●my favorite things 71 - 80
my favorite things 71(2013年2月16日)から80(2013年2月25日)までの分です。 【最新ページへ戻る】
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71. 1953年の『土曜日の本』(2013年2月16日)
72. 1954年の『土曜日の本』(2013年2月17日)
73. 1955年の『土曜日の本』(2013年2月18日)
74. 1955年のオリーヴ・クックとエドウィン・スミス『コレクターズ・アイテム』(2013年2月19日)
75. 1956年の『土曜日の本』(2013年2月20日)
76. 1957年の『土曜日の本』(2013年2月21日)
77. 1958年の『土曜日の本』(2013年2月22日)
78. 1959年の『土曜日の本』(2013年2月23日)
79. 1960年の『土曜日の本』(2013年2月24日)
80. 1961年の『土曜日の本』(2013年2月25日)
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80. 1961年の『土曜日の本』(2013年2月25日)
●『土曜日の本』その21
1961年発行。『土曜日の本』21歳誕生日への招待状という体裁の箱やジャケットになっています。本文用紙に白色の紙のほかに,桃色・緑色の紙も使用しています。
内容も大人の年齢21歳を迎えたということで,「21」中心になっています。図版で振り返る1940~1961年,過去21年のファッション,過去21年の旅,過去21年の映画,過去21年の建築,過去21年のジャズ,過去21年の文学,過去21年のワイン,オリーヴ・クックとエドウィン・スミスの紙上想像博物館,フレッド・ベイソンと歩くロンドンの路上市,ローレンス・スカーフェのイタリア・スケッチ,オウムの社会史,ビートニク以前の19世紀のボヘミアン,フィリップ・ギブス,ハロルド・ニコルソン,ベヴァリー・ニコルズ,ルイス・マクニースらの「私が21歳になった頃」,『土曜日の本』21年の掲載図版からA~Z形式で抜粋などです。
今号の小特集「私が21歳になった頃」に寄稿している人たちは1877年~1907年生まれの当時50歳以上の世代で,これは『土曜日の本』の中心読者層の世代とも重なっていると思います。スウィンギング・ロンドンといわれる「若者文化」の60年代を迎えるわけですが,60年代の『土曜日の本』は当時50歳以上の世代が,その「若者文化」と向き合い,あるいは,向き合わなかったのかのドキュメントにもなるわけです。
巻末で48ページにわたって,過去に取り上げたものを懐古する企画をやっています。こうした後ろ向きの企画は『土曜日の本』らしいものですが,自らに適用すると『土曜日の本』自体の衰弱や終刊を連想させるものでもあって,危うい企画です。
■『THE SATURDAY BOOK 21』の内容
THE SATURDAY BOOK
21
EDITED BY JOHN HADFIELD
PUBLISHED BY HUTCHINSON OF LONDON
35s.net
THE SATURDAY BOOK was founded in 1941 by Leonard Russell and has been edited since 1952 by John Hadfield.
This twenty-first annual issue was made and printed in Great Britain at Tiptree, Essex, by The Anchor Press, Ltd, and was bound by Taylor, Garnett Evans & Company Ltd at Watford in Hertfordshire
1961
ダストラッパー: 金銀赤のストライプに『土曜日の本』21歳の誕生日への招待状メッセージ。コーティング。
箱: ダストラッパー同様。側面に「S. B. 21」。
『THE SATURDAY BOOK 21』の目次
003 title page Joris van Son(1623~1667)の静物画。
005-007 A MESSAGE FROM THE FOUNDER: LEONARD RUSSELL
創刊者レナード・ラッセルからのメッセージ。第1号は「大間違い(a Grave Mistake)」だった。2号・3号で図版重視したことで生き延びることができた。ローレンス・スカーフェをデザインに起用し,エドウィン・スミスとオリーヴ・クックを発見したことが幸運だった。二色肖像スケッチ1点。
008-009 INTRODUCTION: J. H.
創刊21年を迎えられたことへの感謝。アステア&ロジャースのダンス場面で祝う。モノクロ図版2点。
010-012 CONTENTS(目次)カラー図版2点。
♦013 THE LOOKING GLASS OF TASTE AND FASHION
013-048 ALL OUR SATURDAYS - A Picture History of Our Own Time: MONA PARRISH AND THE EDITOR
(フォト・エッセイ)図版で振り返るわたしたちの時代1940~1961年。カラー図版2点・モノクロ図版58点。1957年の見出しは「Sputoniks, Hula-hoops and Rock-'n'-roll」,1960年の見出しは「Youth, ah, youth!」で「ビートニクス(Beatniks)」の若い男女の写真を含む。
049-064 TWENTY-ONE YEARS OF FASHION: Ernestine Carter
(フォト・エッセイ)ファッションの1940~1961年。Philippe Jullianのモノクロ挿画16点。
065-073 TWENTY-ONE YEARS OF Travel: ELIZABETH NICHOLAS
(エッセイ)エリザベス・ニコルズ過去21年の旅の体験。
074-080 TWENTY-ONE YEARS OF Films: DILYS POWELL
(エッセイ)過去21年の映画。アメリカ映画中心。スターから反抗者(rebel)へ。
081-096 TWENTY-ONE YEARS OF BUILDING: Robert Harling
(グラフィック・エッセイ)過去21年の建築。John Smithのモノクロ挿画20点。
097-108 TWENTY-ONE YEARS OF Jazz: KENNETH ALLSOP (1920~1973)
(エッセイ)過去21年のジャズ。ジャズのハイブロー化。
109-116 TWENTY-ONE YEARS Hard Reading: DANIEL GEORGE
(エッセイ)書評家の見る過去21年の文学傾向。
117-126 Twenty-one Years of Wine: EDMUND PENNING-ROWSELL(1913~2002,ワイン批評)
(エッセイ)過去21年のワイン,年ごとの評価。
♦127 THE CABINET OF Curiosities
128-143 AN IMAGINARY MUSEUM: OLIVE COOK AND EDWIN SMITH
(フォト・エッセイ)オリーヴ・クックとエドウィン・スミスの紙上想像博物館。幻灯機用ガラススライド,18世紀のロシアのそり,子どもの貝殻細工,泥人形,蝋人形,19世紀のかかし,19世紀の鼈甲のくし,紀元前3000年の偶像,18世紀の刺繍,19世紀の壁紙,19世紀のフェルト刺繍。19世紀の陶人形,19世紀の大理石彫刻,20世紀のモダニズム彫刻,19世紀の水差し,19世紀のステンドグラス,日本のマッチラベル,20世紀初頭の絵はがき,18世紀の墓碑,18世紀の陶人形,現代の花細工,20世紀初頭の回転木馬,紀元前9世紀のアッシリアの浮彫,ポンペイの壁画,ポンペイのブロンズの取っ手,19世紀の楽器装飾,古代エジプトの副葬品の獣面人,蒸気ローラーのブリタニア装飾,エドワード・リアの戯画,18世紀の石製容器,W. ハントの水彩,鳥の羽と骨のオブジェなどで構成される想像上の博物館です。カラー図版8点・モノクロ図版32点。
144-164 LONDON STREET Markets: FRED BASON
(フォト・エッセイ)フレッド・ベイソンと歩くロンドンの路上市。各通りの特徴記述。EDWIN SMITHのモノクロ写真11点。
165-176 Silent Witnesses: LAURENCE SCARFE
(グラフィック・エッセイ)ローレンス・スカーフェのイタリア・スケッチ。特色茶図版12点。
177-192 THE SOCIAL HISTORY OF The Parrot: AMORET & CHRISTOPHER SCOTT
(グラフィック・エッセイ)オウムの社会史。オウムの黄金時代としてのヴィクトリア期。カラー図版4点・モノクロ図版7点。
193-201 La Vie Bohème: TUDOR EDWARDS
(エッセイ)ビートニク以前。19世紀のボヘミアンについて。同時代の「ビートニク」も一応視野に入っています。同時代的関心事を過去の事例と結びつけるという姿勢の現れでしょうか。
♦202 WHEN I WAS TWENTY-ONE
203-210 WHEN I WAS TWENTY-ONE 1898: SIR PHILIP GIBBS(1877~1962,ジャーナリスト)
(エッセイ)フィリップ・ギブスが21歳だった1898年の回想。1898年は疑いようなく「the Old World」だった。
211-220 WHEN I WAS TWENTY-ONE 1907: SIR HAROLD NICOLSON(1886~1968,外交官・作家)
(エッセイ)ハロルド・ニコルソンが21歳だった1907年の回想。試験前の恐怖。
221-229 WHEN I WAS TWENTY-ONE 1920: BEVERLEY NICHOLS(1898~1983,作家)
(エッセイ)ベヴァリー・ニコルズが21歳だった1920年の回想。レーニンかぶれだったころ。
230-239 WHEN I WAS TWENTY-ONE 1928: LOUIS MACNEICE(1907~1963,詩人・小説家)
(エッセイ)『アブソリュート・ビギナーズ』のルイス・マクニースが21歳だった1928年の回想。ニーチェかぶれ。『荒地』への驚き。
♦240 RETROSPECTION
240-288 RETROSPECTION
(グラフィック・エッセイ)懐古特集。『土曜日の本』21年間の掲載図版からA~Z形式で抜粋。カラー図版33点・モノクロ図版28点。
▲建築の1940~1961年のページから。
オリーヴ・クックとエドウィン・スミスの想像博物館のページから。日本からはマッチラベル。
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79. 1960年の『土曜日の本』(2013年2月24日)
●『土曜日の本』その20
1960年発行。裸婦ジャケットで購入をためらう読者もいたようです。本文用紙に白色の紙のほかに,桃色の紙も使用しています。見返しのパターンは19号と同じです。
第20号の内容は,英国の演劇人,ピアーズ石鹸などヴィクトリア期の広告,小説家サキの再評価,彫刻とその配置,ヴィクトリア期の伯爵家に作男とジプシーの娘が玉の輿,オスカー・ワイルドの息子が読み解くヴィクトリア期のファッション図版,ヴィクトリア期のミュージック・ホールの音楽,ヴィクトリア期の貧民,女性の結婚承諾年齢を変えたウィリアム・トマス・ステッドの反児童売買キャンペーン,イタリアのポンツァ島,カナリア諸島のグラン・カナリア島,イタリア・トスカーナのジリオ島,カナダ・ケベックのオルレアン島,ポルトガルのベルレンガ・グランデ島,フィンランドの島々,アイルランドについての会話,ウェールズの狭軌鉄道タリスリン鉄道,竹馬の文化史,フレッド・ベイソン氏と犬,仕掛けのある時計,兵隊の人形,ユニコーンの博物誌,女性危機一髪の場面の数々,刺青など。ヴィクトリア期を扱うと,生き生きしています。
序文では,今号で20号となり,10代('teens)最後の号で「われわれの未熟な年月(our salad years)」も終わりを迎え,21号からは大人の自覚を持って迎えたい,と語っています。日本の「お酒は20歳から」という感覚と違い,20歳は10歳代の終わりで,21歳から大人の仲間入りという感覚があったようです。未熟な時代を「サラダ・デイズ(salad days)」とする表現は,シェイクスピアから来ています。
1960年代に入りました。「若者文化」の60年代を『土曜日の本』はどう過ごすことになるのでしょうか。
■『THE SATURDAY BOOK 20』の内容
THE SATURDAY BOOK
EDITED BY JOHN HADFIELD
20
HUTCHINSON OF LONDON
35s.net
THE SATURDAY BOOK was founded in 1941 by Leonard Russell and has been edited since 1952 by John Hadfield.
This twentieth annual issue was made and printed in Great Britain at Tiptree by The Anchor Press, Ltd., and bound by Taylor Garnett Evans & Co., Ltd., in Watford, Herts
1960
ダストラッパー: William McLaren(1923~1987)のイラスト。コーティング。
『THE SATURDAY BOOK 20』の目次
口絵: 1887年,海辺の女性の着こなし(1887)。JULES DAVIDの水彩。
003 title page
005-006 INTRODUCTION: J. H.
第20号となり,「'teens」最後の号で「our salad years」の終わり。21号からは大人の自覚を持って迎えたい。編集を引き継いだ後に気づいたことは,『土曜日の本』は計画的に編集してできるのでない,珊瑚礁のように自ら生成して出来上がる本だということ。
007-006 CONTENTS(目次)
♦009 THE LOOKING GLASS OF TASTE
010-023 A GOLDEN AGE OF ACTING: IVOR BROWN(1891~1974,ジャーナリスト)
(フォト・エッセイ)英国の演劇人。Laurence Olivier,Alec Guinness,Peter Sellers,Edith Evans,John Gielgud,Michael Redgrave,Emlyn Williams,Peggy Ashcroft,Ralph Richardson。カラー図版1点・モノクロ図版24点。
024-059 A GOLDEN AGE OF ADVERTISING: JOHN PITT
(グラフィック・エッセイ)ヴィクトリア期の広告。ピアーズ石鹸(Pears' Soap)の広告を中心に。ENOのフルーツ塩の広告も。カラー・2色・モノクロ図版とテキストで構成。
060-073 THE SAUCE FOR THE ASPARAGUS: ROBERT DRAKE
(エッセイ)小説家サキ(SAKI,Hector Hugh Munro,1870~1916)の再評価。
074-091 SCULPTURE AND SITUATION: OLIVE COOK AND EDWIN SMITH
(フォト・エッセイ)彫刻とその場面の意図。モノクロ図版28点。
♦092 VICTORIANA
093-108 EQUESTRIENNE: DONALD MacANDREW
(エッセイ)ヴィクトリア期の伯爵家に玉の輿。7th Earl of Stamford and WarringtonのGeorge Henryと,作男とジプシーの娘Catherineの結婚話。モノクロ図版4点。
109-120 JULES DAVID AND THE VICTORIAN FASHION-PLATE: VYVYAN HOLLAND (Vyvyan Oscar Beresford Wilde,1886~1967,オスカー・ワイルドの次男。作家・翻訳家)
(グラフィック・エッセイ)ヴィクトリア期のファッション・プレート。カラー図版4点・モノクロ図版4点。
121 DRAWING-ROOM BALLAD: THOMAS HAYNES BAYLY(1797~1839)
(詩)思い人を奪われる詩一編。
122-135 THE MUSIC OF THE HALLS: CHRISTOPHER AND AMORET SCOTT
(グラフィック)ヴィクトリア期のミュージック・ホールの音楽。カラー図版4点・モノクロ図版7点。
136-142 THE ROOKERY: BELTON COBB
(エッセイ)ヴィクトリア期の貧民。モノクロ図版1点。
143-151 THE AGE OF CONSENT: VINCENT BROME
(エッセイ)ウィリアム・トマス・ステッド(William Thomas Stead,1849~1912,『ペル・メル・ガゼット』編集長,ジャーナリスト。タイタニック号沈没で死亡。)の反児童売買キャンペーン。女性の結婚承諾年齢を13歳から16歳に法律改正。ナボコフの『ロリータ』への言及。
♦152 SATURDAY BOOK POEMS
152-153 FIESTA: Sara Jackson 詩一編。
153-154 MCMXIV: Philip Larkin 詩一編。
155 IN PRAISE OF CREATION: Elizabeth Jennings 詩一編。
♦156 A PATTERN OF ISLANDS
157-168 CIRCE'S ISLAND: JOHN GUEST
(フォト・エッセイ)キルケーの島ともいわれるイタリアのポンツァ(Ponza)島を旅する。JOHN GUESTのモノクロ写真12点。
169-176 GRAND CANARY: EDWARD HYAMS
(エッセイ)カナリア諸島のグラン・カナリア島。
177-184 THE ISLAND OF THE LILY: AVERIL MACKENZIE-GRIEVE
(エッセイ)イタリア・トスカーナのジリオ島(Giglio)。George Mackleyのモノクロ木版挿絵1点。
185-190 ÎLE D'ORLÉANS: TUDOR EDWARDS
(エッセイ)カナダ・ケベックのオルレアン島。
191-196 BERLENGA GRANDE: MARIE-NOËLE KELLY
(エッセイ)ポルトガルのベルレンガ・グランデ(BERLENGA GRANDE)島。George Mackleyのモノクロ木版挿絵1点。
197-204 MIDSUMMER ISLANDS: MOIRA SAVONIUS
(エッセイ)フィンランドの島々。George Mackleyのモノクロ木版挿絵1点。
205-210 EMERALD ISLE: PATRICK CAMPBELL(1913~1980,ジャーナリスト)
(エッセイ)アイルランドについての会話。
♦211 SATURDAT BOOK STORY
211-219 CHRISTMAS EVE AT DINDLE HYSSOCK: MILES HADFIELD
(小説)Goadley氏が手に入れたお屋敷の彫像がクリスマス・イブの夜に…。MICHAEL FELMINGHAMの挿画3点。
♦220 THE CABINET OF CURIOSITIES
221-235 A RAILWAY IN MINIATURE: L. T. C. ROLT(1910~1974)
(フォト・エッセイ)ウェールズのタリスリン鉄道(Talyllyn Railway),延長7マイルの狭ゲージ鉄道。EDWIN SMITHのモノクロ写真15点。
236-244 STILTS: HANNELORE HAHN
(エッセイ)竹馬の文化史。モノクロ図版6点。
245-253 GOING TO THE DOGS: FRED BASON
(エッセイ)フレッド・ベイソン氏と犬。
254-263 UNCOMMON CLOCKS: JAMES R. WITTS
(フォト・エッセイ)仕掛けのある時計。モノクロ図版10点。
264-271 LITTLE ARMIES: JOHN G. GARRATT
(フォト・エッセイ)兵隊の人形。EDWIN SMITHのカラー写真1点・モノクロ写真4点。
272-285 THE NATURAL HISTORY OF THE UNICORN: RICHARD CARRINGTON
(グラフィク・エッセイ)ユニコーンの博物誌。モノクロ図版8点。
286-299 LADIES IN DISTRESS: CHARLES GIBBS-SMITH
(グラフィック・エッセイ)絵画・映画に見る女性危機一髪の場面。カラー図版1点・モノクロ図版26点。
300-304 TAILPIECE ON TATTOOING: MARY EDEN
(フォト・エッセイ)刺青について。モノクロ図版9点。うち日本の刺青5点。
▲1900年前後の広告のページから。「LUX WON'T SHRINK WOOLLENS “Why don't they use Lux?”」というラックス石鹸の広告もあります。William Lever(1851~1925)が「Sunlight Flakes」という名前で売り出したところ残念な売り上げでしたが,商品名を「LUX」と変えてから成功しました。
▲ヴィクトリア期ミュージック・ホールの出し物のページから。
英仏墺の兵隊人形の世界。
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78. 1959年の『土曜日の本』(2013年2月23日)
●『土曜日の本』その19
1959年発行。本文用紙に白色の紙のほかに,薄緑色の紙も使用しています。
今号の話題は,リクリエーションについて歴史的考察,日曜画家ならぬ「土曜画家」,英国を代表する蝶スワロウテイル,英国の鷹と鷲,歌をうたうことの楽しみ,「愚行」とよばれる18世紀ごろの擬ゴシック建築,18世紀ごろの英国銀器,優雅な映画懐古,古い写真11枚が物語る老嬢の過去,悪評高い作家・編集者・出版者フランク・ハリスの5つの顔,ヴェニス風景,ラヴェンナの詩人の墓,イタリア時代のシェリーとバイロン,お風呂の哲学,1900年以降の部屋の変遷,食通のアルファベットAからZまで,ヴィンテージ・ワインについて,食事にまつわるものづくし,アメリカの奴隷制廃止論者ジョン・ブラウン,1860年代の木版画に見る犯罪現場,陽気な1860年代風俗,ルネ・マグリット礼賛,クリスチャン・ネームのはやりすたり,人魚の博物誌,アメリカ人読者のフレッド・ベイソン訪問など,基本的に後ろ向きの姿勢に微塵も変わりはありません。
■『THE SATURDAY BOOK 19』の内容
THE SATURDAY BOOK
EDITED BY JOHN HADFIELD
19
HUTCHINSON OF LONDON
30s.net
THE SATURDAY BOOK was founded in 1941 by Leonard Russell and has been edited since 1952 by John Hadfield.
This nineteenth annual issue was printed at Tiptree in Essex by The Anchor Press, Ltd., and bound by Taylor Garnett Evans & Co., Ltd., in Watford, Herts
1959
ダストラッパー: W. McLaren(1923~1987)のイラスト。バスタブ,人魚,鷹,歌い手,ワイン,パレット,蝶など,内容を反映したイラスト。コーティング。
箱: カヴァー同様。側面にもイラスト。
▲見返しのデザインにあまり力を入れなくなります。
『THE SATURDAY BOOK 19』の目次
口絵: 19世紀初頭のStaffordshire陶器。楽士と象と猿。
003 title page
005-006 INTRODUCTION: J. H.
読者から孔雀の安否を尋ねる手紙。最初の妻を狐に奪われたが,再婚して現在も元気。1959年に出版されたジョン・ハッドフィールドの最初の小説『LOVE ON A BRANCH LINE』ではその孔雀が「a leading character」として登場。
007-006 CONTENTS(目次)
♦009 ELEGANT RECREATIONS
010-018 THE ART OF RECREATION: DANIEL GEORGE
(エッセイ)リクリエーションについての歴史的考察。
019-031 SATURDAY PAINTERS: OLIVE COOK
(グラフィック・エッセイ)日曜画家ならぬ「土曜画家」たち。ヴィヴィアン・リー,ノエル・カワード,スパイク・ミリガンらが描いた絵。カラー図版6点・モノクロ図版10点。
032-044 A BUTTERFLY SANCTUARY: L. HUGH NEWMAN
(フォト・エッセイ)英国を代表する蝶スワロウテイル(swallow-tail,キアゲハ)ほか。蝶のカラー図版3点・モノクロ図版3点。
045-056 HAWKS AND FALCONS: KENNETH ALLSOP(1920~1973)
(グラフィック・エッセイ)英国の鷹と鷲について。ジョン・グールドの『英国の鳥類』(1873年)からカラー図版2点・モノクロ図版2点。
057-064 ON WINGS OF SONG: J. W. LAMBERT
(エッセイ)歌をうたうことの楽しみ。
065-075 FOLLIES: OLIVE COOK AND EDWIN SMITH
(フォト・エッセイ)18世紀ごろの英国でお金を惜しまず作られ「愚行(folly)」とよばれた擬ゴシック建築。モノクロ写真12点。
076-088 PIECES OF SILVER: JONATHAN STONE
(フォト・エッセイ)18世紀ごろの英国銀器。Raymond Forttのモノクロ写真11点。
089-105 THE FLICKS: J. J. CURLE
(フォト・エッセイ)映画の愉しみ。ブランド=バルドーの「性と暴力」強調路線で押し流されたトップハットの優雅さを懐かしむ。モノクロ図版14点。
♦106 THE SATURDAY BOOK STORIES
107-112 THE CATWALK: MICHAEL TAAFFE
(小説)Shane少年が自分のナイフと交換しようとしたものは…。
113-120 The Letter: OLIVE COOK
(フォト・ストーリー)古い写真11枚と,その写真に合わせて語られる老嬢の物語。
121-130 CARRY ME BACKWARDS: CHRISTOPHER SHORT
(小説)アメリカ,ヴァージニアを舞台にした英国人背面騎乗者のほら話。
♦131 PROFILE
131-140 The Five Faces of Frank Harris: VINCENT BROME(1910~2004,作家)
回顧録『わが生と愛(My Life and Loves)』(1922~1927,4巻)で悪評高い作家・編集者・出版者フランク・ハリス(1856~1931)の5つの顔。
♦141 ITALIAN TOURS
141-157 VENICE: Barbara Gomperts
(フォト)ヴェニスのモノクロ写真18点。
158-160 RAVENNA: RICHARD CHURCH(1893~1972)
(詩)ラヴェンナの詩一編。ラヴェンナにある詩人ダンテの墓モノクロ写真1点。
161-171 IN THE WAKE OF THE DON JUAN: ALAN ROSS
(フォト・エッセイ)イタリア時代のシェリーとバイロンの足跡。モノクロ写真6点。
♦172 DOMESTIC DIVERSIONS
172-187 THE PHILOSOPHY OF THE BATH: MARY EDEN
(グラフィック・エッセイ)お風呂の哲学。古代から現代まで。モノクロ図版16点。
188-204 Fifty Years of Rooms: RONALD FLEMING
(フォト・エッセイ)1900年以降の「部屋」の変遷。モノクロ写真24点。
205-214 A GOURMET'S ALPHABET: TUDOR EDWARDS
(エッセイ)食通のアルファベットAからZまで。フランス語の割合が高い。本文2段組。
215-220 A BOUQUET OF VINTAGES: EDMUND PENNING-ROWSELL(1913~2002,ワイン批評)
(エッセイ)ヴィンテージ・ワインについて。ボルドーでは1800年~1949年の150年間に40回の当たり年。本文2段組。
221-239 BREAKFAST LUNCHEON TEA DINNER or: All the Human Frame requires: OLIVE COOK & EDWIN SMITH
(グラフィック・エッセイ)食事にまつわるものづくし。カラー図版1点・モノクロ図版65点。1930年のSS榛名丸で使われたディナーメニューも含む。
♦240 CENTENNIAL
240-248 HIS SOUL GOES MARCHING ON 1859-1959: Len Guttridge
(エッセイ)アメリカの奴隷制廃止論者ジョン・ブラウン(John Browne,1800~1859)の処刑(反逆罪)から百年。カラー図版2点・モノクロ図版3点。
249-256 Oh dear! What can the matter be?: CHARLES CAUSLEY(1917~2003,作家)
(グラフィック・詩)1860年代の木版画に見る犯罪現場。2色図版10点。
257-272 THE GAY 'SIXTIES: PHILIP HENDERSON
(グラフィック・エッセイ)陽気な1860年代風俗。モノクロ図版11点。
♦273 THE CABINET OF CURIOSITIES
273-284 THE WORLD OF RENÉ MAGRITTE: E. L. T. MESENS(Edouard Léon Théodore Mesens,1903~1971,ベルギーの作家)
(グラフィック・エッセイ)ルネ・マグリット(1898~1967)の絵の世界。カラー図版4点・モノクロ図版6点。
285-291 FASHIONS IN CHRISTIAN NAMES: C. WILLETT CUNNINGTON
(エッセイ)クリスチャン・ネームのはやりすたり。中世にはほとんどいなかった「Mary」が1700年には女の子にいちばん多い名前になったことなど。
292-301 THE NATURAL HISTORY OF THE MERMAID: Richard Carrington
(エッセイ)人魚の博物誌。モノクロ図版3点。
302-304 MY CONTRIBUTION TO ANGLO-AMERICAN FRIENDSHIP: FRED BASON
(エッセイ)フレッド・ベイソンの本を読んで訪ねてきたアメリカ人との付き合い。
▲土曜画家の作品から。Thomas Britton(内装業),Noël Coward(作家),Spike Milligan(作家)。
▲Olive CookとEdwin Smithの夫婦が構成するパートは,とんでもなく素晴らしいといったものではなく,どちらかというと中庸なレイアウトなのですが,この2人ならではのものの並べ方,配置の妙があって,癖になります。『土曜日の本』で個人的にいちばん楽しみなのは,オリーヴ・クックが何を取り上げているかです。やはり『土曜日の本』の看板です。
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77. 1958年の『土曜日の本』(2013年2月22日)
●『土曜日の本』その18
1958年発行。本文用紙に白色の紙のほかに,黄色の紙も使用しています。見返しのパターンは第12号と第15号と同じものですが,インク色は黄色になっています。
第18号の話題は,1050年代から1950年代まで「50年代」のものづくし,建築家のアルファベットAからZまで,英国のステンドグラス,18世紀ローストフト焼の中国風陶器,詩人ジョン・ベチェマンが選ぶ英国的な建造物,架空の英国地方都市フルゲイの街案内,マルセイユ再訪,フランス南西部ドルドーニュ地方案内,ジェーン・モリスとダンテ・ガブリエル・ロセッティの関係,19世紀ロンドンで最高のフランス料理シェフのアレクシス・ソワイエ,ニコラス・ベントリーの描く作曲家8人,王室御用達サヴィルロウ最古の紳士服店ヘンリー・プール,アメリカ大統領トルーマンの出席したパーティでの出来事,道化師ピエロとその係累の16世紀から20世紀まで,植物や鉱物の拡大写真,ブラッサイが撮るパリの壁の落書き,ベッド・寝室・閨房の哲学,こびと・ドウォーフの博物誌,アーチー・メイソンの猫絵,フレッド・ベイソンのサイン収集話,新旧の図版で再構成する「シンデレラ」などです。
今までにないタイプのものとして,架空の英国地方都市の街案内があります。いかにも町の商工会議所が作ったような,英国にはそんな町が存在するような気にさせる,もっともらしい街案内になっています。
■『THE SATURDAY BOOK 18』の内容
THE SATURDAY BOOK
18
EDITED BY JOHN HADFIELD
HUTCHINSON OF LONDON
30s.net
THE SATURDAY BOOK was founded in 1941 by Leonard Russell and has been edited since 1952 by John Hadfield.
This eighteenth annual issue was made, printed and bound at Watford in Great Britain by Taylor, Garnett Evans & Company, Ltd. The type was set at the Gainsborough Press, St. Albans, by Fisher, Knight & Company, Ltd. The blocks were made at Bromley, Kent, by the Grout Engraving Company Ltd., and the colour plates were printed by the Anchor Press, Ltd., at Tiptree, Essex.
PUBLISHED IN 1958
ダストラッパーと箱: 文字とオーナメントのみで構成。黒地に金茶。ダストラッパーにコーティング。
『THE SATURDAY BOOK 18』の目次
口絵: Gino Severini(1883~1966)の『Serenade à la lune』(1930)
003 title page
005 INTRODUCTION: J. H.
1958年1月に亡くなった木版画家・作家・出版者ロバート・ギビングス(Robert Gibbings,1889~1958)追悼。多方面に好奇心を持っていた彼こそ『土曜日の本』的存在だったのではないか。
006-007 CONTENTS(目次)
008 INNOCENTS' SONG: CHARLES CAUSLEY
詩一編。無邪気なその子の名は…。
♦009 STORY
009-015 THE HOLLY & THE THORN: PETER TOWRY
(小説)1944年,台湾の捕虜収容所でのクリスマス。
♦016 ARTS
016-036 THE 'FIFTIES: OLIVE COOK & EDWIN SMITH
(グラフィック・エッセイ)1050年代から1950年代まで,モノクロ・カラー図版とテキストで構成する「50年代」ものづくし。
037-052 AN ARCHITECT'S ALPHABET: MICHAEL FELMINGHAM
(グラフィック・エッセイ)建築家のアルファベットAからZまで。
053-066 THE FACE IN THE WINDOW: NORMAN SCARFE
(フォト・エッセイ)英国のステンドグラス。BIRKIN HAWARDのカラー写真6点・モノクロ写真10点。
067-068 THE GOOLE CAPTAIN: LEONARD CLARK
(詩)詩一編。船乗りの恋。モノクロ図版1点。
069-077 'LOWESTOFT': NOEL TURNER
(フォト・エッセイ)サフォーク海岸のローストフト焼。18世紀に作られた中国風の陶器。カラー図版2ページ・モノクロ図版2ページ。
♦078 PICTURESQUE
078-112 BETJEMAN'S BRITAIN: JOHN BETJEMAN(1906~1984)
(フォト・エッセイ)詩人ジョン・ベチェマンが選ぶ英国的な建造物。EDWIN SMITHのモノクロ写真37点。
113-127 Fayre Fulgay: JOHN FOSTER WHITE
(グラフィック・エッセイ)架空の英国地方都市フルゲイの街案内。フルゲイ&ウェストラムセット商工会議所(The Fulgay & West Rumset Chamber of Commerce)の発行。モノクロ図版21点。
128 DORSET NOON: SARA JACKSON
(詩)詩一編。ドーセットの野原で。
129-133 MARSEILLES REVISITED: TUDOR EDWARDS
(エッセイ)マルセイユ再訪。
134-138 THE DORDOGNE: RICHARD CHURCH(1893~1972,作家)
(エッセイ)フランス南西部ドルドーニュ地方案内。
♦139 PERSONAL
139-153 LA BELLE ISEULT: PHILIP HENDERSON
(エッセイ)「麗しのイズー(LA BELLE ISEULT)」ジェーン・モリス(Jane Morris,1839~1914)とダンテ・ガブリエル・ロセッティ(Dante Gabriel Rossetti,1828~1882)の関係。モノクロ図版4点。
154-162 THE CULINARY CAMPAIGNS OF ALEXIS SOYER: H. A. HAMMELMANN
(エッセイ)ロンドンで最高のフランス料理シェフ,アレクシス・ソワイエ(ALEXIS SOYER,1810~1858)について。クリミア戦争の英軍の食事の改良。モノクロ図版2点。
163-169 COMPOSERS IN CLERIHEW: NICOLAS BENTLEY
(戯詩)ニコラス・ベントリーのCLERIHEW(クラリヒュー,六行戯詩)と二色図版で描く作曲家8人。
170-192 THE PRINCE OF TAILORS: DONALD MACANDREW
(グラフィック・エッセイ)19世紀サヴィルロウの紳士服仕立屋James PooleとHenry Poole(1814~1876)の親子。王室御用達となるサヴィルロウ最古のテイラー。二色図版7点。
193-201 THE PRESIDENT AND I: CHRISTOPHER SHORT
(エッセイ)アメリカ大統領トルーマンの出席したパーティで…。
♦202 CURIOUS
202-228 THE LIFE AND DEATH OF PIERROT: KAY DICK
(グラフィック・エッセイ)16・17世紀にイタリアのコメディア・デラルテ出身,18・19世紀に全盛,20世紀に衰退するピエロとその係累について。カラー図版4点・モノクロ図版18点。
229-235 MAGNIFICATIONS: DOUGLAS F. LAWSON and E. O. HOPPÉ
(フォト)植物や鉱物の拡大写真。モノクロ写真14点。
236-249 THE ART OF THE WALL: BRASSAI (1899~1984) (translated by James Clark)
(フォト・エッセイ)パリの壁に刻まれた形・落書き。ブラッサイのモノクロ写真16点。
251-267 THE PHILOSOPHY OF THE BED: MARY EDEN
(グラフィック・エッセイ)ベッド・寝室・閨房の哲学。モノクロ写真17点。
268-276 THE NATURAL HISTORY OF THE DWARF: RICHARD CARRINGTON
(エッセイ)こびと・ドウォーフの博物誌。モノクロ図版1点。
277-284 THE ROYAL ACATEMY: ARCHIE MASON
(グラフィック)アーチー・メイソンの猫絵。カラー図版4点・モノクロ図版4点。
285-288 A TRIFLE FROM S. E. 17: FRED BASON
(エッセイ)1927年,フレッド・ベイソンが俳優Robert Loraineからサインをもらうため,俳優が希望する劇作家Strindbergからサインを入手しようとして,巡り合わせで別の作家(H. de Vere Sracpoole)のサインを得ることができたという話。
289-304 Cinderella: OLIVE COOK & EDWIN SMITH
(グラフィック・ストーリー)第16号の「青髭」に続き,オリーヴ・クックとエドウィン・スミスが新旧の図版で再構成する「シンデレラ」のお話。
▲1450年代,1550年代,1650年代,1750年代,1850年代と,「50年代」の履き物を並べていて,結果としては「50年代」というくくりが無効になってしまっています。
♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦
76. 1957年の『土曜日の本』(2013年2月21日)
●『土曜日の本』その17
1957年発行。本文用紙に白色の紙のほかに薄紫灰色の紙も使用しています。この号からハッチンソン(HUTCHINSON)社は牛の形のプリンターズマークを使用しています。
第17号の話題も多彩です。家庭にまつわるものづくし,18~19世紀の人形の家,不動産屋のアルファベット,16~17世紀オランダの花の絵,ジョン・ナッシュが語る窓辺の鉢植え,庭園のなかの座る場所,フラワーアレンジメント,ヴィクトリア期の気球冒険家フレデリック・バーナビイ,英国にジャズをもたらしたのは誰か,フレッド・ベイソン11歳,ヨットのある風景,ペルセポリスの遺構,ロマンチックな廃墟嗜好,サセックスのファーレでの火祭り,ベルリン再訪,アートとしての工業技術,ロバート・ギビングスが語る木版画,古い銃の装飾美,P. G. ウッドハウスによるフーマンチューら悪党礼賛,L. S. ローリーが描く工業都市の絵,帽子の歴史,抽象的ヌード写真,妖精に捕まった人の話,大男の博物誌,銭はじき遊び,1890年代の女性ピンナップ,陶器の絵付け・装飾に見る英国史などです。
16~17世紀オランダの花の絵について寄稿しているウィルフリッド・ブラント(Wilfrid Blunt,1901~1987)は,モダンなもの嫌いで通した美術史家です。19世紀の同じ名前の詩人は親戚で,ジェーン・モリスの愛人だった詩人ウィルフリッド・スコーイン・ブラント(Wilfrid Scawen Blunt,1840~1922)の甥っ子の息子にあたります。貨幣学者のクリストファー・ブラント(Christopher Evelyn Blunt,1904~1987)やソ連のスパイとして知られることになる美術史家アンソニー・ブラント(Anthony Blunt,1907~1983)は弟です。キャラクターの濃い一族です。
■『THE SATURDAY BOOK 17』の内容
THE SATURDAY BOOK
EDITED BY JOHN HADFIELD
17
HUTCHINSON OF LONDON
30s. net
THE SATURDAY BOOK was founded in 1941 by Leonard Russell and has been edited since 1952 by John Hadfield.
This seventeenth annual issue was made, printed and bound at Watford in Great Britain by Taylor Garnett Evans & Company, Ltd. The type was set at the Gainsborough Press, St. Albans, by Fisher, Knight & Company, Ltd. The blocks were made at Bromley, Kent, by the Grout Engraving Company Ltd., and the colour plates were printed by the Anchor Press, Ltd., at Tiptree, Essex.
PUBLISHED IN 1957
Illustrated by DAVID GENTLEMAN, MICHAEL FELMINGHAM, ROBERT GIBBINGS, BRYAN KNEALE, OSBERT LANCASTER, L. S. LOWRY, JOHN NASH, BRYAN PATTEN, EILEEN RAMSAY, RONALD SEARLE, EDWIN SMITH
ダストラッパー: Philip Goughのイラスト。
箱: ダストラッパー同様。側面にもPhilip Goughのイラスト。
『THE SATURDAY BOOK 17』の目次
口絵: スウェーデンの画家Ottmer Elliger(1633~1679)の花(1667)。
003 title page
005-006 INTRODUCTION: J. H.
『土曜日の本』向きの原稿,『土曜日の本』にぴったりな人について。
007-008 CONTENTS
♦009 THE SATURDAY BOOK POEMS
010-014 THE STARTER / STANLEY MATTHEWS / CRICKET AT OXFORD: ALAN ROSS(1922~2001)
詩3編。競馬,サッカー選手スタンリー・マシューズ(1915~2000),オックスフォードでのクリケット。DAVID GENTLEMANの木版3点。
♦015 THE SATURDAY BOOK HOUSEHOLD WORDS
015-035 NO PLACE LIKE HOME: OLIVE COOK & EDWIN SMITH
(フォト・エッセイ)家庭にまつわるものづくし。カラー図版1点・モノクロ図版42点。
036-048 DOLL'S HOUSE & BABY HOUSE: VIVIEN GREENE(1905~2003,人形の家の権威。グレアム・グリーン夫人)
(フォト・エッセイ)18~19世紀の人形の家あれこれ。モノクロ図版13点。
049-055 A HOUSE-AGENT'S ALPHABET: ROY BROOKS
(エッセイ)不動産屋のアルファベット,AからZまで。
♦056 THE SATURDAY BOOK FLOWER-PIECES
056-072 PRIMITIVES OF FLOWER PAINTING: WILFRID BLUNT(1901~1987,美術史)
(フォト・エッセイ)16~17世紀オランダなどの花の絵について。カラー図版4点・モノクロ図版5点。
073-080 COTTAGE WINDOW PLANTS: JOHN NASH
(グラフィック・エッセイ)窓辺の鉢植え。画家ジョン・ナッシュのモノクロ図版6点。
081-088 SITTING IN THE GARDEN: MILES HADFIELD
(グラフィック・エッセイ)庭園に設けられた座る場所について。MICHAEL FELMINGHAMの挿絵4点。
089-095 FLOWER ARRANGEMENTS: BETTY MASSINGHAM
(フォト・エッセイ)フラワーアレンジメントについて。「日本では6世紀から」という記述。モノクロ図版7点。
♦096 THE SATURDAY BOOK PERSONAL PAGES
096-107 BURNABY OF THE BLUES: PHILIP HENDERSON
(エッセイ)ヴィクトリア期の軍人・冒険家Frederick Gustavus Burnaby(1842~1885)の気球冒険。BLUESは王室騎兵を表します。モノクロ図版5点。
108-116 THE MAN WHO BROUGHT JAZZ TO BRITAIN: LEN GUTTERIDGE (GUTTRIDGE,1918~2009)
(エッセイ)英国にジャズをもたらしたのは誰か。Louis Mitchell説。モノクロ図版1点。
117-120 A PICNIC: FRED BASON
(エッセイ)フレッド・ベイソン11歳,女の子との「ピクニック」の回想。
♦121 PICTURESQUE TOURS
121-127 SAILS IN THEIR SETTINGS: EILEEN RAMSAY
(フォト)ヨットのある風景。EILEEN RAMSAYの写真7点。
128-144 PERSEPOLIS OF THE GREAT KINGS: MARIE NOËLE KELLY
(フォト・エッセイ)イランにあるアケメネス朝ペルシアの首都ペルセポリスの遺構。カラー写真2点・モノクロ写真15点。
145-160 ROMANTIC RUINS: GEOFFREY W. BEARD
(グラフィック・エッセイ)ロマンチックな廃墟嗜好について。MICHAEL FELMINGHAMのモノクロ挿絵8点。
161-166 FIREWORKS AT FIRLE: OLIVE COOK
(エッセイ)1556年の10人の殉教者と1605年のGunpowder Plotを記念してイースト・サセックスのFirleで行われる火祭り。
167-176 RETURN TO BERLIN: LOUIS GOLDING(1895~1958,作家)
(エッセイ)1946年以来のベルリン再訪。
♦177 THE SATURDAY BOOK STORIES
177-189 LITTLE ANIMALS: LAURENCE WHISTLER(1912~2000)
(小説)マーティン少年の寄宿学校。学期の始まりと終わり。BRYAN KNEALEのモノクロ挿絵2点。
190-196 THE WORK OF EVIL: W. CROFT DICKINSON(1897~1963)
(小説)図書館の稀覯書室にある「悪」のコレクションがもたらしたのは…。
♦197 THE SATURDAY BOOK ALBUM OF THE ARTS
197-206 ENGINEERING AS AN ART: L. T. C. ROLT(1910~1974)
(グラフィック・エッセイ)アートとしての工業技術。橋・トンネル。モノクロ図版5点。
207-213 THOUGHTS ON WOOD: ROBERT GIBBINGS(1889~1958)
(グラフィック)ロバート・ギビングスが語る木版画。ギビングスの木版9点。
214-222 THE ART OF THE GUNSMITH: KEITH DUNHAM
(フォト・エッセイ)古い銃の装飾美。モノクロ図版11点。
223-227 BRING ON THE FIENDS: P. G. WODEHOUSE
(エッセイ)P. G. ウッドハウスによるフーマンチューら物語の悪党礼賛。
228-236 THE WORLD OF L. S. LOWRY: HOWARD SPRING
(フォト・エッセイ)L. S. ローリー(L. S. LOWRY,1887~1976)によるマンチェスターなど工業都市の絵。カラー図版5点・モノクロ図版4点。
237-247 THE HISTORY OF THE HAT: MARY EDEN
(フォト・エッセイ)帽子の歴史。モノクロ図版31点。
248-251 NUDES IN THE ABSTRACT: BRYAN PATTEN
(フォト)BRYAN PATTENの抽象的ヌード。モノクロ写真4点。
♦252 THE CABINET OF CURIOSITIES
253-259 THE INVISIBLE PEOPLE: PETER QUENNELL(1905~1993,文学史)
(エッセイ)1692年Robert Kirkが妖精に捕らわれた話。モノクロ図版1点。
260-269 THE NATURAL HISTORY OF THE GIANT: RICHARD CARRINGTON
(エッセイ)巨人・大男の博物誌。モノクロ図版3点。
270-276 SHOVEHA'PENNY: FREDERICK LAWS
(エッセイ)銭はじき遊びについて。モノクロ図版5点。
277-284 PIN-UPS OF THE 'NINETIES
(フォト・エッセイ)ヴィクトリア期末期1890年代の女性ピンナップ。モノクロ図版8点。
285-287 EXTROVERTIGO: DENYS BLAKELOCK
(詩)戯詩一編。Lord NeurosisとMiss Idの結婚。Ronald Searleのモノクロ図版3点。
288-304 A POTTED HISTORY OF ENGLAND: GRISELDA LEWIS
(グラフィック・エッセイ)陶器の絵付け・装飾に見る英国史。カラー図版4点・モノクロ図版26点。
▲人形の家のページから。
▲L. S. ローリーが描くマンチェスターの街。
帽子の歴史のページから。
♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦
75. 1956年の『土曜日の本』(2013年2月20日)
●『土曜日の本』その16
1956年発行。本文用紙に白色の紙のほかに薄緑の紙も使用しています。見返しのパターンデザインは第10号のものを流用していて,下地色は色違いの緑になっています。
第16号で取り上げられる話題は,ヴィクトリア期の物語性のある絵画作品,ジョン・ミドルトンの水彩風景画,ローレンス・ホイッスラーのグラス・エングレイヴィング,イヴリン・ウォーが語る絵画の死,ロバート・ギビングスが語る海中に潜水して見る魚の素晴らしさ,絵本作家ランドルフ・コールデコット礼賛,英国の職人づくし,ジョン・ベチェマンの詩,幽霊物語の衰退,フレッド・ベイソンが語る幽霊話,ケネス・タイナンの1955年モスクワ旅行,イタリアのペルージャ滞在,ロンドンにあったチャイナタウンの消失,ローレンス・スカーフェのモロッコ・スケッチ,一昔前の家庭生活の場面あれこれ,ヴィクトリア期の写真屋,電気療法のジェイムズ・グラハム博士,子どもの登場する絵画作品,庭園デザイナーのガートルード・ジーキル,一般名詞になった名前のアルファベット,英国の墓所の彫像,シラノ・ド・ベルジュラックの宇宙旅行,かぎ煙草入れの装飾,100年前と現在の英国紳士の身なり,犬の家族写真,ある絵の購入と売却のてんまつ,陶人形の求愛場面,書簡収集家が見つけたシェークスピアの手紙。コラージュで構成する「青髭」のお話など。
収録されている「青髭」は,オリーヴ・クックとエドウィン・スミスが,もともと無関係な写真・図版を再構成して昔話・童話の再話を試みたもので,楽しい読み物になっています。この後の号でも同じ方法で昔話・童話の再話を試みています。写真や図版を合成する方法ではなく,写真・図版に本来の文脈とは違う言葉を付けるという地味な方法ですが,とぼけた味わいがあります。このコラージュ再話が単行本化されているのなら,欲しいです。されていないのなら,まとめて1冊の本の形にしてほしいものです。
■『THE SATURDAY BOOK 16』の内容
THE SATURDAY BOOK
EDITED BY JOHN HADFIELD
16
LONDON
HUTCHINSON & COMPANY
30s.net
THIS SIXTEENTH ANNUAL ISSUE OF THE SATURDAY BOOK
was made, printed and bound in Great Britain at Watford by Taylor, Garnett, Evans & Company, Ltd. The type has been set at the Gainsborough Press, St. Albans, by Fisher, Knight and Company, Ltd. The four-colour plates were engraved and printed by the Grout Engraving Company Ltd., at Bromley.
Published in 1956
The half-title decorations were drawn by MICHAEL FELMINGHAM
ダストラッパー: Philip Goughのイラスト。
箱: ダストラッパー同様。側面の天地左右にもPhilip Goughのイラスト。
『THE SATURDAY BOOK 16』の目次
口絵: WILLIAM POWELL FRITHの『The Proposal』
003 title page
005-006 INTRODUCTION
『土曜日の本』成功の謎。12月9日に前号は完売したという報告。
007-008 THE CONTENTS(目次)
♦009 THE SATURDAY BOOK POEM
010-013 VALSE D'HIVER: SARA JACKSON
(詩)詩一編。冬の川でスケートする男女。PHILIP GOUGHのモノクロ図版3点。
♦014 THE SATURDAY BOOK Specimens of Art and Nature
015-035 EVERY STORY SELLS A PICTURE: JAMES LAVER
(フォト・エッセイ)物語性に重点をおいたヴィクトリア期の絵画作品。カラー図版8点・モノクロ図版12点。
036-041 JOHN MIDDLETON: F. W. HAWCROFT
(エッセイ)JOHN MIDDLETON(1827~1856)の水彩風景画。カラー図版2点・モノクロ図版2点。
042-048 WHISTLER GLASS
(フォト・エッセイ)詩人Laurence Whistler(1912~2000)のダイヤモンド・ポイントを使ったグラス・エングレイヴィング。第10号に続いて2回目。モノクロ図版12点。
049-053 THE DEATH OF PAINTING: EVELYN WAUGH(1903~1966,小説家)
(エッセイ)イヴリン・ウォーの寄稿です。写真の登場と絵画の死。今の時代のラスキン登場を求めています。
054-060 THOUGHTS ON FISH: ROBERT GIBBINGS(1889~1958)
(グラフィック・エッセイ)海中に潜水して見る魚の素晴らしさ。ロバート・ギビングスの木版4点。
061-083 RANDOLPH CALDECOTT: FREDERICK LAWS
(グラフィック・エッセイ)ランドルフ・コールデコット(1846~1886)の絵本・スケッチの素晴らしさ。モノクロ図版15点。
084-100 THE HANDS OF THE CRAFTMAN: TOM AND MARGARET JONES
(フォト・エッセイ)英国の職人づくし。その手に着目。モノクロ図版37点。
♦101 THE SATURDAY BOOK Uneasy Pages
102-104 LORD BARTON-BENDISH: JOHN BETJEMAN(1906~1984)
(詩)ジョン・ベチェマンの詩一編。LORD BARTON-BENDISHのお墓。JOHN PIPER(1903~1992)のモノクロ図版2点。
105-112 THE PASSING OF THE GHOST STORY: L. T. C. ROLT(1910~1974)
(エッセイ)幽霊物語の衰退。レ・ファニュ(Le Fanu),M. R.ジェイムズ(M. R. James),アーサー・マッケン(Arthur Machen),アルジャーノン・ブラックウッド(Algernon Blackwood)らの幽霊物語。
113-116 THE LIVE GHOST: FRED BASON
(エッセイ)フレッド・ベイソンが語る,生きている幽霊に会った話。
♦117 THE SATURDAY BOOK Picturesque Tours
118-124 A TRIP TO MOSCOW: KENNETH TYNAN(1927~1980,劇評家)
(エッセイ)1955年のモスクワ旅行。
125-131 PERUGIA: RICHARD CHURCH(1893~1972,作家)
(エッセイ)イタリアのペルージャ滞在記。
132-136 THE LAST OF LIMEHOUSE: W. ARMITAGE
(エッセイ)ロンドンにあったチャイナタウンの消失について。
137-144 Moroccan Journey: LAURENCE SCARFE
(グラフィック・エッセイ)LAURENCE SCARFEのモロッコ・スケッチ旅行。モノクロ図版8点。
145 THE POOL: ANNA McMULLEN
(詩)詩一編。プールの表面をかき乱す何か。
♦146 THE SATURDAY BOOK Personal Columns
147-167 SCENES OF DOMESTIC LIFE: MARGUERITE STEEN(1894~1975,作家)
(エッセイ)上流階級のおば様訪問ほか,一昔前の家庭生活の場面あれこれ。
168-169 VICTORIAN PHOTOGRAPHER: J. J. CURLE
(詩)ヴィクトリア期の写真屋についての詩一編。
170-179 THE INGENIOUS DR. GRAHAM: J. S. BARWELL
(エッセイ)電気療法のジェイムズ・グラハム博士(1745~1794)について。
180-195 THE CHILD IS THE FATHER OF THE MAN?: DAVID PIPER(1918~1990,美術史)
(フォト・エッセイ)子どもの登場する絵画。カラー図版2点・モノクロ図版19点。
196-200 MISS JEKYLL: BETTY MASSINGHAM
(エッセイ)庭園デザイナーのガートルード・ジーキル(Gertrude Jekyll,1843~1932)のポルトレ。
201-215 AN ALPHABET OF HOUSEHOLD NAMES: MICHAEL HARRISON
(エッセイ)一般名詞になった名前のアルファベット,AからZまで。
♦216 THE SATURDAY BOOK The Cabinet of Curiosities
217-230 SEPULCHRAL EFFIGIES: OLIVE COOK
(フォト・エッセイ)英国の墓所の彫像。モノクロ図版10点。
231-237 A PIONEER OF SPACE-TRAVEL: A. A. HAMMELMANN
(エッセイ)宇宙旅行のパイオニア,シラノ・ド・ベルジュラック(1620~1655)。世界初の人工衛星,ソ連のスプートニク1号が打ち上げられるのは翌年の1957年10月4日です。モノクロ図版3点。
238-245 THE PLEASURES OF SNUFF: W. G. CORP
(エッセイ)かぎ煙草入れづくし。モノクロ図版4ページ。
246-248 THE WELL-DRESSED ENGLISHMAN A HUNDRED YEARS AGO: C. WILLETT CUNNINGTON
(エッセイ)100年前の身なりのきちんとした英国紳士。モノクロ図版2点。
249-253 THE WELL-DRESSED ENGLISHMAN TODAY: JOHN TAYLOR
(エッセイ)現代の身なりのきちんとした英国紳士。モノクロ図版3点。
254-259 CANINE CONVERSATION PIECES: KATHLEEN B. EACHUS
(フォト)犬の家族写真。モノクロ図版7点。
260-267 A BID IS A BID THE STORY OF MY OLD MASTERS: LANCE SIEVEKING(1896~1972,ラジオ・テレビ作家)
(エッセイ)ある巨匠の作とされる絵の購入と売却で,筆者がとった方法。モノクロ図版1点。
268-276 COURTSHIP IN CLAY OR, POTTED PASSION: Gerald Bullett
(フォト・エッセイ)陶人形の求愛場面。カラー図版4点・モノクロ図版4点。
277-279 A COLLECTOR'S PIECE: GEORGE SIMS
(エッセイ)書簡収集家が見つけたシェークスピアの手紙は…。
280-296 Old Stories Scrapped, or: BLUE BEARD IN BITS & PIECES: OLIVE COOK & EDWIN SMITH
(グラフィック・ストーリー)新旧さまざまな図版で再構成する「青髭」のお話。
▲ジェイムズ・ティソ(James Tissot)のメロドラマな絵画作品。ひそひそ話のある世界。
▲英国の藁細工。
求愛する19世紀の陶器人形たち。
♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦
74. 1955年のオリーヴ・クックとエドウィン・スミス『コレクターズ・アイテム』(2013年2月19日)
雑誌からは連載を単行本化するなどして副次的に本も生まれます。読み切りだけで連載のない『土曜日の本』ですが,そのグラフィックページから1冊誕生しています。1955年の『コレクターズ・アイテム』です。『土曜日の本』のオリーヴ・クックとエドウィン・スミスによるグラフィックページを再構成した,267点のカラーとモノクロ写真図版からなる,文章の少ない,見るための本です。序文は,『土曜日の本』編集長ジョン・ハッドフィールドが書いていて,オリーヴ・クックとエドウィン・スミスはわれわれの時代の「好み(taste)」に大きな影響を与えていると書いています。
版元は,『土曜日の本』のハッチンソン(Hutchinson)社ではなく,マクミラン(MACMILLAN)社です。印刷は,『土曜日の本』の図版印刷担当のTHE GROUT ENGRAVING COMPANY LTD.ですので,使い回しで制作できたのでしょう。見返しには,『土曜日の本』第13号(1953)と同じものが流用されています。
建築物,アクアチント,蝶,カメオ細工,椅子,マントルピース,クリスマス・カード,クリケット,太鼓,家族肖像画,刺繍,マッチ箱,コケ,楽譜の表紙,絵画,ペーパーウェイト,パイプ,遊戯札,磁器,陶器,貝殻,砂絵,銀器,おもちゃ,壁紙,水彩画,ロウ製の果物,ワイングラス,羊毛刺繍絵,海で拾った石,…といったものを扱う骨董屋さんのカタログみたいな本になっています。コアでディープというほどではありませんが,それでも,何か気になる妙なオブジェがたくさん登場します。ハイ・アートもロウ・アートも,あるいはミドル・アートもなく,ここでの選択原則は,「もの」として「図像」として「収集」できるもの,ということかと思います。個人的には,この時代のカラーやモノクロの一般書の写真印刷が魅力的かというと,そうでもないので,本自体の魅力としては中途半端です。
▲『COLLECTOR'S ITEMS from THE SATURDAY BOOK』の,かわいらしいアンティック路線のタイトルページ。「コレクターズ・アイテム」という表現は1930年代から使われるようになったのですが,それを誰もが使うことばになったのは,『土曜日の本』の力も大きかったようです。
♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦
73. 1955年の『土曜日の本』(2013年2月18日)
●『土曜日の本』その15
1955年発行。第15号の題材は,ローレンス・ホイッスラーの詩,宝飾品の世界,いかがわしい奴の博物誌,ひげの復活,エドワード・マーシュ小伝,ローレンス・オリファント小伝,ロマンス小説家エセル・M・デル小伝,第一次世界大戦後の流浪のヨーロッパ王族たち,フレッド・ベイソンの家主,イギリスの伝統的弓術,球技クローケー,18~19世紀の気球冒険家,画家とモデル,ティーポットの世界,観葉植物,1920年代ソ連のオーケストラでの試み,バグパイプあれこれ,クラレンス・ジョン・ラフリンの樹木写真,英国の白鳥の社会史,年に2度花を咲かすグラストンベリーのサンザシの謎,蓄音機の名器,謎が仕掛けられた絵手紙,19世紀初頭イギリスの海辺の街,ウォード箱の発明者,映画以前の絵が動くからくり,18~19世紀の自動演奏人形,蒸気機関へのお別れ,「楽しきイングランド」を伝える写真など。こうした多方面の読み切りテキストが収まっている1冊の本を人からプレゼントされてうれしかったのか考えてみるのですが,やはり人それぞれなのでしょう。少なくとも上等な退屈しのぎです。
今号で取り上げられているローレンス・オリファントは,薩摩の英国留学生たちとも深いかかわりのある人物なのですが,その人物の伝記をウィリアム・モリスの伝記作家ヘンダーソンが書いていることが興味深いところです。
▲カヴァーのクロスの色は号ごとに変えていきます。
■『THE SATURDAY BOOK 15』の内容
THE SATURDAY BOOK
EDITED BY JOHN HADFIELD
15
LONDON
HUTCHINSON & COMPANY
25s. net
THIS FIFTEENTH ANNUAL ISSUE OF THE SATURDAY BOOK
is made and printed in Great Britain at the Mayflower Press (of Plymouth), at Watford, by William Brendon and Son Ltd. The type has been set at the Gainsborough Press, St. Albans, by Fisher, Knight and Company, Ltd. The four-colour plates were engraved and printed by the Grout Engraving Company Ltd., at Bromley. The book was bound by Greycaines (Taylor, Garnett, Evans & Company, Ltd.), at Watford.
Published in 1955
The decorations are by FAITH JACQUES
ダストラッパー: リチャード・チョッピング(Richard Chopping,1917~2008)のトロンプ・ルイユ(だまし絵)風デザイン。リチャード・チョッピングは,イアン・フレミングの007シリーズ英国版ジャケットでトロンプ・ルイユ風イラストを描いている人です。
箱: 正面はダストラッパー同様。上蓋の側面にもダストラッパー正面にはない蝿の絵。
▲見返しに第12号と同じデザインのパターンが使われています。
『THE SATURDAY BOOK 15』の内容
口絵: トマス・ゲインズボロ(Thomas Gainsborough,1727~1788)の『Mary, Countess Howe, at Kenwood』
003 title page
005 INTRODUCTION: J. H.
批評に『Vogue』誌との比較が出たこと。ミュージカル『The Boy Friend』に2年先立ち,1920年代特集をしたこと。ちょっと自慢が入った前書きです。
006-007 THE CONTENTS(目次)
♦008 THE SATURDAY BOOK'S POEM
009-016 A SEDATIVE AT DAYBREAK: LAURENCE WHISTLER
(詩)詩一編。夜明け前の夢と鳥たち。ローレンス・ホイッスラー(1912~2000)はガラス彫刻と詩を作る人で,今見ても面白い存在ではないかと思います。ジョアン・ハッサル(JOAN HASSALL,1906~1988)の木版4点。
♦017 THE SATURDAY BOOK Looking-glass of Fashion
018-039 THE ART OF ADORNMENT: EDWIN SMITH & OLIVE COOK
(フォト・エッセイ)古代から現代までの宝飾品の世界。カラー・モノクロ図版。
040-047 THE NATURAL HISTORY OF THE SPIV: C. WILLETT CUNNINGTON
(グラフィック・エッセイ)Spiv(めかしこんでいかがわしい奴)の博物誌。「~の博物誌(THE NATURAL HISTORY OF ~)」と題するエッセイの1編。モノクロ図版10点。
048-055 THE RETURN OF THE BEARD: MARY EDEN
(フォト・エッセイ)ひげの復活。モノクロ図版16点。
♦056 THE SATURDAY BOOK PERSONAL COLUMNS 2色図版1点。
057-064 EDDIE MARSH THE COMPLETE EDWARDIAN: LANCE SIEVEKING (1896~1972,作家)
(エッセイ)エドワード期の人物としかいいようのないエドワード・マーシュ(Edward Marsh 1872~1953)のポルトレ。
065-072 MARTYR LOVE THE LIFE OF LAURENCE OLIPHANT: PHILIP HENDERSON
(エッセイ)冒険家・社交家から神秘家へ。ローレンス・オリファント(1829~1888)の生涯。フィリップ・ヘンダースンは伝記作家で,『ウィリアム・モリス伝』(晶文社,1990年)が川端康雄・志田均・永江敦の共訳で出ています。
075-078 THE WAY OF ETHEL M. DELL: NANCY SPAIN
(エッセイ)デビュー作『The Way of an Eagle』(1911) はベストセラー。ロマンス小説家エセル・M・デル(ETHEL M. DELL,1881~1939)のポルトレ。
079-088 THE MISSING MONARCHS: MICHAEL HARRISON
(エッセイ)第一次世界大戦後に会った,流浪のヨーロッパ王族たち。
089-092 LIZZIE: MY LANDLADY: FRED BASON
(エッセイ)フレッド・ベイソン氏の家主リジー夫人。なぜリジーと結婚しないのか。
♦093 THE SATURDAY BOOK ANNALS OF SPORTING
094-103 THE ROYAL TOXOPHILITES: VICTOR MITZAKIS
(フォト・エッセイ)イギリスの伝統的な弓術。モノクロ図版18点。
104-111 PLEASURES OF CROQUET: RAYMOND MORTIMER
(エッセイ)球技クローケーの愉しみ。モノクロ図版4点。
112-122 THE AERIAL ADVENTURERS: C. H. GIBBS-SMITH
(エッセイ)18,19世紀の気球冒険家たち。カラー図版3点・モノクロ図版3点。
♦123 THE SATURDAY BOOK STORIES
123-129 MARIO ON THE BEACH: LOUIS GOLDING(1895~1958,作家)
(小説)英国サフォーク,ギリアン家の甘やかされた末っ子ボビーが,旅行先のヴェニスのリドで引き起こしたできごとは…。
130-135 THE OLD TOMATO: JOSEPHINE BLUMENFELD
(小説)旗を振って帰還兵を迎える遊びに興じる子どもたち。帰還兵「The Old Tomato」は…。
136-141 THE COOL OF THE EVENING: ANNA McMULLEN
(小説)海辺で夏休みをすごす思春期のリズといとこのトム…。
♦142 THE SATURDAY BOOK SPECIMENS OF ART & NATURE
143-159 MODELS AND MUSES: JAMES LAVER
(フォト・エッセイ)画家とモデル,画家とミューズ。カラー図版4点・モノクロ図版15点。
160-171 THE ART OF THE TEAPOT: GRISELDA LEWIS
(フォト・エッセイ)ティーポットの世界。カラー図版3ページ・モノクロ図版15点。
172-182 IN PRAISE OF FOLIAGE: BETTY MASSINGHAM
(フォト・エッセイ)観葉・葉飾りのすすめ。カラー図版1点・モノクロ図版6点。
183-186 THE UNCONDUCTED ORCHESTRA: CONSTANTINE BENCKENDORFF(1889~1959)
(エッセイ)1920年代ソ連,Zeitlin教授の指揮者のないオーケストラ。
187-196 THE BAGPIPE: SETON GORDON
(フォト・エッセイ)バグパイプのあれこれ。モノクロ図版9点。
197-203 THE TREE AND THE CAMERA: CLARENCE JOHN LAUGHLIN (1905~1985,米の写真家)
(フォト・エッセイ)CLARENCE JOHN LAUGHLINの木を題材にしたモノクロ写真8点とテキスト。
204-211 THE SOCIAL HISTORY OF THE SWAN: ERIC ST. JOHN BROOKS
(エッセイ)英国の白鳥の社会史。モノクロ図版2点。「~の社会史(THE SOCIAL HISTORY OF ~)」もタイトルとしてよく使われます。
212-217 THE MYSTERY OF THE GLASTONBURY THORN: MILES HADFIELD
(エッセイ)年に2度花を咲かすグラストンベリーにあるサンザシの木の不思議。(Glastonbury Thornは1991年に枯死,1992年切り倒されました)。モノクロ図版1点。
218-222 TREASURES OF THE GRAMOPHONE: PHILIP HOPE-WALLACE
(エッセイ)蓄音機の名品。モノクロ図版1点。
223-232 THE REBUS: DEREK HUDSON
(グラフィック・エッセイ)謎絵手紙の愉しみ。モノクロ図版7点。
233-239 SEASIDE REGENCY: PHILIP GOUGH(1908~1986?)
(グラフィック・エッセイ)19世紀初頭イギリスの海辺にある街の風景。PHILIP GOUGHの2色図版7点。
♦240 THE SATURDAY BOOK CABINET of INVENTIONS
241-246 THE WARDIAN CASE
(エッセイ)ウォード箱。N. B. Ward(1792~1868,植物学者)発明の植物運搬・観察用の箱。2色図版2点・モノクロ図版2点。
247-251 MOVING PICTURES BEFORE THE CINEMATOGRAPH: OLIVE COOK
(フォト・エッセイ)映画以前に発明されていた,絵が動いて見えるからくり道具。モノクロ図版9点。
252-263 THE MECHANICAL MUSICIANS: JEREMY SANFORD
(グラフィック・エッセイ)18,19世紀の自動演奏人形。モノクロ図版7点。
264-275 THE SWAN SONG OF STEAM: L. T. C. ROLT
(グラフィック・エッセイ)蒸気機関へのお別れ。モノクロ図版7点。
♦276-296 THE SATURDAY BOOK MAKES A PICTURESQUE TOUR OF Merrie England
(フォト・エッセイ)カラー・モノクロ写真とテキストで構成する現在の「楽しきイングランド」。
▲ティーポットのページから。Miss Silkのコレクション。
▲ルイス・キャロルの謎絵手紙から。
映画以前に発明されていた,絵が動いて見える19世紀のからくり道具から。
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72. 1954年の『土曜日の本』(2013年2月17日)
●『土曜日の本』その14
1954年発行。ブックデザインはフェイス・ジャックス。手もとにある箱付きの『土曜日の本』ではもっとも古いものです。箱は壊れていて状態はよくありませんが,箱入りでプレゼントに使うというのが,この本の基本的な使われ方だったのでしょう。
第14号で扱われている話題は,不吉な数字の第13号を無事乗り切ったこと,編集長がオークションで生きている孔雀を買ったこと,オグデン・ナッシュの詩,女性の美容・化粧用具,アメリカのティーン・アイドル,シャーロック・ホームズのライヴァルたち,代々画家のコンスタブル家の人々,映画初期の喜劇スターの悲しい末路,「~の博物誌(THE NATURAL HISTORY OF ~)」ではコーラスガールがテーマ,ロシアの建築,シチリア島ぶらり歩き,ヴェニスの井戸彫刻,ピクチャレスクな地下建造物,イギリスの空模様,天井と床の装飾,バークシャーの丘斜面に刻まれた白馬像,ドライ・フラワーの装飾,現代の刺繍,貝殻細工,暖炉の火の愉しみ,商家の看板やエンブレム,庭の水路で金魚を飼おうとして起こった失敗談,L. P. ハートレーやオリヴィア・マニングの短編小説,オークションに関する言葉のアルファベット,18世紀イギリスの陶人形,ワインの収集指南,チョッキを着ている人々,ジャンク・ショップの愉しみ,機関銃など時代に先行していた過去の発明品,イギリス工兵隊当番兵の回想,フレッド・ベイソンの身辺雑記と,いろんな物事に好奇心を発揮しています。エロチックな領域ではまだ控えめですが,女性の美容・化粧用具やコーラスガールというテーマの中で古いヌード写真も含ませています。
■『The Saturday Book 14』の内容
The Fourteenth Issue of
The Saturday Book
Founded by LEONARD RUSSELL
Edited by JOHN HADFIELD
THE DECORATIONS ARE BY FAITH JAQUES
PUBLISHED BY HUTCHINSON
25s.net
THIS FOURTEENTH ANNUAL ISSUE OF THE SATURDAY BOOK
is made and printed in Great Britain at the Mayflower Press (of Plymouth), at Watford, by William Brendon and Son Ltd. The type has been set at the Gainsborough Press, St. Albans, by Fisher, Knight and Company, Ltd. The four-colour plates were engraved and printed by the Grout Engraving Company Ltd., at Bromley. The book was bound by Dow & Lester, Ltd., at Luton.
Published in 1954
ダストラッパー: FAITH JAQUESのイラスト。
箱: ダストラッパーと同じ。
▲インク色は違いますが,見返しに第9号と同じデザインのパターンが使われています。使い回しはマンネリの兆候でもあります。
『The Saturday Book 14』の目次
003 タイトルページ: William Rogersの版画をもとにフェイス・ジャックスが描いたもの。
006 口絵: Astbury陶人形。読書する人物。
007-009 THE INTRODUCTION: J. H.
不吉な数字の前号,第13号を無事乗り切ったこと。13号174ページのタイトル文字の「O」が天地逆になっていたが,読者のだれも気付いた気配がなかったこと。編集長がオークションで生きている孔雀を買ったこと。
010-011 THE CONTENTS(目次)
012 Madam, your Achilles Tendon is Showing: OGDEN NASH
(詩)オグデン・ナッシュの詩。流行についての詩一編。
♦013 THE SATURDAY BOOK Looking-glass of Taste
014-037 THE ART OF BEAUTY: EDWIN SMITH AND OLIVE COOK
(フォト・エッセイ)女性の美容・化粧用具づくし。19世紀日本の女性化粧写真と髪洗い浮世絵を含む。カラー・2色・モノクロ図版とテキストで構成。
038-046 PALLADIUM NIGHTS: J. W. LAMBERT
(エッセイ)ロンドンPALLADIUMの客を熱狂させたアメリカのティーン・アイドル,ジョニー・レイ(Johnnie Ray,1927~1990)。モノクロ写真1点。
047-053 THE GREAT DETECTIVE: JULIAN SYMONS
(エッセイ)ジャック・フットレル(Jacques Futrelle,1875~1912)の思考機械Professor Augustus S. F. X. Van Dusenら,シャーロック・ホームズのライヴァルたち。
054-061 A FAMILY OF PAINTERS: JOHN CONSTABLE〔1928~2002,John Constable(1776~1837)の曾曾孫〕
(フォト・エッセイ)画家ジョン・コンスタブルの曾曾孫が語る,代々画家のコンスタブル家の人々。カラー・モノクロ図版。
062-071 THE SAD STORY OF THE FUNNY FAT MAN: JOHN MONTGOMERY
(フォト・エッセイ)映画初期の喜劇スター,ロスコー・ファッティ・アーバックル(Roscoe 'FATTY' Arbuckle,1887~1933)はスキャンダルで人気凋落。¥モノクロ写真9点。
072-087 THE NATURAL HISTORY OF CHORUS GIRL: JAMES LAVER
(グラフィック・エッセイ)コーラスガールの博物誌。生真面目に。『~の博物誌(THE NATURAL HISTORY OF ~)』と題するエッセイの1編。モノクロ図版34点。
088 SLUM SONG: SACHEVERELL SITWELL
(詩)ヒアシンスが枯れて泣く少年。詩一編。
♦089 THE SATURDAY BOOK PANORAMA of the PICTURESQUE
090-101 ARCHITECTURE BEHIND THE IRON CURTAIN: MARIE NOËLE KELLY
(フォト・エッセイ)鉄のカーテンの向こうにあるロシアの建築。カラー写真4点・モノクロ写真7点。
102-114 A STREET IN SICILY: OLIVE COOK
(フォト・エッセイ)シチリア島の通りをぶらりと歩き回る。モノクロ写真10点。
115 WHAT MUSIC?: LAURENCE WHISTLER
(詩)真夜中過ぎのホルン。詩一編。
116-120 WELL-HEADS OF VENICE: ROBERT GIBBINGS
(フォト・エッセイ)ロバート・ギビングスがヴェニスの井戸彫刻を語る。モノクロ図版8点。
121-133 DOWN IN THE DARK: L. T. C. ROFT
(エッセイ)坑道,トンネルなど,ピクチャレスクな地下建造物を巡る。モノクロ図版4点。
134-145 THE PAGEANT OF THE SKIES: DAVID BOWEN
(フォト・エッセイ)イギリスの空。気象あれこれ。モノクロ図版11点。
146-154 UPS AND DOWNS Some Studies of Ceilings & Floors: Olive Cook
(フォト・エッセイ)天井と床について。カラー図版1点。モノクロ図版9点。
155-165 FIGURES IN THE CHALK: ERIC ST JOHN BROOKS
(フォト・エッセイ)バークシャーの丘斜面に刻まれた白馬像について。モノクロ図版5点。
♦166 THE SATURDAY BOOK CABINET of CRAFTS
167-175 DECORATION WITH DRIED FLOWERS: BETTY MASSINGHAM
(フォト・エッセイ)ドライ・フラワーの装飾。カラー図版3点。モノクロ図版3点。
176-183 EMBROIDERY FOR TODAY: HEBE COX
(フォト・エッセイ)現代の刺繍。カラー図版3点。モノクロ図版5点。
184-187 SHELL-CRAFT: MORRIS J. COHEN
(フォト・エッセイ)貝殻細工。カラー図版1ページ。
188-192 HOW TO LIGHT A FIRE: SIR STEPHEN TALLENTS
(エッセイ)暖炉の火を愉しむ。モノクロ写真1点。
193-200 SIGNS OF THE TIMES: REECE WINSTONE (1909~1991,写真家)
(フォト・エッセイ)商家の看板・エンブレム。モノクロ写真15点。
201-205 HOW TO KEEP GOLDFISH: PATRICK CAMPBELL(3rd Baron Glenavy,1913~1980,ジャーナリスト)
(エッセイ)バッキンガムシャーに暮らし始めて,庭の水路で金魚を飼おうとして大騒動に。
206 SIXTIETH BIRTHDAY: GERALD BULLETT
(詩)ここで降りることはできない。詩一編。
207 A PRAYER FOR WINTER: ANNA McMULLEN
(詩)詩一編。
♦208 THE SATURDAY BOOK Stories
208-221 A HUMAN BEING: L. P. HARTLEY(1895~1972)
(小説)55歳独身の銀行員Ernest Renshaw氏のところに7年間勤めていた家政婦Mrs Ransomeが急に辞めて…。「in the material world」という表現あり。
222-228 THE SPIRIT OF WILLING: DENNIS PARRY
(小説)私は夫のヘンリーに付きまとう女を片づけたいと…。
229-234 CHIN, CHIN, EMMY: OLIVIA MANNING(1908~1980)
(小説)友人への手紙の体裁をとった書簡小説。夫のAlecは2年ぶりに朝鮮戦争から帰国すると様子が依然と全く違う…。
♦235 THE SATURDAY BOOK COLLECTORS' ITEMS
236-243 AN ALPHABET OF AUCTIONS: WOLF MANKOWITZ(1924~1998,作家・劇作家)
(エッセイ)オークションに関する言葉でAからZまでのアルファベット。アルファベットものも定番の企画になっていきます。
244-247 LITTLE PEOPLE IN POTTERY
(フォト・エッセイ)18世紀イギリスの陶人形づくし。カラー写真2点。モノクロ写真1点。
248-256 ON COLLECTING WINE: EDMUND PENNING-ROWSELL(1913~2002,ワイン批評)
(フォト・エッセイ)ワイン収集指南。モノクロ写真3点。
257-260 AN ANTHOLOGY OF WAISTCOATS: MARY EDEN
(フォト・エッセイ)チョッキ(waistcoat)を着ている人々のポルトレ。モノクロ写真8点。前編集長Leonard Russellが着ているチョッキは,かつてオスカー・ワイルドが着ていたものだそうです。
261-267 JOYS OF THE JUNK SHOP: ALAN WALBANK
(エッセイ)ジャンク・ショップの愉しみ。
268-273 GALLANT INVENTIONS: J. S. BARWELL
(フォト・エッセイ)機関銃など勇ましい発明の数々。モノクロ図版10点。
♦274 THE SATURDAY BOOK PERSONAL COLUMNS
274-283 MORE MEMOIRS OF A BATMAN: ANONYMOUS
(エッセイ)12号に続きイギリス工兵隊当番兵の回想。
284-288 MORE BASONIANA: FRED BASON
(エッセイ)フレッド・ベイソンの身辺雑記。『リーダーズ・ダイジェスト』にダイジェストが載ったことで有名になったと感じています。
▲女性の美容・化粧用具づくしのページから。
商家の看板・エンブレムのページから。鉄製の煙突掃除人は強烈です。
♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦
71. 1953年の『土曜日の本』(2013年2月16日)
●『土曜日の本』その13
1953年発行。手もとにある版の前所有者は,1970年頃,この本を読んでいたようで,当時の新聞書評や雑誌切り抜きがはさまっていました。その中にGILLO DORFLES『KITSCH: An Anthology of bad taste』(Studio Vista,1970)の書評もありました。「キッチュ=悪趣味」と解したアンソロジーの書評でした。前所有者は,キッチュ=悪趣味の資料として『土曜日の本』を持っていたようです。
この号には,確かに「キッチュ=悪趣味」としか思えないものも紹介されています。例えば,剥製家ウォルター・ポッター(1835~1918)の動物群像は,かわいさを演出するために動物の剥製を使うという,現代から見れば倒錯的な悪趣味の極みのような作品群です。また,フランソワ・ブリュネリ(1849~1926)の愉快な枢機卿たちの絵も「キッチュ」を語るとき欠かせない作品群です。だいぶ前に読んだきりで,うろ覚えなのですが,青池保子の漫画作品『エロイカより愛をこめて』中の「笑う枢機卿」のアイデアの源になっていたような気がします。
この号からブックデザインは,フェイス・ジャックス(FAITH JAQUES,1923~1997,イラストレーター)が手がけるようになります。彼女は,ロアルド・ダールの『チャーリーとチョコレート工場』(1967),アーサー・ランサムのロシア昔話やアリソン・アトリーの作品の挿画でも知られる人です。彼女がイラスト1本で暮らすようになるのは1968年からで,それまでは教師兼業だったようです。
第13号で取り上げられている話題は,今号の数字「13」にまつわる話,クリスマス・シーズンものづくし,女装・男装の俳優,ウォルター・ポッターの擬人化された剥製動物群像,1912年に掘り出された17世紀の宝石装飾品チープサイドの宝箱,ゴシック小説『モンク』の作者,18世紀発明の大仕掛けなひげそり機械,17歳で1952年ウィンブルドン・チャンピオンになったアメリカのテニス選手モーリーン・コノリー,場違いな時代に生まれたとしか思えない叙事詩を書き「世界最悪の詩人」といわれた19世紀人ウィリアム・マクゴナガル,ネッシー情報を含む大海蛇調査,世界各地のドラゴン・竜,イギリス建築の入り口と出口,イタリア・サルディニア島,セザンヌの暮らした場所探訪,ホガースの「当世風の結婚」,編集長と同姓同名のジョン・ハッドフィールドが死刑に至るてんまつ,1860年代の木口木版に見るイギリス家庭,エリザベス・モンソン子爵夫人の肖像画,1560年エイミー・ロブサートの不審死,トマス・ボナム卿がもうけた子ども,ヴィクトリア期の花モチーフづくし,フレッド・ベイソンの収集品,フランソワ・ブリュネリの枢機卿の絵,コレクターの生態,クラシック・カー,文芸年評のパロディと,変わらず多彩で,読み物という体裁の中で,1巻に収まっているのが不思議な気もします。
ページ数は増えていますが,前号では1ページの行数41行だったものが今号では39行になって,行間が少し広くなって,見た目の印象がちょっと変わりました。
▲カヴァーのスタイルが変わりました。
■『THE SATURDAY BOOK 13』の内容
THE THIRTEENTH ANNUAL ISSUE OF
THE SATURDAY BOOK
FOUNDED BY LEONARD RUSSELL
EDITED BY JOHN HADFIELD
WITH DECORATIONS BY FAITH JAQUES
PUBLISHED BY HUTCHINSON & COMPANY
25s. net
THIS THIRTEENTH ANNUAL ISSUE OF THE SATURDAY BOOK
is made and printed in Great Britain at the Mayflower Press (of Plymouth), at Watford, by William Brendon and Son Ltd. The type has been set at the Gainsborough Press, St. Albans, by Fisher, Knight and Company, Ltd. The four-colour plates were engraved and printed by the Grout Engraving Company Ltd., at Bromley. The book was bound by Dow & Lester, Ltd., at Luton.
PUBLISHED IN 1953
カヴァー: FAITH JAQUESの装飾枠に本文で使用した写真を配置。
口絵: フラゴナールの『Souvenir』
『THE SATURDAY BOOK 13』の目次
005-006 Contents
♦007 THE SATURDAY BOOK CABINET OF CURIOSITIES
008-016 THIRTEEN - AND AFTER: JONATHAN CURLING
(エッセイ)13日の金曜日,パン屋の1ダースなど,数字13にまつわるお話。
017-036 The Festive Season CRIBS, CARDS, CRACKERS AND CLOWNS: Edwin Smith & Olive Cook
(グラフィック・エッセイ)クリスマス・シーズンものづくし。ヴィクトリア期起源のもの多数。カラー・2色・モノクロ図版とテキストで構成。
037-048 THE TRAGIC HISTORY OF TRAVESTY: KENNETH TYNAN(1927~1980,劇評家)
(エッセイ)女装・男装の俳優たちが持っていた可能性を失ってきた演劇の歴史。モノクロ写真10点。
049-060 Animal Fantasy THE TAXDERMIST OF BRAMBER: DEREK HUDSON
(フォト・エッセイ)ブランバーの剥製家Walter Potter(1835~1918)の剥製動物群像作品。カラー・モノクロ写真。その剥製作品群は2003年のオークションにかけられてしまい分散。
061-067 The jewels beneath the street THE CHEAPSIDE HOARD: OLIVER WARNER
(フォト・エッセイ)17世紀ごろ埋められ,1912年に掘り出された宝石石装飾品CHEAPSIDE HOARDについて。カラー・モノクロ写真。
068-075 'MONK' LEWIS: CYRIL RAY
(エッセイ)ゴシック小説『モンク』(1796)の作者Matthew Gregory Lewis(1775~1818)について。モノクロ図版5点。国書刊行会から翻訳されています。
076-080 WHAT BECAME OF THE SHAVING ENGINE ? : J.S.BARWELL
(グラフィック・エッセイ)1745年特許,James Playfairの発明した大仕掛けひげそり機械について。モノクロ図版1点。
081-085 Little Mo AMREICAN DREAM GIRL: NANCY SPAIN (1917~1964,ジャーナリスト)
(エッセイ)17歳で1952年のウィンブルドン・チャンピオン,アメリカのテニス選手Maureen Conolly(1934~1969)について。1953年女性最初のグランド・スラムを達成した選手。モノクロ写真1点。
086-103 THE GREAT McGONAGALL: JONATHAN MAYNE
(エッセイ)時代と場違いな印象を与える叙事詩人William McGonagall(1825~1902)。「the worst poets in the English language」として知られる。モノクロ図版4点。
104-114 A CENSUS OF SEA-SERPENTS: ANNA McMULLEN
(エッセイ)大海蛇についての調査報告。図版8点。
115-127 A CONVOCATION OF DRAGONS: MILES HADFORD
(エッセイ)世界各地のドラゴン・竜について。THE ITALIAN DRAGON,THE CHINESE DRAGON,THE MANTICORA,THE AMPHISBAENA,THE WYVERN,THE BASILISK。2色図版6点。モノクロ図版3点。
♦128 THE SATURDAY BOOK POEMS
128-132 Childhood: GERALD BULLETT (1893~1958,作家)
(グラフィック・詩)少年時代回想の詩。John Nashの2色図版3点。
♦133 THE SATURDAY BOOK OBSERVATIONS ON THE PICTURESQUE
134-139 Exits and Entrances: Olive Cook & Edwin Smith
(フォト・エッセイ)イギリス建築の入り口と出口。Edwin Smithのモノクロ写真13点。
140-148 Bearding the Bandits A DAY IN NUORO: ALAN ROSS (1922~2001,詩人・編集者)
(エッセイ)イタリア・サルディニア島の町Nuoroを旅する。モノクロ写真1点。
149-164 CÉZANNE COUNTRY: BILL BRANDT
(フォト・エッセイ)セザンヌの暮らした場所探訪。絵と実際の風景や静物の写真。モノクロ図版19点。
♦165 Saturday Book Stories THREE STORIES OF YOUTH
166-173 THE THRESHOLD: RICHARD POWER
(小説)夏休みに訪れる海辺の村で,Monnie少年が親しくしていたNed老人が倒れ…。R.L.Bickertonのモノクロ図版1点。
174-184 A South African Story My brother writes poetry for an Englishman: MARRIS MURRAY
(小説)大きな浜辺の近くに住む少女と詩を書く兄。Derek Pooleyのモノクロ図版2点。
185-194 THE GRAND DUKE'S DILEMMA: JOHN FOSTER WHITE
(小説)14歳で爵位継承したマントラニア大公Grand Duke of Mantraniaと革命。
♦195 TWO STORIES OF AGE
195-204 THE RETURN: JOHN MOORE(1907~1967,作家)
(小説)老人が,1920年代に税金対策のため売却した屋敷the Manorを再訪すると…。
205-216 COLLECTOR OF WEAPONS: T. O. BEACHCROFT
(小説)トニーおじさんが甥に語る,許せない親子の話。
♦217 THE SATURDAY BOOK HOLDS A MIRROR TO MATRIMONY (目次では215)
218-229 William Hogarth's MARRIGE-À-LA-MODE: PETER QUENNELL(1905~1993,文学史)
(フォト・エッセイ)カラー・モノクロ写真とテキストで構成。William Hogarth(1697~1764,画家)の「当世風の結婚」を堪能する。
230-238 A NOOSE FOR THE BRIDEGROOM: JOHN HADFIELD
(エッセイ)編集長と同姓同名のJOHN HADFIELD(1759~1803)が死刑に至るてんまつ。
239-245 Domestic Details from WOOD-ENGRAVINGS OF THE 'SIXTIES
(グラフィック)1860年代の木口木版に見るイギリス家庭の細部。モノクロ図版9点。
246-249 THE LADY WITH THE WHIP: MARY WOODALL
(エッセイ)ピーター・リリー(Sir Peter Lely)が肖像を描いたエリザベス・モンソン子爵夫人〔Elizabeth, Viscountess Monson of Castlemaine(1613~1695)〕について。カラー写真1点。
250-257 DID SHE FALL ? The Case of Amy Robsart: ERIC ST. JOHN BROOKS
(エッセイ)1560年,エイミー・ロブサート(Amy Robsart)は夫に殺されたのか。モノクロ図版2点。
258-260 HOW TO FILL A QUIVER: C. WILLETT CUNNINGTON
(エッセイ)ウィルトシャーのGreat Wishford村でSir Thomas Bonhamがもうけた子どもは…。
♦261 THE SATURDAY BOOK COLLECTORS' ITEMS
262-271 VICTORIAN FLOWER PIECES: BEA HOWE
(グラフィック・エッセイ)ヴィクトリア期の花モチーフのものづくし。モノクロ・カラー図版。
272-277 Among my Souvenirs: FRED BASON
(フォト・エッセイ)フレッド・ベイソン収集の雑多なお宝。モノクロ図版
278-288 Cardinalia: JOHN FLEMING
François Brunery(1849~1926)の枢機卿テーマの絵画作品群。もう笑う以外ない作品群です。「キッチュ(Kitsch)」という言葉を使用しています。モノクロ図版5点。
289-293 COLLECTOMANIA: WOLF MANKOWITZ(1924~1998,作家・劇作家)
(エッセイ)コレクターの生態。
294-308 Cars for Connoisseurs: L. T. C. ROLT(Lionel Thomas Caswall Rolt,1910~1974,作家)
(フォト・エッセイ)目利きのためのクラシック・カー。モノクロ図版16点。
♦309 THE YEAR'S LITERATURE (目次は308)
310-320 THE YEAR'S LITERATURE: DANIEL GEORGE
(エッセイ)文芸年評のパロディ。モノクロ図版13点。
▲剥製家ウォルター・ポッター(1835~1918)の動物群像は,擬人化した動物のかわいらしさを演出するために大量の動物剥製を使うという,現代から見れば,倒錯的で悪趣味の極みのような作品群です。『ピーターラビット』のベアトリス・ポッターが描いた着衣の小動物の世界は絵であればかわいらしいのですが,多数の小動物の剥製を使って表現されると,「かわいい」と言うのがはばかられる,とても奇妙な世界になってしまいます。
▲フランソワ・ブリュネリ(1849~1926)の描く枢機卿の絵も「キッチュ」を語るとき欠かせない作品群です。
▲17世紀頃に隠され,そのまま放置されて,1912年に掘り出された宝石装飾品群CHEAPSIDE HOARDから。こういう誌面レイアウトは『土曜日の本』では今までありませんでした。