBAUX
(グラフィク・エッセイ)中世の狩猟。カラー図版4点・モノクロ図版5点。
147-165 LADIES AT WAR: CHARLES GIBBS-SMITH
(グラフィク・エッセイ)戦争から女子プロレスまで,戦いにかかわる女性。カラー図版1点・モノクロ図版21点。
166-167 Greeves's Flying Machines: T. A. GREEVES
(グラフィク・エッセイ)建築家グリーヴスが描く飛行機械。カラー図版2点・モノクロ図版1点。
168-184 The Social History of Nudism: BERNARD DENVIR
(エッセイ)ヌーディズムの社会史。モノクロ図版5点。
185-188 Postscript to Maugham: FRED BASON
(エッセイ)モーム書誌をつくったフレッド・ベイソンのモームとのお金をめぐる苦い思い出。
189-198 Eccentrics in the Garden: MILES HADFIELD
(エッセイ)庭造りの奇想の系譜。MICHAEL FELMINGHAMの挿画3点。
♦199 THE SATURDAY BOOK STORY
199-209 Sentence of Life: T. O. BEACHCROFT
(小説)胃の痛みで病院に行ったBrian Russell-Hardy氏はある疑問を持つが…。
♦210 Endpapers on DOOM DRINK DEATH DISASTER
211-219 The Affair at Mayerling: TUDOR EDWARDS
(エッセイ)19世紀末オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子ルドルフと男爵令嬢マリー・ヴェッツェラがマイヤリングで心中した事件。モノクロ図版3点。
220-235 DISASTERS: OLIVE COOK & EDWIN SMITH
(グラフィック・エッセイ)天災から殺人まで,惨事の図像集。モノクロ図版47点。
236-250 The British Way of Death: AMORET & CHRISTOPHER SCOTT
(グラフィック・エッセイ)葬式・喪服など英国の死の流儀。モノクロ図版9点。
251-256 I Like It, Give Me More: John Moore
(グラフィック・エッセイ)古書オークションで見つけたHarriet Glazebrook(Mrs. Ebenezer Beavan,1847~1937)という女性の詩。モノクロ図版1点。
▲建築家が趣味で描いた空とぶ機械。
現実と虚構が入りまじる惨劇の現場写真。
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85. 1965年の『土曜日の本』(2013年3月2日)
●『土曜日の本』その25
1965年発行。本文用氏に白色の紙のほかに青色の紙も使用しています。
今号の前半は世紀末特集です。ヴィクトリア期からモダンの時代への変わり目,画家ジョン・シンガー・サージェント,アントニオ・ガウディの建築,ロンドン・女性・愛・宗教・黄金時代を主題にした1890年代の詩,画家ロバート・ビーヴァンの生誕100周年,自転車の黄金時代1890年代などを扱っています。ほかにも,タイのバンコクの寺院巡り,オランダ低地地方の風景,戦闘用ジェット機から撮った写真,オーストリアのインスブルック探訪,画家ジョン・タナード再評価,ミロのヴィーナスの来歴,ヴィネグレット(気付け薬入れ)のアート,にせ医者の社会史,操り人形の世界,ニューオリンズのベイズン・ストリートの長さ,タクシーに乗って撮るロンドンの街,小説における恐怖表現の変化,海辺の女性の図像など,雑多です。
今号には,詩人・美術批評家ハーバート・リードの寄稿があります。『土曜日の本』的な書き手ではないので,珍しいです。1970年代ぐらいまでよく読まれた美術批評家ですが,現在はどうなのでしょうか。
だれか画家の回想だったでしょうか,ハーバート・リードが部屋に入ってくると,それまで少年たちが無邪気に戯れあっているような雰囲気だった部屋の空気が,一瞬で凍り付いた,と回想している文章を読んだ記憶があります。
■『THE SATURDAY BOOK 25』の内容
25
The Saturday Book
EDITED BY JOHN HADFIELD
HUTCHINSON OF LONDON
36s net
THE SATURDAY BOOK was founded in 1941 by Leonard Russell and has been edited since 1952 by John Hadfield.
This twenty-fifth annual issue has been made and printed in Great Britain by The Anchor Press, Ltd. and bound by William Brendon & Son Ltd., both of Tiptree, Essex.
1965
ダストラッパー: オーブリー・ビアズリー(Aubrey Beardsley)作品をもとにしたビーロ-(Biro)のイラスト。コーティング。
『THE SATURDAY BOOK 25』の目次
口絵: ジョン・タナード(John Tunnard)の『Mirage』
003 title page
005-006 Introduction
『土曜日の本』のように長いスパンでギフトブックとして続いた年誌の例として,1827年から30年続いた『The Keepsake』がある。他にもいい年誌はあっても,なかなか長続きはしていない。『The Keepsake』より長続きしたいという宣言。
007-008 Contents(目次)
♦008 FIN DE SIÈCLE(世紀末)
009-016 The Turn of the Century: SIMON NOWELL-SMITH
(エッセイ)19世紀から20世紀へ変わり目。ヴィクトリアからモダンへの変わり目。
017-029 The Case of John Singer Sargent: RICHARD ORMOND
(エッセイ)画家ジョン・シンガー・サージェント。カラー図版3点・モノクロ図版5点。
031-039 Antonio Gaudí: SACHEVERELL SITWELL
(エッセイ)アントニオ・ガウディの建築。NORMAN PARKINSONのカラー写真3点・モノクロ写真3点。
040-054 Poems of the 'Nineties: CHOSEN BY JOHN BETJEMAN
(詩)ジョン・ベチェマンが選ぶ,ロンドン・女性・愛・宗教・黄金時代を主題にした1890年代の詩。
055-060 ROBERT BEVAN 1865-1925: J. WOOD PALMER
(エッセイ)画家ロバート・ビーヴァンの生誕100周年。カラー図版1点・モノクロ図版4点。
061-081 Aubrey Beardsley: W. G. GOOD
(エッセイ)オーブリー・ビアズリー再評価。2色図版6点・モノクロ図版14点。
082-095 A Pioneer of the Cinema: OLIVE COOK
(フォト・エッセイ)リュミエール兄弟ら映画の創世記の人々。モノクロ図版17点。
096-104 The Golden Age of the Bicycle: EDWIN SMITH & OLIVE COOK
(フォト・エッセイ)自転車の黄金時代1890年代。19世紀末の「自転車と女性ヌード」主題の写真も含む。モノクロ図版20点。
♦105 ESSAYS in the Picturesque
106-117 Temples of Bangkok: STEPHEN HARRISON
(フォト・エッセイ)タイのバンコクの寺院巡り。カラー写真4点・モノクロ写真5点。
118-124 Low Country Landscape: GEORGE MACKLEY
(グラフィック・エッセイ)オランダ低地地方の風景。ジョージ・マックレイの木版図版7点とエッセイ。
125-131 A Camera in the Clouds: PETER WARREN
(フォト・エッセイ)飛行する戦闘用ジェット機から撮った写真。モノクロ図版7点。
132-151 Innsbruck: TUDOR EDWARDS
(フォト・エッセイ)オーストリアのインスブルック探訪。GERTI DEUTSCHのモノクロ写真15点。
♦152 Rediscovery
152-165 The World of John Tunnard: HERBERT READ(1893~1968,詩人・美術批評)
(エッセイ)ハーバート・リードによる,画家ジョン・タナード(1900~1971)再評価。カラー図版4点・モノクロ図版8点。
♦166 A CABINET of Curiosities
167-175 A Slight Case of DISARMAMENT: BERNARD DENVIR
(エッセイ)ミロのヴィーナスの来歴。モノクロ図版1点。
176-183 The Art of the Vinaigrette: ERIC DELIEB
(フォト・エッセイ)ヴィネグレット(気付け薬入れ)のアート。RAYMOND FORTTのモノクロ写真4点。
184-192 The Social History of THE QUACK: AMORET & CHRISTOPHER SCOTT
(エッセイ)にせ医者の社会史。モノクロ図版1点。
193-202 A Troupe of Puppets: GEORGE SPEAIGHT
(エッセイ)操り人形の世界。モノクロ写真6点。
203-208 How Long is BASIN STREET?: FRED BASON
(エッセイ)ロンドン在住のフレッド・ベイソン氏,ニューオリンズのベイズン・ストリートの長さを調べる。
209-224 A CABBY WITH A CAMERA: MAX GREEN
(フォト)タクシーに乗ってロンドンの街を撮る。モノクロ写真23点。
225-239 The Changing Face of Horror: ALAN WALBANK
(エッセイ)19世紀から20世紀にかけての小説における恐怖表現の変化。
240-256 LADIES AT SEA: CHARLES GIBBS-SMITH
(フォト・エッセイ)海辺の女性の図像。モノクロ図版23点。
▲『土曜日の本』を一般化・普及のものさしと考えれば,ガウディも1965年ぐらいから一般知識的存在となり,なじみ深いものになり始めたわけです。
▲ビアズリーがおなじみの名前になることにも『土曜日の本』は先導役をつとめます。
19世紀末の自転車ブームのページから。
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84. 1988年のケヴィン・エアーズのライブ(2013年3月1日)
2月18日のケヴィン・エアーズ(Kevin Ayers,1944~2013)の訃報で,いろんなことを思い出します。何といっても,1960年代後半から1970年代にかけてシンボル的存在だった人です。
参ったなあと思いながら,押し入れの奥にあるダンボール箱をひっくり返していたら,ケヴィン・エアーズのコンサートの半券が出てきました。1988年の初来日のときと2002年のライブの半券です。
私が出掛けたのは,1988年(昭和63年)12月21日水曜日の九段会館でした。まだ昭和です。
1988年のケヴィン・エアーズ初来日のとき,出掛ける前は,もしかしたら,もう駄目なのかもしれないという不安があったのですが,その夜のケヴィン・エアーズは,予想を超えていました。ほんとうに素晴らしいライブでした。危惧など優雅に笑い飛ばすように吹き払ってくれました。「職業=奇人(a professional eccentric)」と自称するだけのことはあります。最高でした。
今思うと,1988年というのは中途半端な年だった気もしますが,それでも集まってきた人たちの期待と熱を,音楽の力に変えることができるパフォーマーであることを見せてくれました。
その夜のメンバーは,1988年2月にヴァージンからリリースされた『Falling Up』の参加メンバー。1974年以来のケヴィンのギタリスト,オリー・ハルソール(Ollie Halsall,1949~1992)。ライブでのオリー・ハルソールのギターは天翔る勢いで,確かにXTCのアンディー・パートリッジにとってギターヒーローだったことを納得させるヴィルトゥオーゾぶりでした。ドラムとベースは,当時ケヴィン・エアーズが暮らしていたスペイン勢で,ベースがMarcelo Carlos Fuentes,ドラムスがTony Vazquezという見慣れない名前でしたが,出来る人たちでした。
1988年7月に事故で亡くなったニコ(Nico,1938~1988)に捧げます,とケヴィン・エアーズがコメントして,
Kevin Ayers『Bananamour』(Harvest,1973)
に収録されていたニコへのトリビュートソング「デカダンス(Decadence)」を演奏したことも記憶に残ります。
多幸感みたいなものにつつまれていた帰り道,世の中とずれていても音楽はだいじょうぶなのだと,妙にほっとしたことを覚えています。
そうだそうだ。ライブの翌日,小さな美術書専門店に立ち寄ったら,BGMがヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコだったのではなかったか。まったく。なんでこんなことを覚えているのでしょうか。
このときの1988年12月のライブ音源と思われるものは,『SPANISH TROUBADOUR』というブートレッグなどで聴くこともできますが,繊細な録音ではありません。会場だった九段会館は,2011年(平成23年)3月11日東日本大震災で死亡事故が起こり,2011年4月に廃業になっています。
2002年のライブも見ることができたのですが,この時は何かが欠けているという印象が強く残りました。相棒オリー・ハルソールがいなくなったことは,大きかったのだと思いました。
オリー・ハルソールと組む以前の
Soft Machine『The Soft Machine』(ABC/Probe,1968)
Kevin Ayers『Joy of a Toy』(Harvest,1969)
Kevin Ayers『Shooting at the Moon』(Harvest,1970)
Kevin Ayers『Whatevershebringswesing』(Harvest,1971)
Kevin Ayers『Bananamour』(Harvest,1973)
といったソフトマシーンのファーストや初期ソロ作も大好きですが,これらのアルバムは後追いになるので,気持ちとしてちょっと距離感があります。でも,友達の家でどのアルバムもよく聴かせてもらっていました。その記憶と結びついています。ラジオで掛かるタイプではありませんでしたから,レコードを持っている人がいて,初めて聴くことができるタイプの音楽でした。日付が読み取れる同時代を生きたという意味ではオリー・ハルソールと組んでからのアルバムは,文字通り共に歩んできた作品で,作品の評価を超えて愛着があります。
▲『Rainbow Takeaway』(Harvest,1978)
最初に自分で購入したケヴィン・エアーズのアルバムということで,いちばん愛着があります。スラップ・ハッピーのアンソニー・ムーアがプロデュースした作品であることも大きいです。それ以前のアルバムは友人の家で聴くもので,ほとんど後追いで聴きました。遅れてきた者です。全盛期を直には知らないわけです。このアルバムの次の『That's What You Get Babe』(Harvest,1980)でメジャーレーベルとの契約は切れてしまいます。
▲『Yes We Have No Mananas (So Get Your Mananas Today)』(Harvest,1976)
友人の家で何度も聴かせてもらったアルバムのひとつです。1976年,これから時代はパンクというときに,ぬるいアルバムかもしれませんが,大好きです。
▲『Sweet Deceiver』(Island,1975)
このアルバムから,オリー・ハルソールが1992年に亡くなるまで,ケヴィン・エアーズ第1の相棒になります。このアルバムのクレジットではOllie Haircutです。インナースリーヴの写真では2人の共作扱いになっています。エルトン・ジョンもゲストでピアノを弾いています。
▲『The Confessions of Dr. Dream and Other Stories』(Island,1974)
「Didn't Feel Lonely Till I Thought of You」でのギターソロで,初めてオリー・ハルソールがケヴィン・エアーズのアルバムに登場します。「お前のことを考えるまでは寂しくなかった=お前のことを考えると寂しくなった」というタイトルは,その後を考えると象徴的です。ブラスのアレンジは,後にペンギン・カフェ・オーケストラをつくるサイモン・ジェフス(Simon Jeffes,1949~1997)です。レコードジャケットのエンボス加工やコーティングは英盤ならでは仕上がりです。
1970年のKevin Ayers and The Whole Worldのメンバーは,2011年にデヴィッド・ベッドフォード(David Bedford,1937~2011)が亡くなり,2012年にロル・コックスヒル(Lol Coxhill,1932~2012)が亡くなり,今年,ケヴィン・エアーズが亡くなってしまいました。残ったメンバーのマイク・オールドフィールド(Mike Oldfield)は大丈夫でしょうか。
ホールワールドのドラムスはミック・フィンチャー(Mick Fincher)だったりロバート・ワイアット(Robert Wyatt)だったりしましたが,ミック・フィンチャーはホールワールド以後,名前を見ません。
懐かしい顔も,みんないなくなってしまいます。
♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦
83. 1964年の『土曜日の本』(2013年2月28日)
●『土曜日の本』その24
1964年発行。前号はクリスマスの3週間前に完売し,プレゼント本として安定した人気を保っています。白色の紙のほかにグレイ・桃色の紙も使用。印刷諸経費の高騰を理由に今号では箱入れをやめたと,ダストラッパーに但し書きがありますので,この号は箱なしで完本です。ページ数もこれまでの288ページから256ページに縮小しています。
今号は前半女性,後半男性と分けていますが,ごたまぜ感に変わりはありません。女性の画家たち,建築・家具などの写真で構成する家庭アルファベットAからZまで,4人の恐れを知らぬ女性旅行者,エリナー・ファージョンの詩,恋する女性を表現する言葉やイメージ,「シャル・ウィ・ダンス?」,2匹のカワウソとの生活,ローレンス・スカーフェのマルタ滞在記,19世紀末の伝説の力持ちユージン・サンドウ,熱血学園小説作家チャールズ・ハミルトン,消防団の社会史,ブライアン・オールディスが語るSF雑誌の表紙アート,古代エジプトからビートルズまで髪型小史,スクール・ネクタイ小史,ステッキへの挽歌,アルチンボルドの顔の絵,1890年代マディソンスクエアの名物男トレイン,母親が少女時代にオスカー・ワイルドと朝食をともにした話,フレッド・ベイソンの日記論などです。
懐古専門といいながら,ビートルズの髪型には関心があったようです。
■『THE SATURDAY BOOK 24』の内容
THE SATURDAY BOOK
24
EDITED BY JOHN HADFIELD
PUBLISHED BY HUTCHINSON
36s.net
THE SATURDAY BOOK was founded in 1941 by Leonard Russell and has been edited since 1952 by John Hadfield.
This twenty-fourth annual issue has been printed by The Anchor Press, Ltd., and bound by William Brendon & Son Ltd., both of Tiptree, Essex.
1964
ダストラッパー: フォード・マドックス・ブラウン(Ford Madox Brown,1821~1893)の『The Last of England』をもとにしたビーロー(Val Biro)のデザイン。コーティング。
『THE SATURDAY BOOK 24』の目次
口絵: Rachel Ruysch(1664~1750)の『Flower Piece』
003 title page
005-006 Introduction: J. H.
前号はクリスマスの3週間前に完売。アメリカでは「free」「darling」「new」の3つの言葉があると売り上げを伸ばすという話を聞く。確かに前号に「The New Jewellers」もあったが,外は「old」なものばかり。とはいえ,売れるにこしたことはないので,今号の序文では「free」「darling」「new」の3語を使ってみる。
007-008 Contents(目次)
♦009 A LOOKING GLASS FOR LADIES
010-025 Women Painters: JAMES LAVER
(エッセイ)コンスタンス・マリー・チャーペンター,ルイーズ・ヴィジェ・ル・ブラン,スザンヌ・ヴァラドン,ベルト・モリゾ,グウェン・ジョンら女性の画家たち。カラー図版3点・モノクロ図版6点。
026-055 EDWIN SMITH'S Domestic Alphabet
(フォト・エッセイ)建築・家具などの写真で構成する家庭のアルファベットAからZまで。モノクロ図版83点。
056-071 Four Fearless Females: MADGE GARLAND
(エッセイ)4人の恐れを知らぬ女性旅行者たち。Miss Tully,Alexine Tinne,Isabella Bird,Daisy Bates。イザベラ・バードの日本旅行についても少し言及。モノクロ図版2点。
072-073 The Girl in the Baker's: JOHN MOORE
(詩)詩1編。菓子屋の女の子。
074-086 Conversation Pieces of the 'Sixties FASHION PLATES SET TO VERSE: ELEANOR FARJEON
(グラフィック・詩)エリナー・ファージョンが,1860年代のファッション画に寄せた詩5編。カラー図版4点・モノクロ図版1点。
087-107 LADIES IN LOVE: CHARLES GIBBS-SMITH
(グラフィック・エッセイ)恋する女性を表現する言葉やイメージ。カラー図版2点・モノクロ図版24点。
108-119 Shall We Dance?: JOHN PITT
(フォト・エッセイ)シャル・ウィ・ダンス? ジャズ・スキッフル・社交ダンス。モノクロ図版19点。
120-125 Room-Mates: MARY MARGARET REVELL
(エッセイ)2匹のカワウソとの生活。モノクロ図版1点。
♦126 LEAVES from a Sketch Book
127-137 Malta Victorious: LAURENCE SCARFE
(グラフィック・エッセイ)ローレンス・スカーフェのマルタ滞在記。モノクロ挿画8点。
♦138 A MIRROR FOR MEN
139-147 SANDOW The Strong Man: FRANK W. LANE
(エッセイ)19世紀末の伝説の力持ちユージン・サンドウ。モノクロ図版1点。
148-159 The World of Charles Hamilton: ROBERT KELLY
(エッセイ)熱血学園小説の人気キャラクター,ビリー・バンター(Billy Bunter)の生みの親,小説家チャールズ・ハミルトン。モノクロ図版5点。
160-169 FIRE! FIRE! THE SOCIAL HISTORY OF THE FIRE BRIGADE: AMORET AND CHRISTOPHER SCOTT
(エッセイ)消防団の社会史。モノクロ図版2点。
170-183 SF Art SCIENCE FICTION COVERS UNCOVERED: BRIAN W. ALDISS
(フォト・エッセイ)SF作家ブライアン・オールディスが語るSF雑誌の表紙アート。モノクロ図版13点。
184-189 Get Your Hair Cut!: OLIVE COOK
(フォト・エッセイ)髪型小史。古代エジプトから1964年ビートルズのジョージ・ハリソンの髪型まで。モノクロ図版14点。
190-197 The Old School Tie ― and all that: ANGUS McGILL
(フォト・エッセイ)スクール・ネクタイ小史。カラー図版3点・モノクロ図版1点。
198-201 LAMENT for the walking stick: MARGARET ALDRED
(エッセイ)近年,使われなくなったステッキへの挽歌。モノクロ図版1点。
♦202 A CABINET OF CURIOSITIES
203-217 Arcimboldo: BERNARD DENVIR
(フォト・エッセイ)画家アルチンボルドの顔の絵。カラー図版3点・モノクロ図版3点。
218-228 Citizen Train: MIRIAM ALLEN DE FORD
(エッセイ)1890年代ニューヨーク,マディソンスクエアの名物男トレインの話。
229-233 Breakfast with Oscar: BEVERLEY NICHOLS(1898~1983,作家)
(エッセイ)ベヴァリー・ニコルズの母親が少女時代,オスカー・ワイルド(Oscar Wilde,1854~1900)と朝食をともにした話。
234-238 Put it in Your Diary: FRED BASON
(エッセイ)フレッド・ベイソンが語る,ささいなことを日記につけることの意義。
♦239 THE SATURDAY BOOK STORY
239-256 THE TRAVELLERS: ANTHONY GLYN
(小説)ピーター少年が父親のウィングフィールド氏からお仕置きを受けたことで気づいた秘密…。リントン・ラム(LYNTON LAMB)のモノクロ挿絵1点。
▲「シャル・ウィ・ダンス?」のページから。
▲ブライアン・オールディスが語るSF雑誌の表紙アートのページから。
▲スクール・ネクタイのページから。
【P. S.】
「第5回 1964年のケヴィン・エアーズ最初の詩集(2012年10月10日)」で
少しだけ紹介したケヴィン・エアーズが2月18日に亡くなりました。
1944年8月16日 - 2013年2月18日
Requiescat in Pace Kevin, and thank you...very...much.
♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦
82. 1963年の『土曜日の本』(2013年2月27日)
●『土曜日の本』その23
1963年発行。本文用紙に白色の紙のほかグレイ・桃色の紙も使用しています。
第23号の内容は,英国の宝石デザイン,マリー・ローランサンの世界,E. O. ホッペのモダンな接写写真,19世紀フランスのファッション界を席捲したイギリス人ウォース,フレッド・ベイソンの生まれた1907年,ジェーン・オースティンが遠縁かもしれないという話,掘り出し物を買い損ねる話,街で見かける古い鋳鉄製ものづくし,古い絵はがき収集,馬・馬車・自転車・自動車。自動二輪車に乗る女性たち,煙突掃除人の社会史,「ブルマー」の由来となった19世紀アメリカの女性運動家ブルマー夫人,『もじゃもじゃペーター』の作者ハインリッヒ・ホフマン,タコやイカの生態,女性写真家ガーティ・ドイッチェが撮った1960年夏の日本,アメリカのヴァージニアに残る古きイングランド,古い写真や珍写真をつかった「長靴をはいた猫」再構成などです。
1964年開催の東京オリンピックが近いということもあったのでしょうか,女性写真家ガーティ・ドイッチェが撮影した日本の写真小特集があります。伊勢,伊豆,東京,能舞台,夜の繁華街,東京高島屋,日光,京都の舞妓,京都の庭などの写真です。名前のある人物として川端康成のポートレイトもありますが,「Isunari Kawabata」となっています。外国人の名前には結構無頓着なようです。
■『THE SATURDAY BOOK 23』の内容
THE SATURDAY BOOK
23
EDITED BY JOHN HADFIELD
AND PUBLISHED BY HUTCHINSON
35s net
THE SATURDAY BOOK was founded in 1941 by Leonard Russell and has been edited since 1952 by John Hadfield.
This twenty-third annual issue was made and printed in Great Britain at Tiptree, Essex, by The Anchor Press, Ltd.
1963
ダストラッパー: フラゴナールの絵をもとにしたビーロー(Val Biro,1921~)のデザイン。コーティング。
『THE SATURDAY BOOK 23』の内容
002 口絵: マリー・ローランサン(MARIE LAURENCIN)の『In the Park』
003 title page
005-006 INTRODUCTION: J. H.
『土曜日の本』がクラシック・カーや若い男性の髭など,ある種の流行源になっていること。前号のアール・ヌーヴォー特集以後,オークションでティファニーのグラスが最高値を付け,複数の回顧展も準備中と先見性を自慢。新しく違ったものを求める空気が世の中で強くなっているが,「流行」にはとらわれないようにしたい。
007-008 Contents(目次)
♦009 THE LOOKING GLASS OF TASTE
010-043 The New Jewellers: Graham Hughes
(フォト・エッセイ)1963年現在の英国の宝石デザイン。カラー図版5点・モノクロ図版29点。
044-059 The World of Marie Laurencin: Madge Garland
(エッセイ)マリー・ローランサンの世界。カラー図版4点・モノクロ図版6点。
060-076 Homage to Hoppé: Photographs by E. O. Hoppé
(フォト・エッセイ)ドイツ生まれのイギリスの写真家E. O. ホッペ(1878~1972)のモダンな接写写真。モノクロ図版16点。
077-083 The Age of Worth: Tudor Edwards
(エッセイ)19世紀フランスのファッション界を席捲したイギリス人チャールズ・フレデリック・ウォース(Charles Frederick Worth,1826~1895)について。『土曜日の本』第9号でも紹介。
084-089 1907 The Year I Was Born: Fred Bason
(エッセイ)フレッド・ベイソンが自分の生まれた年1907年について考えます。
090-100 On Discovering that Jane Austen was One's Great-Great-Great-Aunt: Beverley Nichols
(エッセイ)作家ベヴァリー・ニコルズ(Beverley Nichols,1898~1983)にとって,ジェーン・オースティンは遠い親戚ではないかという話が持ち上がる。その話のてんまつ。
♦101 COLLECTORS' ITEMS
102-111 Bargains I Have Missed: Alan Walbank
(エッセイ)掘り出し物を買い損ねる話。ということで,原則は「疑問が生じたのなら買っとけ。明日じゃ手遅れ(If in doubt, buy: tomorrow will be too late.)」
112-119 Any Old Iron ? : Edwin Smith and Olive Cook
(フォト・エッセイ)エドウィン・スミスとオリーヴ・クックによる,街で見かける古い鋳鉄製ものづくし。モノクロ図版25点。
120-135 Drop Us a Postcard: Peter Bull
(フォト・エッセイ)絵はがき収集。艶笑ものも含む。カラー図版24点・モノクロ図版26点。
♦136 THE CABINET OF CURIOSITIES
137-155 The Rochforts on the Road: Charles Gibbs-Smith
(フォト・エッセイ)Amelia Rochfort所有のアルバムから。馬,馬車,自転車,自動車,自動二輪車に乗る女性たち。カラー図版1点・モノクロ図版27点。
156-168 The Social History of the Chimney-Sweep: Amoret and Christopher Scott
(エッセイ)煙突掃除人の社会史。モノクロ図版3点。
169-171 The Huntswoman: Denys Blakelock
(詩)狐狩りをめぐる戯詩。セルウェル(Thelwell)のモノクロ挿画3点。
172-173 Thoughts of the Lady in the Background c. 1905: Eleanor Farjeon
(詩)エリナー・ファージョンの詩。モノクロ図版1点。
174-189 Mrs Bloomer: C. Neilson Gattey
(エッセイ)「ブルマー」の由来となった19世紀アメリカの女性運動家Bloomer夫人。カラー図版1点・モノクロ図版3点。
190-209 The Man Who Invented Struwwelpeter: Donald MacAndrew
(エッセイ)『もじゃもじゃペーター』の作者ハインリッヒ・ホフマン(Heinrich Hoffmann,1809~1894)。悪いことをした子どもたちの恐ろしい末路を描いた,怖くてユーモラスな絵本で,子どもには人気があるものの,詩人のW. H. オーデン(W. H. Auden,1907~1973)のように,その恐ろしさを大人になってから思い出す人も大勢います。カラー図版1点・モノクロ図版1点。
210-224 The Home Life of the Octopus: Frank W. Lane
(エッセイ)タコやイカの生態。モノクロ図版3点。
♦225 THE SATURDAY BOOK STORY
225-239 Bread and Roses: Nina Bawden
(小説)病院に入院している伝説の女優Mary Dooneが演じた生涯の大芝居とは…。David Chaplinのモノクロ挿絵2点。
♦240 PICTURESQUE TOURS
241-255 A Photographer in Japan: Gerti Deutsch(1908~1979)
(フォト・エッセイ)ガーティ・ドイッチェが1960年夏に約6週間日本に滞在したとき撮影した写真。モノクロ写真16点。
256-272 This Other England: H. Stafford Bryant
(フォト・エッセイ)アメリカのヴァージニアに残る古き「イングランド」。Philip Flournoyのモノクロ写真11点。
♦TALEPIECE
273-288 Puss in Boots: Retold by Olive Cook and Edwin Smith
(グラフィック・ストーリー)第16号の「青髭」,第18号「シンデレラ」に続いて,「長靴をはいた猫」を古い写真や珍写真をつかって,オリーヴ・クックとエドウィン・スミスが再構成しています。モノクロ図版58点。
▲乗り物に乗る女性図像のページから。
▲絵はがき収集のページから。
ガーティ・ドイッチェが撮った1960年夏の日本のページから。
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81. 1962年の『土曜日の本』(2013年2月26日)
●『土曜日の本』その22
1962年発行。ビートルズのレコード・デビューが1962年10月ですから,第22号はちょうど同じころ店頭に並んだわけです。写真の白い部分は剥がし跡です。痛みジャケットですいません。本文用氏に白色の紙のほかにグレイ・緑色の紙も使用し,下地に青・赤・黄の色を敷いた2色刷のかたちも多用しています。
今回は,「ごたまぜ(mish-mash)」感が濃厚になっています。絵画・彫刻作品中の子供像,故郷に帰るということ,アール・ヌーヴォー再評価,南アフリカのロココ的な建築物,アメリカン・ゴシックといわれる建築物,ジョン・オコナーが描く運河船のバロック的装飾,イギリスの都市郊外の建築,ロビンフッド伝説,ウェールズの義賊ティム・ション・カッティ伝説,18世紀の大泥棒デッィク・ターピン伝説,伝説の獣サラマンダーの歴史的考察,シャム双生児の歴史的考察,イタズラ好きの詩人ウィリアム・ホレス・デ・ヴィア・コール,1900年ごろの女性ヌード写真帖,決闘の社会史的考察,1900年前後のアメリカのゴールドラッシュ,世界各地の踊り子の社会史的考察,空を飛ぶ女性,19世紀から20世紀の女性の髪型,初老独身男性が新しいハウスキーパーを求める話などを取り上げています。
『土曜日の本』がアール・ヌーヴォーやアール・デコを取り上げ再評価したことで,流行遅れということで骨董市などではゴミ扱いだったアール・ヌーヴォーやアール・デコ作品の評価額が上がってしまいます。
■『The Saturday Book 22』の内容
22
The Saturday Book
EDITED BY JOHN HADFIELD
HUTCHINSON
40s. net
THE SATURDAY BOOK was founded in 1941 by Leonard Russell and has been edited since 1952 by John Hadfield.
This twenty-second annual issue was made and printed in Great Britain at Tiptree, Essex, by The Anchor Press, Ltd.
1962
ダストラッパー: ダヴィッド(Jacques-Louis David)の作品をモチーフにしたW. McLaren(1923~1987)のイラスト。コーティング。
『The Saturday Book 22』の目次
002 口絵: J. S. COPLEY画『小さな庭師(THE LITTLE GARDENER)』
003 title page
005-006 Introduction: J. H.
前号は11月に売り切れ。今号はいつも以上に「ごたまぜ(mish-mash)」全開の『土曜日の本』。アール・ヌーヴォー再評価。孔雀は元気で,2羽の妻と8羽のヒナあり。
007 Contents(目次)
♦009 The Changing Face of Childhood
010-029 The Changing Face of Childhood: Madge Garland
子供時代の諸相。絵画・彫刻作品に見る子どもの図像。カラー図版6点,モノクロ図版30点。
♦030 SATURDAY Reflections
030-039 The Voyage Home: Richard Church
(エッセイ)故郷に帰るということについて。リチャード・チャーチ(1893~1972,詩人・批評家)は,岩波少年文庫に『地下の洞穴の冒険』『ふたたび洞穴へ』が収録されています。
♦040 A Symposium of STYLES
040-061 Art Nouveau: Barbara Morris
(グラフィック・エッセイ)アール・ヌーヴォーについて。カラー図版4点,モノクロ図版27点。
062-076 South African Rococo: Desiree Picton-Seymour
(グラフィック・エッセイ)南アフリカのロココ的な建築物について。デジレ・ピクトン=シーモアの木版15点と文。
077-109 American Gothic: John Maass(1918?~1991,建築史)
(グラフィック・エッセイ)アメリカン・ゴシックといわれる建築物について。カラー図版4点,モノクロ図版52点。チャールズ・アダムスとソール・スタインバーグのニューヨーカー系カートゥーンも2点。
110-119 Canal Boat Baroque: John O'Connor
(グラフィック・エッセイ)運河船のバロック的な装飾。ジョン・オコナー(1913~2004,画家)の2色木版8点と文。
120-140 English Suburban: Olive Cook
(フォト・エッセイ)イギリスの都市郊外の建築。Edwin Smithのモノクロ写真32点。
♦141 ROGUES and Vagabonds
142-150 The Robin Hood Mystery: John Pitt
(グラフィック・エッセイ)ロビンフッド伝説について。モノクロ図版10点。
151-158 Twm Shon Catti: John Moore
(エッセイ)ウェールズのロビンフッドといわれるティム・ション・カッティ伝説について。
159-170 Dick Turpin: Frank Morley
(エッセイ)18世紀の大泥棒デッィク・ターピン伝説について。モノクロ図版1点。
♦171 The CABINET of Curiosities
172-183 The Unnatural History of the Salamander: John Vinden
(エッセイ)伝説の獣サラマンダーについての歴史的考察。モノクロ図版2点。『The Unnatural History of ~』というタイトルは初めてです。
184-190 The Men who were Never Alone: Clive Beech
(エッセイ)シャム双生児についての歴史的考察。
191-203 The Joker in the Pack: David Gunston
(エッセイ)William Horace de Vere Cole(1881~1936,詩人)について。大がかりなイタズラで知られる存在。
204-219 Mr Schenk and his Draperies: Cuthbert Edge
(フォト・エッセイ)Charles Schenkの写真帖から。1900年ごろの女性ヌードのモノクロ写真20点。女性ヌード写真をまとまって紹介するのは初めてです。
220-231 The Social History of the Duel: Amoret & Christopher Scott
(エッセイ)決闘についての社会史的考察。モノクロ写真6点。
232-241 The Gold Rush: Tudor Edwards
(エッセイ)1900年前後のアメリカでのゴールドラッシュについて。モノクロ図版1点。
242-254 The Social History of the Nautch Girl: Mildred Archer
(エッセイ)世界各地の踊り子についての社会史的考察。カラー図版2点,モノクロ図版5点。
255-272 Ladies in the Air: Charles Gibbs-Smith
(グラフィック・エッセイ)ほうきから飛行機まで,さまざまな方法で空を飛ぶ女性についての考察。モノクロ図版21点。
273-284 Crowning Glories: Olive Cook
(グラフィック・エッセイ)19世紀から20世紀の女性の髪型についての考察。モノクロ図版20点。日本の芸者の写真も1点。
285-288 Find the Lady: Fred Bason
(エッセイ)初老独身男性が新しいハウスキーパーを求めるお話。
『土曜日の本』はアール・ヌーヴォー再評価の旗振り役を果たしました。