●my favorite things 61 - 70
my favorite things 61(2013年2月6日)から70(2013年2月15日)までの分です。 【最新ページへ戻る】
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61. 1944年の『土曜日の本』(2013年2月6日)
62. 1945年の『土曜日の本』(2013年2月7日)
63. 1946年の『土曜日の本』(2013年2月8日)
64. 1947年の『土曜日の本』(2013年2月9日)
65. 1948年の『土曜日の本』(2013年2月10日)
66. 1949年の『土曜日の本』(2013年2月11日)
67. 1950年の『土曜日の本』(2013年2月12日)
68. 1951年の『現代の本と作家』(2013年2月13日)
69. 1951年の『土曜日の本』(2013年2月14日)
70. 1952年の『土曜日の本』(2013年2月15日)
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70. 1952年の『土曜日の本』(2013年2月15日)
●『土曜日の本』その12
1952年発行。この号から,レナード・ラッセル(Leonard Russell,1906~1974)に替わってジョン・ハッドフィールド(John Hadfield,1907~1999)が編集長になります。この2人の編集長と同世代の人――20世紀に生まれ,20世紀になくなった人――が『土曜日の本の』の中核をなす読者層なのだろうなと思います。ブックデザインに,ローレンス・スカーフェ(LAURENCE SCARFE)のほかに,エドウィン・スミス(EDWIN SMITH)と編集長も名前もクレジットされています。この号はダストラッパーに光沢コーティングはされていません。
第12号の内容は,変わらないという新編集長の方針表明,作家コンプトン・マッケンジーの孤島暮らし,海辺に関わるものづくし,イギリス風の休暇,イギリスの白い刺繍,ハートフォードシャー・ワットフォードのカントリーハウス「グローヴ」の栄光の日々,タイタニック号の沈没時に流れた音楽,ダグリッシュが選ぶ虫の詩,18世紀英国の家族肖像画家のアーサー・デヴィス,ウォルター・デ・ラ・メア外の短編小説,北アフリカ戦線イギリス工兵隊の回想,18世紀以降のイギリス庭園,シガレット・カードの収集,シャンパン酒の歴史,ローマの遺跡風景,フランスの小説家コレット,アフリカのピグミー族の暮らし,ナイトクラブを経営するおかみの唄,1920年代特集,ファッション・文学・スポーツ・ジャズの1920年代,20年代違いで1820年代のアンニュイな淑女の話といったぐあいで,雑多であることに変わりありません。
『土曜日の本』の本文活字は,第1号から第3号までは,バスカーヴィル(Baskerville)が使われていましたが,第4号から,1930年代に設計され鋳造されたMonotype社のTIMES(タイムズ・ニュー・ロマン)が使われるようになっていて,今号でもそれは変わりありません。
■『The Saturday Book 12』の内容
Twelfth Issue of
The SATURDAY BOOK
Founded by Leonard Russell
Edited by John Hadfield
PUBLISHED BY HUTCHINSON
25s. net
THIS TWELFTH ANNUAL ISSUE OF THE SATURDAY BOOK HAS BEEN DESIGNED BY LAURENCE SCARFE EDWIN SMITH AND THE EDITOR ★
THIS TWELFTH ANNUAL ISSUE OF THE SATURDAY BOOK
is made and printed in Great Britain at the Mayflower Press (of Plymouth) at Watford by William Brendon and Son Ltd. Type has been set at the Gainsborough Press, St. Albans, by Fisher, Knight and Company, Ltd. The four-colour plates were engraved and printed by the Grout Engraving Company Ltd., at Bromley. The book was bound by Dow & Lester, Ltd., at Luton.
Published in 1952
ダストラッパーデザイン: 貝飾りとジョージ朝(1910~1936)風の壁紙
▲見返しのパターンデザイン。
『The Saturday Book 12』の目次
003 title page〔羊毛刺繍絵(wool-picture)の写真〕
005-006 THE CONTENTS(目次)
11号まで毎号「犯罪」の記事があったのに,今号にはないことに編集段階で気づきます。そこで,目次の埋め草にエリザベス朝の犯罪現場の木版画を挿入。
007-012 INTRODUCTION: J. H.
(まえがき)新編集長の方針表明。自分が好きなものを本に載せるという『土曜日の本』の基本方針は変わりない。変わったといえば,ページが増えたことと図版が増えたこと。エリザベス1世の衣裳のモノクロ写真3点。肖像画カラー写真1点。黒図版2点。
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013-021 The Island Life: SIR COMPTON MACKENZIE(1883~1972,小説家)
(エッセイ)作家コンプトン・マッケンジーの子どもの頃からの夢は,孤島暮らし。その夢を実現させて島の所有者となります。その島(チャネル諸島のHerm,Jethou)での暮らしについてのエッセイ。カラー1点,モノクロ3点。1819年にWilliam Daniellが描いたスコットランドのShiant島の図版(その島をコンプトン・マッケンジーが一時期所有)。コンプトン・マッケンジーは全10巻の自伝を残しています。アメリカの批評家エドマンド・ウィルソン(Edmund Wilson,1895~1972)にとって,コンプトン・マッケンジーは若いときに読んで以来,次作を期待するお気に入りの作家でした。コンプトン・マッケンジーが,その変わらない期待に応えた作品を残したかというと,難しいところです。
022-044 Beside the Seaside: OLIVE COOK & EDWIN SMITH
(グラフィック・エッセイ)オリーヴ・クックとエドウィン・スミスによる海辺のお土産屋みたいな図版構成。カラー・モノクロ図版とテキストで構成する海辺に関わるものづくし。日本からフグ提灯まで品揃え。
045-050 Britain for the Holiday: Six Sonnets by CHRISTOPHER MORLEY(1890~1957,アメリカの詩人)
(詩)イギリス風休暇の詩。Laurence Scarfeの2色図版5点。
051-058 An Artist on the Seine: ROBERT GIBBINGS
(グラフィック・エッセイ)ロバート・ギビングスが描くセーヌ川のスケッチ,ヌード・デッサンとテキスト。ROBERT GIBBINGSの2色図版7点,黒図版3点。
059-065 Embroidered in White: OLIVE COOK
(フォト・エッセイ)イギリスの白い刺繍。エドウィン・スミス(Edwin Smith)のモノクロ写真とオリーヴ・クックのテキスト。
066-072 Glories of The Grove: GERALD HYDE VILLIERS(4th Earl of Clarendonの孫)
(エッセイ)週末のゲストは,Palmerston,Lady Holland,Macaulay,Bulwer Lytton,…と名士ばかり。ハートフォードシャー,ワットフォード(Watford)のカントリーハウス「グローヴ(The Grove)」の栄光の日々。黒図版1点。
073-080 S. O. S. Titanic: DEREK HUDSON
(エッセイ)タイタニック号の船客ビーズレイ(Beesley)の記録を中心に。「Nearer, my God, to Thee」の音楽とともに沈没するタイタニック号。
081-087 An Anthology of Insects: ERIC FITCH DAGLISH(1892~1966,ナチュラリスト作家,木版画家)
(詩・グラフィック)エリック・フィッチ・ダグリッシュが選ぶ,虫が主題の詩。ERIC FITCH DAGLISHの黒木版図版6点。ダグリッシュがおもに木版で描く動物・鳥・昆虫には,味わいがあります。
088-098 The World of Arthur Devis: SACHEVERELL SITWELL(1897~1988,作家)
(エッセイ)サシェヴァレル・シットウェルの美術エッセイ。18世紀英国の家族肖像画家のアーサー・デヴィス(Arthur Devis,1712~1787)の世界。カラー図版8点。
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099 SATURDAY BOOK STORIES
099-106 WALDO: YVONNE SEAGER
(小説)Lenarita嬢の結婚顛末。Brian Robbの黒図版2点。
107-133 An Anniversary: WALTER DE LA MARE
(小説)AubreyとEmilyの夫婦に嫉妬がもたらしものは…。Frederick Exellの2色図版3点・黒図版2点。
134-136 Missing Gentleman: Adrian Alington
(小説)クリスマスにおじさんが失踪して…。Anthony Gilbertの黒図版1点。
137-140 Three Wise Men: JOANNA CANNAN (1898~1961,作家)
(小説)SusanとDick夫婦の3人の息子たちがクリスマスに…。Sarah Nechamkinの図版2点。
141-149 The Barber's Parrot: GERALD BULLETT (1893~1958,作家)
(小説)床屋のSparkfieldさんのところにオウムを連れた船乗りが来て…。Laurence Scarfeの2色図版1点。
151-156 Insomnia: JOHN PUDNEY
(小説)母親と二人暮らしのSophyは不眠症で…。Susan Einzigの2色図版1点。
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157-168 Memoirs of a Batman: ANONYMOUS
(エッセイ)北アフリカ戦線イギリス工兵隊の当番兵の回想。エドワード・アーディゾーニ(Edward Ardizzone)の黒図版5点。
169-187 Gardens of the Great: MILES HADFIELD
(グラフィック・エッセイ)イギリスの庭園。特に18世紀以降。カラー・2色・モノクロ図版とテキストで構成。
188-195 Got a Fag Card, Mister ? : FRED BASON
(エッセイ)フレッド・ベイソンが語るシガレット・カードの収集。カードのカラー・モノクロ写真。
196-200 Champagne in History: T. A. LAYTON
(エッセイ)シャンパン酒の歴史あれこれ。
201-207 ROME: PETER & RODERICK PRYOR
(フォト・エッセイ)ローマの遺跡のある風景。モノクロ写真8点とテキストで構成。
208-215 Colette: KAY DICK
(エッセイ)フランスの小説家コレット(1873~1954)について。モノクロ写真5点。
216-223 Pigmy Paradise: COLIN TURNBULL (1924~1994,人類学者)
(エッセイ)アフリカのピグミー族の暮らし。Diana Masonの2色図版1点・単色図版3点。
224-225 Sun and Fun SONG OF NIGHT-CLUB PROPRIETRESS: JOHN BETJEMAN(1906~1984,詩人)
(詩)ナイトクラブを経営するおかみの唄。Ronald Searleの単色図版2点。
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226-235 The 'Twnties: JAMES LAVER
(フォト・エッセイ)1920年代風俗。音楽・ファッションを中心に。2色図版1点。モノクロ写真10点。
236-246 The 'Twnties The Blithe Spirit of the 'Twnties: J. W. LAMBERT
(フォト・エッセイ)文学作品にみる楽しげで軽薄な1920年代。モノクロ写真6点。
247-257 The 'Twnties The Golden Age of Sport: HOWARD MARSHALL(1900~1973,BBCスポーツ解説)
(フォト・エッセイ)スポーツ花盛りの1920年代。クリケット,テニス,…。1920年代を20歳代で過ごした人の1920年代回想。モノクロ写真13点。
258-269 The 'Twnties The Golden Age of Jazz: HUMPHREY LYTTELTON(1921~2008,ジャズ・ミュージシャン,愛称「Humph」)
(フォト・エッセイ)後追い世代の英国ジャズトランペット奏者ハンフリイ・リトルトンから見たジャズの黄金時代1920年代。モノクロ写真8点。
270-284 The 'Twnties The Age of Release: C. E. M. JOAD(1891~1953,哲学者)
(フォト・エッセイ)「解放」の時代1920年代。モノクロ写真15点。
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285-296 L'Ennuyee: EDMUND BLUNDEN(1896~1974,詩人)
(エッセイ)1820年代の若くアンニュイな淑女Miss Georgina Beetのお話。Philip Goughの2色図版5点。
海辺の行楽地にある骨董店化しつつある土産物屋の品揃えのような図版。
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69. 1951年の『土曜日の本』(2013年2月14日)
●『土曜日の本』その11
1951年10月発行の第11号です。ダストラッパーの絵は前号に続いてジョアン・ハッサルです。今回は版画でなく,水彩画です。ジョアン・ハッサルがダストラッパーの絵を担当したのは10号と11号だけで,もう少し続いたらとよかったのにと思います。この第11号で,編集長レナード・ラッセルが編集から退いたことも関係していたのでしょうか。次の第12号からジョン・ハッドフィールド(John Hadfield)が編集長になります。
この号のまえがきで『THE SATURDAY BOOK』第10号がフランシス・メイネルとデズモンド・フラワーの「イギリスでのブックデザイン復活を物語るために選ばれた100冊の本」の1冊に選ばれたことについて言及しています。
『土曜日の本』の特徴の1つに箱入りということがあって,いかにも贈り物向けの身と蓋に分かれた貼り箱に入っています。いつから箱入りになったのかはっきり分からないのですが,第10号には箱入りのものがあるのは確かですので,少なくとも第10号以降は箱付きのものが完本ということになるのだと思います。
第11号の題材は,人と動物の関わり,バッキンガム宮殿の近衛兵,新聞の大見出し記事その後,1932~33年の英国クリケット代表のオーストラリア遠征,オックスフォード・ユニオン協会の言論自由討論,1931年金本位制からの離脱,1944年の割れあご殺人事件,1940年のトロッキー暗殺,1920年代ロンドンの街の奇人,英国スポーツ,挿絵本収集,時計のラベル,本屋のラベル,ナポリ湾のイスキア島のイスキアポンテ,木がもつ個性,沈没事故でノルウェーの乗員遭難救助,アーティゾーニの川の旅絵日記,1943年末イタリアのカラブリアの英軍,エドワード・マーシュ所有の詩人たちの原稿ファクシミリ,1952年のアメリカ大統領選挙を前に,1862年,ノーフォークのウィンダム家がカントリーハウスを手放した理由,裁判実録もので有名な犯罪学者ウィリアム・ラフヘッド,H. E. ベイツほかの小説,小村ペットワースの画家ターナー,文学に登場した「不作法」な女性の三強,1726年黒ウサギを4羽産んだ女性,繰り返し読む本についてなど,暇つぶしの宝箱です。
『土曜日の本』を離れたあと,レナード・ラッセルは,『サンデイ・タイムズ(The Sunday Times)』誌の編集専業となります。その仕事のなかで,鹿児島とも無関係でない(といっても,風吹けば桶屋が儲かる式のつながりですが)作品のお膳立てをしています。
1950年代後半,『サンデイ・タイムズ』誌は,007シリーズで人気作家になっていたイアン・フレミング(Ian Fleming,1908~1964)の世界一周記事を企画します。企画したのはレナード・ラッセルで,イアン・フレミングは最初は断ったようですが,007の題材探しにもなるとレナード・ラッセルに説得され,この企画でイアン・フレミングは初めて日本を訪れます。1959年のことです。この旅行は,結果として,イアン・フレミングが書いた最後の007もの長編『007は二度死ぬ(You Only Live Twice)』(1964)に結びつきます。いってみれば,ラッセルの企画提案がなければ,日本を舞台にした007ものは無かったことになるわけです。
映画版『007は二度死ぬ』(1967年公開)は,日本でロケが敢行され,鹿児島の坊津や霧島新燃岳で撮影されています。そのなかで,日本のエージェンシーの長で,007ことジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)を助けるタイガー田中(演じるのは丹波哲郎)の家の場面は,鹿児島市の重富荘で撮影されています。変な話かもしれませんが,実在の人物と架空の人物が住み分けている架空の鹿児島住宅地図みたいなものを想像してみると,夏目漱石の先生だったジェームズ・マードックの邸跡は重富荘の隣にあったので,ジェームズ・ボンドを助けるタイガー田中とは,鹿児島では,お互い隣に住んでいたことになってしまいます。ジェームズ・マードックもショーン・コネリーもスコットランド人ですから,これも何かの縁,と言いたいところです。
この「タイガー田中」のモデルになった人物がいます。1959年と1962年に2回来日したイアン・フレミングの案内役をつとめた朝日新聞社の斎藤寅郞です。寅がタイガーになったわけです。斎藤寅郞は,明治35年(1902)東京に生まれ。東京府立一中では小林秀雄と同級で友人です。昭和5年(1930)早稲田大学建築科を卒業後,朝日新聞社に入社。『航空朝日』編集長,学芸部長,航空部次長,英字誌『ジス・イズ・ジャパン(This is Japan)』の編集長などをつとめています。昭和42年(1967)退社。建築・航空評論家。斎藤寅郞研究室主宰。回想録があったら,とても面白そうな人物です。イアン・フレミングが日本を訪れたのは,007の映画が公開される前でしたから,人気作家というより,単に『サンデイ・タイムズ』の特派員ということで,日本では無名の存在だったようです。
▲第11号の見返し
■『The Saturday Book 11』の内容
Edited by Leonard Russell
THE Saturday Book
being the Eleventh Annual Appearance of this Renowned Repository of Curiosities and Looking-Glass of Past and Present
The Book designed by Laurence Scarfe
HUTCHINSON
25s. net
ダストラッパー絵: Joan Hassallの水彩
口絵: Royal Rose(花の中心にPrincess Charlotteの横顔)
MADE AND PRINTED IN GREAT BRITAIN
AT THE MAYFLOWER PRESS (OF PLYMOUTH) AT WATFORD
BY WILLIAM BRENDON AND SON LTD
FOUR COLOUR PLATES
ENGRAVED AND PRINTED BY
THE GROUT ENGRAVING COMPANY LTD
PUBLISHED OCTOBER 1951
DRAWINGS BY Edward Ardizzone, Joan Hassall, Evadne Rowan, Stuart Boyle, Kassemoff, Laurence Scarfe, Malvina Cheek, Averil Mackenzie-Grieve, C. F. Tunnicliffe
PHOTOGRAPHS BY David Gurney, Peter H. Jones, Howard Byrne
『The Saturday Book 11』の目次
003 title pages
005-006 Contents(目次)
007-008 THE SATURDAY BOOK An Announcement by the Publishers
編集長Leonard Russellは今号で引退,次号からJohn Hadfieldが編集長にという告知。Modern Books and Writers Exhibition のカタログで,『THE SATURDAY BOOK』10号がFrancis Meynellらが選ぶ本百選に選ばれたことへの言及と感謝。
♦ 009 EDITORIAL
009-018 Introduction: or The Saturday Book Dog and Bird Shop: L. R.
Leonard Russellのまえがきと,人と動物のモノクロ図版で構成。
♦019 PICTORIAL
019-032 And the King's Men: HOWARD BYRNE
(フォト)バッキンガム宮殿の近衛兵カラー写真とテキスト。近衛兵の赤を強調したカラー。
♦033 SENSATIONAL
新聞の大見出しになった記事のその後。
033-039 Headlines & Footnotes 1 The Bowling called Bodyline: JOHN ARLOTT(1914-1991,作家)
(エッセイ)1932~33年の英国クリケット代表のオーストラリア遠征。
040-046 Headlines & Footnotes 2 Oxford, King and Country: DEREK HUDSON
(エッセイ)1933年,言論の自由の場所Oxford Union Societyで「ここでは,どんなことがあっても国王と国のために戦うことは決してない(This House will under no circumstances fight for its King and Country)」ということが議論されたこと。
047-050 Headlines & Footnotes 3 The Gold Standard, 1931: ROY HARROD(1900~1978,経済学者)
(エッセイ)1931年9月の英国の金本位制からの離脱。
051-055 Headlines & Footnotes 4 The Cleft Chin Murder: EDGAR LUSTGARTEN(1907~1978,犯罪ノンフィクション作家)
(エッセイ)1944年の若い男女による殺人。被害者の割れあごに特徴があったことから「割れあご殺人(Cleft Chin Murder)」とよばれた事件。オーウェルの「The Decline of English Murder」でも言及されている事件です。
056-060 Headlines & Footnotes 5 The Death of Trotsky: JULIAN SYMONS
(エッセイ)1940年のトロッキー暗殺。
061-064 Headlines & Footnotes: A Postscript: Small Eccentrics: C. R. HEWITT(1901~1994,警察出身の作家)
(エッセイ)1920年代のロンドンで見かけられた奇人たちについて。
♦065 RECREATIONAL
065-088 SPORTS FOR ALL SEASONS: Olive Cook & Edwin Smith
(グラフィック・エッセイ)オリーヴ・クックとエドウィン・スミスによる英国スポーツ関連グッズのグラフィティ。モノクロとカラー図版とテキスト。
♦089 ECLECTICAL
089-100 A New Field for the Collector: P. H. MUIR
(エッセイ)挿絵本収集のすすめ。黄・黒2色図版7点。
101-105 Unconsidered Trifles: ROLAND KNASTER(収集家)
(エッセイ)時計のラベル,本屋のラベルなど,収集家の好奇心を誘うもの。黄・黒2色図版1点。
♦106 HISTORICAL
106-112 The Deserted Citadel: AVERIL MACKENZIE-GRIEVE
(エッセイ)ナポリ湾のイスキア(Ischia)島のイスキアポンテ(The Aragonese Castle,Castello Aragonese,Ischia Ponte)の歴史。黒図版1点。
♦112 FLORAL
112 折り込みカラー ROSES all the way
(グラフィック・エッセイ)ルドゥテらの描くバラの絵。
♦113 RURAL
113-122 The Personality of Trees: ALISON UTTLEY
(エッセイ)1本1本の樹木がもつ個性。茶図版4点。
♦123 PERSONAL
123-128 The Wreck of the S. S. Maud: RONALD DUNCAN
(エッセイ)北デヴォン海岸ものの続編。沈没事故でノルウェーのS. S. Maud.号の乗員遭難救助。
129-140 A Diary of a HOLIDAY AFLOAT: EDWARD ARDIZZONE
(グラフィック・エッセイ)エドワード・アーティゾーニの川旅絵日記。手書きの文章とドローイング。
141-154 Browsing With Bason: FRED BASON
(エッセイ)『フレッド・ベイソンの日記(Fred Bason's Diary)』出版後,ベイソンの生活に変化が訪れたのか。黒図版1点。
155-158 The Leader of the Pack: DENYS HAMSON
(エッセイ)第二次世界大戦中の1943年末イタリアのカラブリアで英軍は…。
♦159 POETICAL
159- Sir Edward Marsh's Little Book
(エッセイ・ファクシミリ)エドワード・マーシュ(Edward Marsh,1872~1953)所有の詩の原稿ファクシミリ。Thomas Hardy,A. E. Houseman,John Masefield,Rupert Brooke,H. Belloc,Maurice Baring,Frances Cornford,Walter de la Mare,William H. Davies,D. H. Lawrence,Siegfried Sassoon,Rudyard Kipling,Edmund Blunden,T. E. Lawrence,John Galsworthy,Max Beerbohm,Lytton Strachey,Christopher V. Hassall,Edward Marshらの詩の原稿。緑・黒図版23点。
♦183 PHENOMENAL
183- The Greatest Show On Earth: D. W. BROGAN
(エッセイ)来年1952年のアメリカ大統領選挙を前にして,アメリカ大統領選挙について。
♦191 VICTORIANA
191-210 Mr and Mrs Windham: A Mid-Victorian Melodrama from Real Life: DONALD MacANDREW
(エッセイ)1862年,ノーフォークのWindham家がカントリーハウスFelbrigg Hallを手放した理由。Agnes Willoughby主演のメロドラマ展開。
♦211 CRIMINAL
211-224 William Roughhead & His Crimes: PETER HUNT
(エッセイ)裁判実録もので有名な犯罪学者William Roughhead(1870~1952)。赤・黒2色図版1点。黒図版1点。
♦225 FICTIONAL
225-246 The Snow Line: H. E. BATES
(小説)小さな町で,菓子や新聞を売る角店を営む独身三十男。母と二人暮らしだったが,母が亡くなって…。黒図版1点。茶・黒2色図版1点。
247-251 The Miracle: HUGH MASSINGHAM(Harold John Massingham 1888~1952,作家)
(小説)第二次世界大戦後,イタリアの小村を訪れたイギリス人夫婦が,アメリカ兵墓地の遺体回収のごたごたに巻き込まれて…。
252-269 Cupid and the Dutches: JOSEPHINE BLUMENFELD
(小説)ホテル夜勤のCupid君がホテル住まいの老貴婦人から恋人について言われたのは…。黒図版1点。茶・黒2色図版1点。
♦261 ENDPAPERS
261-266 Turner at Petworth: OLIVE COOK
(エッセイ)イギリス南部の小村ペットワースの画家ターナー。茶図版1点。茶・黒2色図版1点。
267-272 Three Rude Ladies: NAOMI LEWIS
(エッセイ)「不作法」がアートの領域に入るとしたら,文学に登場した三強「不作法」女性はだれか。Mrs Proudie(wife to the Bishop of Barchester),The Right Honourable Lady Catherine de Bourgh,そして,the Honourable Mrs Jamieson。
273-275 The Case of Mary Tofts: C. WILLETT CUNNINGTON
(エッセイ)1726年黒ウサギを4羽産んだということで有名になったMary Toftsのお話。
276-279 Crumpet and Cucumber Reading: LESLEY BLANCH(1904~2007,作家)
(エッセイ)二度以上読む本について。
280 Joan Hassallの黒図版1点。
▲アーティゾーニの川旅絵日記だけの誌面。
アンリ・ルソーの絵とエドワード期の絵はがきをボーダーつながりで並べているところが『土曜日の本』らしいところです。
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68. 1951年の『現代の本と作家』(2013年2月13日)
1950年10月発行の『THE SATURDAY BOOK』10周年記念号は,フランシス・メイネル(Francis Meynell)らが,ナショナル・ブック・リーグ(N. B. L.)の企画で1951年に行ったイギリスの本百選に選ばれています。
1951年は,イギリス全土で「英国祭(The Festival of Britain)」が開催されました。戦後復興を目的として開催された展覧会です。これは世界初の万国博とされる1851年開催のロンドン万国博覧会(The Great Exhibition)から100周年ということもあって,企画開催されました。
出版の分野でも企画展が催され,全英図書連盟(NATIONAL BOOK LEAGUE,略称N.B.L.)では,「現代の本と作家(MODERN BOOKS AND WRITERS)」と題して,原稿と本の展示を行いました。これはそのカタログになります。残念ながら図版は収録されていませんが,お祭りということで,その100選の当否も含めて楽しめます。表紙中央にある本の木版イラストは,ジョアン・ハッサルの手になるもののように思いますが,これは確かではありません。
2部構成になっていて,第1部は「100人の現代作家」です。選者は,
V. S. プリチェット(V. S. Pritchett,1900~1997,作家・批評家)
ローズ・マコウレイ(Rose Macaulay,1881~1958,作家)
セシル・デイ・ルイス(C. Day Lewis,1904~1972,詩人)
の3人です。
第2部は「イギリスでのブックデザイン復活を物語るために選ばれた100冊の本」です。選者は,
フランシス・メイネル(Sir Francis Meynell,1891~1975,出版者)
デズモンド・フラワー(Desmond Flower,1907~1997,作家・出版者)
の2人です。『土曜日の本』第10号は,第2部の100番目の本として,選ばれています。企画自体もお祭りですが,フランシス・メイネルは『土曜日の本』を愉快な「レヴュー(revue)」のような本として評価しています。その選評です。
100 THE SATURDAY BOOK, edited by Leonard Russell, designed by Laurence Scarfe. Tenth anniversary issue. Hutchinson, 1950. Printed in Times by William Brendon at the Mayflower Press, Watford. Four colour-plates engraved and printed by the Grout Engraving Company
If one book, and one book only, had to represent the full versatility and fanciful possibilities of printing today, this would be it. It is not made in the traditional manner of a book or even of a keepsake or album (for this, see No. 37). It is a "mixty-maxty", to use a pleasant old term for a medley, not merely in its contents, as are other albums, but also in its typography and illustration. Every section is designed anew to fit its theme: but so closely interwoven are theme and presentation that it is hard to determine which partner predominates. The editor and the designer must to some extent have shared functions, even perhaps on occasion exchanged them. The result is a brilliant tour-de-force. The spirit is akin to that of the too-much-despised twenties, the style is "improved Victorian", the whole is a magazine light-hearted, intelligent, civilised and "amusing", like a clever, intimate revue. (Which means that you must not judge it as if it were Racine at the Comédie Française, or the Doves Press Bible.)
【コメント試訳】1冊の本で、あるいは1冊の本だけで、今日の印刷が持つ全能力や想像的な可能性を表わさなければならない場合,この本を選びます。これは,いわゆる,本,贈答用装飾本,または選集などの型どおりの制作手法で作られてはいません(これに関しては、*37番を参照のこと)。雑録を表す,楽しげな昔ながらの語を使えば,これは「ミクスティマクスティ(ごたまぜ)」で,それまでの選集のように単に内容だけの雑録ということでなく,そのタイポグラフィーと図版も含めたミクスティマクスティ(ごたまぜ)になっています。すべての項目は,そのテーマに合わせて新たに設計されています。しかし,テーマとその提示法はとても緊密に織り込まれているので,どちらが支配的なのか決定することが困難なくらいです。編集者とデザイナーは,ある程度まで,お互いの役割を共有し,恐らく時には役割を交換してさえいます。その結果は見事な離れわざです。その精神は軽蔑されすぎている「20年代」と同種のものです。そのスタイルは「改良型のヴィクトリア朝」でしょうか,全体として陽気な雑誌に仕上がっています。頭の回転が速くて,親しみやすいレビュー・ショウのように知的で,文明化され,「面白い」のです。(それはつまり,コメディ・フランセーズで上演されるラシーヌの悲劇,またはダヴズ・プレス版の『聖書』と同じ土俵で判断してはならないことを意味していますが。)
注* 100選の37番は,アンソロジー『THE NEW KEEP-SAKE』(Cobden Sanderson, 1931)です。
「イギリスでのブックデザイン復活を物語るために選ばれた100冊の本」には,
●クロード・ローヴァット・フレイザーの『THE LUCK OF THE BEAN-ROWS』(Daniel O'Connor,1918)Printed by the Westminster Press
●ジョン・ファーリー(John Farleigh)『刻まれたイメージ(GRAVEN IMAGE)』(Macmillan,1940)Printed by the Curwen Press
と「My Favorite Things」で紹介した本も選ばれています。
『現代の本と作家』展カタログの刊記は次のようになっています。
MODERN BOOKS AND WRITERS
The Catalogue of an Exhibition held at Seven Albemarle Street
April to September 1951
Published for NATIONAL BOOK LEAGUE
by the Cambridge University Press
Price: One Shilling and Sixpence
PRINTED AND BOUND IN ENGLAND BY
HAZELL WATSON AND VINEY LTD
AYLESBURY AND LONDON
PART I One hundred modern writers: original manuscripts first editions inscribed copies portraits
The Selectors
V. S. Pritchett
Rose Macaulay
C. Day Lewis
PART II One hundred books chosen to illustrate the renascence of book design in Great Britain
The Selectors
Sir Francis Meynell
and
Desmond Flower
朝日新聞の島田巽は,1951年の夏,この展覧会を見ていて,『ふだん着の英國』(暮しの手帖社,1955年)に収録された「イギリスの百書選定」というエッセイを書いています。「およそ四方八方,見逃すことはないと思われる松方三郎さんに誘われて,ピカディリの通りを北へはいつたナショナル・ブック・リーグの本部で,この百書選定展覧會は開かれていたのであつた」とあって,共同通信の松方三郎に誘われて出掛けたようです。松方三郎は,薩摩藩出身の松方正義の末っ子で,松方コレクションで知られる松方幸次郎の弟です。
「一つはケンジントンのヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアムで開かれていた『フェスティヴァル・オブ・ブックス』という大展覧會であつた。(略)これと並んで,ブック・リーグでは,本部の展示室を利用して,もつと地味ではあるが,身のある仕事をやろうとした。(略)こうしてN. B. L. の一つの展示室には現代作家百名の著書と原稿を陳列し,他の一室には現代圖書の装釘と製本技術の發展およびその成果を示す百冊が並べられた。つまり造本と内容という二つの形式の百書選定が行われたわけである。もともと百書選定を戦後に實行に移そうとする企ては,ユネスコから生れた考えなのであつた。」
「幸いにも一九五一年度のN. B. L. 副會長であつたサー・フランシス・メイネルは,ブック・デザインの分野では國際的に令名の高い専門家であつた。デズモンド・フラワー氏がサー・フランシスと協力することになつて,この二人の判斷で百冊を選んで行つたのであつた。
『大體百冊という數が獨斷的な氣ままなものだし,一八八三年以來という年も氣ままな選擇である。どれをよい本というか,そもそも本の定義からして氣まぐれなものだし,われわれを裁定者に選んだことからして獨斷的な氣まぐれである。』
と大いに裁定の權威について謙遜を示している。(略)ブック・デザインといいながら,決して豪華本の羅列で濟まさずに,あらゆる點でバランスがとれていることを條件としているのが快よく思われたのであつた。」
そして「百冊目はハッチンスン刊行の The Saturday Book 一九五〇年版十周年記念號で終つているのであった」とあるので,島田巽や松方三郎には『土曜日の本』的なものも視野には入っていたようです。
▲島田巽『ふだん着の英國』(暮しの手帖社,1955年)これは昭和36年(1961)の第3刷です。装本は花森安治です。
暮しの手帖社の奥付は,いつもスタイリッシュです。
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67. 1950年の『土曜日の本』(2013年2月12日)
●『土曜日の本』その10
1950年10月発行。ダストラッパーの絵はジョアン・ハッサル(Joan Hassall,1906~1988)です。ジョアン・ハッサルのカラー版というのは,意外と見ないような気がします。
この『THE SATURDAY BOOK』10周年記念号は,フランシス・メイネル(Francis Meynell,1891~1975)らが,ナショナル・ブック・リーグ(N. B. L.)の企画で1951年に行ったイギリスの本百選(1883年~1950年に出版されたものからの百選)に選ばれています。フランシス・メイネルは,詩人アリス・メイネルの息子で,ノンサッチ・プレスの創業者です。ウィリアム・モリス以後の20世紀の本づくりで,中心的な存在の1人です。
10周年記念号の題材は,ロンドンのバレエ・シーン,1950年版シンデレラ,航海に関わるものづくし,水兵グッズあれこれ,トランプゲームの研究家イライ・カルバートソン,神秘家グルジェフ,フレッド・ベイソンの身辺雑記,ローレンス・ホイッスラーの彫りガラス,ウォルター・デ・ラ・メアの選ぶソネット,カヤックの操作法,第二次世界大戦中シリアのダマスカスでの戦い,インド洋のセイシェル島の谷にだけ育つオオミヤシ,学生時代に体験した炭鉱生活,ヴィクトリア期の新開地ノッティング・ヒルの北ラドブローク・グローヴ周辺,ヴィクトリア期もっともけんかっ早いといわれたジャコメッティ・プロジャース夫人,耳に心地よい地名・心地よくない地名選,芝居のアンチクライマックス,旅の古物商,英国の田舍料理,バウワー農園の暮らし,古い教会の墓石彫刻,家の中に花を飾ること,ヨーロッパ人のモロッコ体験,フランスの中世からの市場街ショヴィニー,珍しい切手とその価値,エリザベス朝の書き文字,アイルランドの田舍の川など,毎度の事ながら,多彩です。
■『The Saturday Book 10』の内容
edited by LEONARD RUSSELL
The SATURDAY BOOK
celebrating the TENTH ANNIVERSARY of this RENOWNED Repository of Curiosities and LOOKING-GLASS of Past and Present
The Book designed by LAURENCE SCARFE
HUTCHINSON
21s.net
ダストラッパー絵: 印刷原版になる金属版にジョアン・ハッサルが直接彫版して制作。4色カラー・光沢コーティング。
口絵: 道化師カラー写真
MADE AND PRINTED IN GREAT BRITAIN
AT THE MAYFLOWER PRESS (OF PLYMOUTH) AT WATFORD
BY WILLIAM BRENDON & SON LTD
FOUR COLOUR PLATES
ENGRAVED AND PRINTED BY
THE GROUT ENGRAVING COMPANY LTD
PUBLISHED OCTOBER 1950
『The Saturday Book 10』の目次
003 title pages
005-006 Contents(目次)
♦007 EDITORIAL
007-014 INTRODUCTION - in spite of Coco: L. R.
編集者まえがき。「Coco」は,レナード・ラッセルの愛犬の名前。バックナンバーの題材の2色や4色カラー図版。
♦015 PICTORIAL
015-024 Ballet in London
(フォト)ロンドンのバレエ・シーン。Margot FonteynやTamara Toumanova,Moira Shearerら。バレエ愛は変わりません。カラー写真とテキスト。
♦025 SATIRICAL
025-056 The True Story Of CINDERELLA: Sir Osbert Sitwell(1892~1969,作家)
(小説)オズバート・シットウェルによる1950年版シンデレラ,その真実の物語。Robin Jacquesの赤・黒2色図版2点,赤図版4点。
♦057 NAUTICAL
057-080 Ship Shape: Olive Cook & Edwin Smith
(フォト・エッセイ)モノクロ・カラー写真とテキストで構成する航海に関わるものづくし。水兵グッズあれこれ。
♦081 PHENOMENAL
081-085 The Key to Culbertson: BERTRAND RUSSELL(1872~1970,哲学者)
(エッセイ)バートランド・ラッセルが出会った最も驚くべき人物,カード・ゲーム,特にブリッジの研究家Ely Culbertson(1891~1955)。黄・黒2色図版1点。
086-091 The Greatness of Gurdjieff: KENNETH WALKER
(エッセイ)アルメニア出身の神秘家グルジェフ(1866?~1949)のポルトレ。黄・黒2色図版1点。
♦092 AUTOBIOGRAPHICAL
092-112 Another Bundle from Bason: FRED BASON
(エッセイ)6号連続登場のフレッド・ベイソン。身辺エッセイ。黄・黒2色図版1点。
♦113 ORIGINAL
113-128 Artist in Glass: The Engravings of Laurence Whistler: JOHN HADFIELD
(フォト・エッセイ)モノクロ写真とテキストで構成するローレンス・ホイッスラー〔Sir (Alan Charles) Laurence Whistler,1912~2000,詩人,ガラス彫刻家。画家のRex Whistlerの弟〕の彫りガラス。
♦129 POETICAL
129-155 Sweet as Roses A Little Treasury of Sonnets: collected and introduced by WALTER DE LA MARE with decorations by LAURENCE SCARFE
(詩)ウォルター・デ・ラ・メアの選ぶソネット集。赤・黒2色図版9点。
♦156 EMPIRICAL
156-162 The Art of Kayaking: F. SPENCER CHAPMAN(1907~1971)
(エッセイ)Angmagssalik Eskimoのカヤックを漕ぐ。転覆したときの操作法。黒図版5点。
163-167 Triumphal Entry: BERNARD FERGUSSON
(エッセイ)第二次世界大戦中,シリアのダマスカスであった戦いのあとに起こったできごと。
168-173 The Tree of Knowledge: F. D. OMMANNEY(Francis Downes Ommanney)
(エッセイ)オオミヤシ(Coco-de-mir)は,なぜインド洋のセイシェル島の谷にだけ育つのか。
174-183 The Pit: RONALD DUNCAN(1914~1982,作家)
(エッセイ)1930年代,ケンブリッジの学生時代に体験した炭鉱の生活。黒図版2点。
♦184 VICTORANA
184-192 A Queer Quarter of London: MICHAEL SADLEIR(1888~1957,小説家)
(エッセイ)ヴィクトリア期にファッションの先端地区として計画されたものの,実際はパッとしない地域になったノッティング・ヒルの北Ladbroke Grove周辺。「Queer」という言葉を使用。茶・黒2色図版2点。
(折り込みのカラー図版)The Early Days of the Iron Horse(蒸気機関車関連図版)
193-199 Prodgeriana: VIOLET MARKHAM(1872~1959,作家,social reformer)
(エッセイ)ヴィクトリア期に,もっともけんかっ早い女性と言われた「辻馬車御者の恐怖」Mrs Giacometti Prodgers(1830~1890)。青・黒2色図版1点。黒図版3点。
♦200 TYPICAL
200-203 Love: A Survey: KAYE and RONALD SEARLE
(詩・絵)RONALD SEARLEの絵にKAYE SEARLEの詩。青・黒2色図版4点。
♦204 TOPOGRAPHICAL
204-205 Round England with an Ear-Trumpet
(エッセイ)Festival of London記念。耳に心地よい地名・心地よくない地名選。Laurence Scarfeの青・黒2色図版3点。
♦206 EULOGISTICAL
206-209 England, I Love You: RUTH McKENNEY(1911~1972)
(エッセイ)2年間イギリス滞在したアメリカ人作家から英国人へのお別れのあいさつ。この記事の5年後,1955年11月18日,McKenneyの44歳の誕生日に彼女の夫Richard Brantenがロンドンで自殺。そのときからMcKenneyは筆を断っています。
♦210 THEATRICAL
210-214 Scenes That Have Never Been Written: VIRGINIA GRAHAM
(エッセイ)アンチクライマックスに至る芝居。Kassemoffの茶・黒2色図版4点。Matita
215 RURAL
215-221 GNL DLR: JOHN MOORE
(エッセイ)旅の古物商Mr. Higginsのお話。Robin Jacquesの黒図版3点。
222-229 Country Food: A Memory: ALISON UTTLEY
(エッセイ)英国の田舎料理の思い出。茶・黒2色図版1点,黒図版3点。
230-244 Small Farm: DILYS POWELL
(フォト)サセックスとケントの境界,ケント側にあるBalding氏が営むBower Farmの暮らし。Victor Mitzakisのモノクロ写真8点。
♦245 SEPULCHRAL
245-252 Under the Yew Tree's Shade: OLIVE COOK
(フォト・エッセイ)英国各地にある古い教会の墓石彫刻。モノクロ写真18点。
♦253 FLORAL
253-258 Flowers in the House: STEPHEN BONE(1904~1958,画家)
(エッセイ)家の中に花を飾ることの意味。茶図版4点。
♦259 RECREATIONAL
259-265 The Case for Morocco: JOHN RUSSELL
(エッセイ)ヨーロッパ人がモロッコを旅して体験すること。茶・黒2色図版1点,黒図版3点,茶図版6点。
266-270 A Corner of France: JOHN GINNETT
(エッセイ)フランスの中世からの市場街Chauvignyの暮らし。
♦271 ENDPAPERS
271-275 Rare Modern Stamps: DOUGLAS ARMSTRONG
(エッセイ)珍しい切手とその価値。黒図版15点。
276-282 An Elizabethan Writing Master: P. H. MUIR(Percy Horace Muir 1894~1979)
(エッセイ)エリザベス期のカリグラフィ。Peter Bales(1547~1610?)の書。速記の発明者のひとり。茶図版2点。
283-288 Autumn Night: ROBERT GIBBINGS(1889~1958,版画家,作家)
秋の夜,アイルランドの田舎の川で起こった出来事…。茶・黒2色図版1点。ロバート・ギビングスは,両大戦間期を代表する木版画家のひとり。ゴールデン・コッカレル・プレスを経営。川を主題にした木版挿画入りの本が何冊かあります。
▲寄贈メッセージ欄のある見返し。
▲ローレンス・ホイッスラーのガラス彫り。
水兵グッズを集めたページから。
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66. 1949年の『土曜日の本』(2013年2月11日)
●『土曜日の本』その9
1949年10月発行。有名人サインの収集家フレッド・ベイソンは『土曜日の本』読者の人気ものになってきていて,編集長に,あれは出来過ぎなので架空の存在ではないのかという問い合わせまでくるようになります。
1891年生まれ経済評論家ジョージ・シュワーツが,ヴィクトリア朝末期生まれ世代の特徴を「Drabness(くすみ)」ではないか,という世代論的エッセイを寄稿しています。19世紀世紀末生まれ世代の自らパッとしないという自覚は,『土曜日の本』の読者世代との関わりも含めて興味深いものがあります。ただこの世代は,19世紀大英帝国の遺産を食いつぶしながら,藝術的生活を指向したという面もありますので,見た目はくすんでいても,ヴィクトリア期の装飾過剰をまだ身にまとっている世代という印象があります。とはいえ,もっともらしい世代論で概括しても結局,話半分です。
第9号で取り上げられている話題は,人脈ぐらいしか取り柄のないロンドンについてのぼやき,劇評家の仕事の実際,「もっともみじめなやつ」,戦前のイタリア南部のプーリア回想,ウィンドウ・ディスプレイの世界,ベンヴェヌート・チェリーニの「黄金の塩入れ」,1750年~1950年のロンドンのハイ・ストリート,フレッド・ベイソンの自伝,有名作家への質問,エドワード・リアとジェイムズ・オーデュボンと鳥類,18世紀に起こったガラス瓶に入る男騒動,18世紀の詩華集,スタフォードシャーの陶人形トビイ・フィルポット,クラリヒュー(四行戯詩),19世紀オートクチュールの父チャールス・フレデリック・ワース,ナイチンゲールが飼っていたフクロウ,物理学者ボーア,サー・ルイス・マウントバッテン,中近東のペトラ遺跡,北アフリカのタンジール,海岸の漂着物の収集,ソールズベリーの春,バッキンガミシャーの野花,シャム猫,ファッションモデルの仕事,バーナード・ショウの村の生活,オグデン・ナッシュの詩とその詩への返歌,クリケット用のバッティングマシーンなど珍道具,アート・王室が主題の切手,ジェントルマンの消失など,今回も楽しく,とっ散らかっています。
■『The Saturday Book 9』の内容
EDITED BY LEONARD RUSSELL
THE Saturday Book
BEING THE NINTH ANNUAL ISSUE OF THIS CELEBRATED REPOSITORY OF CURIOSITIES AND LOOKING-GLASS OF PAST AND PRESENT
THE BOOK DESIGNED BY LAURENCE SCARFE
THE PUBLISHER ARE HUTCHINSON
21s. net
ダストラッパー絵: Philip Gough
口絵: Rowlandsonの『Saturday Night at Vauxhall Gardens』(1784)から
MADE AND PRINTED
AT THE MAYFLOWER PRESS
(OF PLYMOUTH) AT WATFORD
BY WILLIAM BRENDON & SON LTD
FOUR-COLOUR PLATES
ENGRAVED AND PRINTED BY
THE GROUT ENGRAVING COMPANY LTD
PUBLISHED OCTOBER 1949
『THE Saturday Book 9』の目次
003 title page
004-005 The Front Parlour: L. R.
冒頭に編集長レナード・ラッセルの写真。毎回フレッド・ベイソンの話は出来過ぎなので架空の存在ではないかという問い合わせ。
005-007 The Contents(目次)
両サイドに主要寄稿者エドウィン・スミス,オリーヴ・クック,ディリス・パウウェル,フレッド・ベイソン,ローレンス・スカーフらのポートレイト写真と今回の題材の写真。手もとにある本はフレッド・ベイスンが人に贈った本で,自分の写真の横に「This is me looking Thoughtful! I do at times! Fred Bason(思慮深げに見えるわたし。わたしも時には考えるんです。フレッド・ベイソン)」と書き込んでいます。
♦009 MURAL
009-016 Pictures on the Wall
(グラフィック)著名人所有の自慢の絵画作品。ケネス・クラークはルノアールの「Baigneuse Blonde」,レベッカ・ウェストはLE GROSの「Portrait of a Young Man」を披露。カラー図版。
♦017 SABBATICAL
017-021 Drabness Is All: GEORGE SCHWARTZ(George Leopold Schwartz 1891~1983,経済評論家)
(エッセイ)お金と物がいちばんという空気のなかで育った僕らヴィクトリア末期生まれ世代のDrabness(くすんだ黄褐色,単調さ,生気のなさ,さえなさ)。
022-027 Good-bye to London: RAYMOND MORTIMER(Charles Raymond Mortimer Bell 1895-1980,作家・編集者)
(エッセイ)レイモンド・モーティマーが,今のロンドンが他の国際都市とくらべてよいところは人脈ぐらいかとぼやきます。Kassemoffの特色青・黒2色図版1点。
028-034 The Dramtic Critic: His Job: HAROLD HOBSON(1904~92,1947~76年『Sunday Times』のドラマ評担当)
(エッセイ)劇評家の仕事の実際。Pete Harriganの特色青図版1点,特色赤灰図版1点,黒図版2点。
035-042 The Most Miserable of Men: DESMOND MacCARTHY(1878~1952,批評家)
(エッセイ)列車の席で出会った「男の中でもっともみじめなやつ」のお話。アーディゾーニ(Edward Ardizzone)の特色赤灰・黒2色イラスト1点。
043-048 A Year In Apulia: ELIZABETH NICHOLAS
(エッセイ)イタリア南部のプーリアで過ごした1年。戦争ですさんでいないことを願う。
♦049 COMMERCIAL (目次ではFINANCIAL)
049-072 The One in the Window: Olive Cook & Edwin Smith
(グラフィック)モノクロ・カラー図版とテキストで構成する,商店のウィンドウ・ディスプレイの世界。
♦073 AUTOBIOGRAPHICAL
073-080 The Gold Salt Cellar: Edwin Smith
(フォト・エッセイ)モノクロ写真とテキストで構成するベンヴェヌート・チェリーニ(Benvenuto Celline,1500~72)の「黄金の塩入れ」の細部。
♦081 ARCHITECTUAL
081- The High Street, 1750~1950: WALTER AND LEONORA ISON
(エッセイ)ロンドンのハイ・ストリート,1750年,1850年,1950年の街並みをモノクロ図版13点とテキストで紹介。
♦090 PERSONAL
090-107 The Bason Story: FRED BASON
(エッセイ)フレッド・ベイソンの自伝。床屋,予想屋,本屋,空襲警報監視員,市職員,サイン収集王,シガレット・カード収集家…。手もとの本には「Oh yes! Very remarkable indeed! Fred Bason」とフレッド・ベイソンの書き込みがあります。
108-126 Confessions
(アンケート・インタビュー)『Saturday Book』からの「現在の仕事以外ならどんなものに適正があると思うか?」「人生でいちばん怖かったことは何か?」「どの世紀・時代を心のホームと感じるか?」「人生があなたに教えたものは何か?」などの質問に答える9人の有名人。ELIZABETH BOWEN(1899~1973,小説家),IVOR BROWN(1891~1974,ジャーナリスト),BERNARD DARWIN(1876~1961,ゴルフ作家),STELLA GIBBONS(1902~1989,小説家),JOHN GIELGUD(1904~2000,俳優),HERMIONE GINGOLD(1897~1987,女優),COMPTON MACKENZIE(1883~1972,小説家),A. L. ROWSE(1903~1997,歴史家),G. B. STERN(Gladys Bronwyn Stern,1890~1973,小説家)。Kassemoffの特色黄・黒2色図版4点,特色灰・黒2色図版6点。
♦127 ORNITHOLOGICAL
127-128 Two Great Bird Artists: BRIAN READE
(エッセイ)ジョン・ジェイムズ・オーデュポンとエドワード・リアの鳥の絵について。特色灰・黒2色図版1点。
♦129 18th CENTURY
129-136 A Man in a Bottle: RONALD FULLER
(エッセイ)18世紀中ごろのロンドン,ガラス瓶に入る男騒動。特色赤・黒2色図版1点。特色赤2点。
137-143 A LITTLE GARLAND OF 18TH CENTURY LYRICS: Cupid Astray
(詩)18世紀の詩小品集。HENRY CAREY,ROBERT LLOYD,JOHN SMITH,FRANCIS FAWKES,PHILIP DORMER STANHOPEWILLIAM CONGREVE,GEORGE GRANVILLE,MARY MONK,ANONYMOUSほかの詩。LEONORA ISONの挿画特色赤5点。
144-151 The Surprising History of the Fillpot Family: JOHN HADFIELD(1907~1999)
(エッセイ)スタフォードシャーの陶人形Toby Fillpotの来歴。『The Saturday Book』の第2代編集長になる人の初寄稿です,Walter Woodingtonの特色赤・黒2色図版1点。特色灰・黒2色図版4点。
152-158 Some Eighteenth Century Worthies: NICOLAS BENTLEY
(戯詩)ニコラス・ベントリーの絵とクラリヒュー(四行戯詩)。特色灰・黒2色図版7点。
♦159 19th CENTURY
159-170 Mousieur Chiffon: or The Lad From Lincolnshire: DONALD MacANDREW
(エッセイ)パリの流行を支配した英国出身のファッションデザイナーCharles Frederick Worth(1826~1895)。オートクチュールの父的存在。Ronald Searleの黒図版1点。
171-179 Florence Nightingale's Pet Owl: CECIL WOODHAM-SMITH(1896~1977,歴史家)
(エッセイ)ナイチンゲールが飼っていたフクロウのお話。Kassemoffの特色赤図版2点。黒図版2点。
♦180 20th CENTURY
180-184 The Wisdom of Niels Bohr: C. P. SNOW
(エッセイ)Niels Bohr(1885~1962,物理学者)のポルトレ。Walter Woodingtonの特色赤・黒2色図版1点。
185-190 Mountbatten of Burma: CYRIL RAY
(エッセイ)サー・ルイス・マウントバッテン,1st Earl Mountbatten of Burma(1900~1979)のポルトレ。
♦191 MAGICAL
191-202 A Day In Petra: JULIAN HUXLEY
(エッセイ)中近東のペトラ遺跡で過ごした一日。折り込みカラー写真4点。Laurence Scarfeの特色赤・黒2色図版1点。
203-208 Remembering Tangier: PHILIP JORDAN
(エッセイ)北アフリカ,タンジールの思い出。
♦209 REGIONAL
209-215 The Confessions of a Beachcomber: RONALD DUNCAN (1914~1982,作家)
(エッセイ)北デヴォンの海辺に住み,海岸の漂着物を集めて7年。Anthony Gilbertの特色青・黒2色図版1点。
216-232 Downland Spring: DILYS POWELL
(フォト・エッセイ)ソールズベリーの春。羊のいる風景。Victor Mitzakisのモノクロ写真8点
233-240 Flowers in Buckinghamshire: ALISON UTTLEY
(エッセイ)バッキンガミシャーの野花。C. F. Tunnicliffeの黒図版4点。
♦241 ANIMAL
241-248 Growing Up: SIAMESE STUDIES: Dunscombe Honiball
(フォト)モノクロ写真で構成するシャム猫の成長。
♦249 ORNAMENTAL
249-256 The Face on the Cover: Lorraine Timewell
(フォト)Dunscombe HoniballとLorraine Timewellのモノクロ写真とテキストで構成するモデルの仕事。
♦257 ENDPAPERS
257-263 George Bernard Shaw in the Village: S.WINSTEN(1893~1991,ショウについての著作)
(エッセイ)バーナード・ショウのAyot Saint Lawrence村での暮らし。Walter Woodingtonの特色赤図版1点。
263~266 England Expects - : OGDEN NASH
(詩)アメリカからオグデン・ナッシュの詩。Ronald Searleの特色赤・黒2色図版1点。
267-269 A Reply: VIRGINIA GRAHAM
(詩)ナッシュの詩に応える詩。Ronald Searleの特色赤・黒2色図版1点。
270-274 A Short Trot with a Cultured Mind: PATRICK CAMPBELL(1913~1980)
(エッセイ)手違いで文芸編集担当をしたときの話。
275-280 Cricket Gadgets: JOHN ARLOTT(1914~1991,作家。BBCのクリケット解説)
(エッセイ)クリケット専用のバッティングマシーンなど珍しい発明品など,クリケット関連の道具や設備について。図版6点
281-285 STAMPS tell the STORY: Douglas Armstrong
(エッセイ)モノクロ写真とテキストで構成。切手が語る物語。アート,世界のできごと,王室。
286-288 What it Felt Like to be a Gentleman: WILLETT CUNNINGTON(Cecil Willett,1878~1961,ファッション研究)
(エッセイ)「紳士」が消えた今,「紳士」であることはどういうふうな感じであったのか。
▲見返し紙のパターン。手もとの本は,寄稿者のフレッド・ベイソンが知り合いに贈った本で書き込みがあります。献辞スペースに個人名が書かれていますので,その部分の写真掲載は控えます。
▲ウィンドウ・ディスプレイのページから。絵はがきとイスラム教の祈祷用の敷物。『土曜日の本』に掲載される図版では,意識的にか無意識的にか,1930年代後半ぐらいから使われはじめた美術用語「キッチュ(Kitsch)」に該当するようなものが積極的に取り上げられていきます。『土曜日の本』自体が「キッチュ(Kitsch)」を体現していたのかもしれません。
後に第2代編集長になり,1975年終刊まで『土曜日の本』を編集することなるJOHN HADFIELDが,初めて寄稿しています。
♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦
65. 1948年の『土曜日の本』(2013年2月10日)
●『土曜日の本』その8
1948年11月発行。手もちの本のカヴァー(ダストラッパー)の状態はよくありませんが,このダストラッパーには光沢コーティングがほどこされています。時代は先になりますが,1970年代の英国盤レコードのジャケットにほどこされている光沢コーティングは,日本盤や米国盤と違って,独特の魅力を持っていました。
第8号の編者まえがきでは,ルイス・キャロルの少女の肖像写真を取り上げています。全体を,「Arts and Crafts」,「Portraits and Self-Portraits」,「Town and Country」,「Stories」,「Varia」の5つに分類して,「Arts and Crafts」では,オリーヴ・クックとエドウィン・スミスの収集についてのグラフィック構成,イギリスの刺繍,イギリスの家具,結成から百年のラファエル前派などを取り上げています。
「Portraits and Self-Portraits」では,古書店主フレッド・ベイソンの日記抄,天才的数学者G. H. ハーディ追悼とのそのクリケットについての論議,ノーマン・バーケット判事のケンブリッジ時代,ヴィクトリア期の高級娼婦,自由党のグラッドストーンの妻,ヴィクトリア女王の従僕,シュバイツアー博士の30年ぶりのヨーロッパ帰還,18世紀末に書かれた古書の献辞などを取り上げています。
「Town and Country」では,詩人ロバート・グレイヴスが語るマジョルカ島のデヤで過ごす休日,商家の名刺に見る古きロンドンの面影,テームズ川に注ぐ小さなイヴンロード川周辺の田園,スコットランドのスペイ川,イギリスの羊など。
「Stories」では,ALISON UTTLEY,ALAN PRYCE-JONES,R. C. HUTCHINSON,SEAN O'FAOLAINの小説作品。
「Varia」では,エドワード期の大きなディナーテーブル,イギリス白人の歴史的分類,アメリカの跳び込み名人スコットがウォータールー橋から飛び込み失敗した話,古地図に見るイギリス,猫について,VIRGINIA GRAHAMの戯詩,ライミング・スラングなどを取り上げています。
■『The Saturday Book 8』の内容
The Saturday Book
being the eighth annual issue of this celebrated cabinet of curiosities and looking-glass of past and present
edited by LEONARD RUSSELL
the book designed by LAURENCE SCARFE
HUTCHINSON are the publisher
21s. net
ダストラッパー絵: BIRO(Val Biro,1921~)
口絵:1837年ヴィクトリア女王即位記念のエングレイヴィング
This book, published in November, 1948, was made and printed at the Mayflower Press (late of Plymouth) at Watford, by William Brendon & Son Ltd. The four-colour plates were engraved and printed by the Grout Engraving Co., Ltd.
Drawings by Hugh Casson, Pearl Falconer, Elisabeth Friedlander, Bernard Griffin, Peter Hoffer, Albert Houthuesen, Kassemoff, Laurence Scarfe, Ronald Searle. Photographs specially taken by Dunscombe Honiball, Victor Mitzakis, Lorraine Timewell, Edwin Smith.
『The Saturday Book 8』の目次
003 title page
004 contents(目次)
目次では全体を,「Arts and Crafts」,「Portraits and Self-Portraits」,「Town and Country」,「Stories」,「Varia」の5つに分類して,全体のページ順でなく,部分のベージ順で索引のように配列。
005-016 BY WAY OF A PREFACE Sweet Saturday Nights: L. R.
ルイス・キャロル撮影の少女肖像写真を中心にした前書き。
♦017 PERENNIAL
017-048 The Art of Acquisition: OLIVE COOK & EDWIN SMITH
(グラフィック)日常家具から小物まで収集のアート。カラーとモノクロ図版とテキストで構成。
♦049 PREFERENTIAL
049-064 Basoniana: being extracts from the Journal of FRED BASON
(日記)古書店主フレッド・ベイソンの日記から。図版3点。見出しに特色茶赤。
065-073 The Mathematician on Cricket: C. P. SNOW (1905~1980,科学者,小説家)
(エッセイ)天才的数学者G. H. ハーディ(G. H. HARDY,1877~1947)追悼。ハーディの見るクリケット。特色黄と黒の2色図版2点。
074-080 Rambles Round an Edwardian Dinner-Table: SHEILA KAYE-SMITH (1887~1956,作家)
(エッセイ)エドワード期の大きなディナーテーブル。当時のディナーコースの思い出。黒図版1点・特色黄図版1点。
081-089 The Earliest Englishmen: ALAN HOUGHTON BRODRICK
(エッセイ)イギリス白人の歴史的分類。その風貌の話。MEDITERRANEANS(地中海人種),NORDICS(北方人種),ALPINES(アルプス人種),DINARICS(ディナール人種)の4タイプ。特色マゼンダ図版12点。
♦090 TOPOGRAPHICAL
090-094 The Place for a Holiday: ROBERT GRAVES (1895~1985,詩人,小説家)
(エッセイ)スペイン,マジョルカ島のデヤで暮らす詩人ロバート・グレイヴスが語るデヤの休日。ここは1960年代はヒッピーの,1990年代はレイヴ・パーティーの聖地になっていきます。
♦095 FATAL
095-096 Don't Forget the Diver
(グラフィック)アメリカの跳び込み男ウィリアム・スコット(Scott the Diver)がウォータールー橋からの飛び込みに失敗したことを伝える1840年当時の記事。特色マゼンダ・黒2色図版2点。
♦097 TECHNICAL
097-112 The Indestructible Art: LORRAINE TIMEWELL
(グラフィック)イギリスの刺繍について。モノクロ写真とテキスト。
113-120 English Furniture: an Outline: RALPH EDWARDS (1894~1977,家具史)
(エッセイ)イギリスの家具あれこれ。イラスト図版13点。
121- Souvenirs of Old London: RUARI McLEAN(1917~2006,タイポグラファー)
(エッセイ)商家の名刺 tradesmen's cards に見る古きロンドンの面影。特色黄と黒の2色図版1点。黒図版4点。
♦127 CENTENNIAL
127-128 The Pre-Raphaelites: OLIVE COOK
(グラフィック)1948年は,ラファエル前派結成から百年。折り込みカラー図版3点。
♦129 AUTOBIOGRAPHICAL
129-133 A Turning-Point in My Life: Sir NORMAN BIRKETT (1883~1962,弁護士,ニュルンベルグ裁判の判事)
(エッセイ)ノーマン・バーケット判事のケンブリッジ時代に迎えたターニング・ポイント。
134-141 A Turning-Point in My Life: C. E. M. JOAD (Cyril Edwin Mitchinson Joad,1891~1953,哲学者,ブレイン・トラストのメンバー)
(エッセイ)パシフィズム,宗教,女性。有名になってしまったこと。
142-146 A Turning-Point in My Life: BERTRAND RUSSELL (1872~1970,哲学者)
(エッセイ)哲学者バートランド・ラッセルが語る自らのターニング・ポイント。経済学か哲学か進路で悩んでいたとき,1895年夏ケンブリッジでフェローシップを得たこと。特色青・黒2色図版1点。
♦147 MORAL AND IMMORAL
147-159 Skittles: Or Fair but Frail: DONALD MacANDREW
(エッセイ)Skittlesはヴィクトリア期の高級娼婦Catherine Walters(1839~1920)のニックネーム。Wilfrid Scawen Blunt(1840~1922,詩人)のミューズ。特色黄・黒2色図版3点。
160-165 Wife to William: C. WILLETT CUNNINGTON(Cecil Willett,1878~1961,ファッション研究)
(エッセイ)Catherine Glynne (1812~1900)は,自由党のWilliam Ewart Gladstone (1809~1898)と結婚,59年連れ添いました。黒図版1点。
166-173 Good Brown: D.B.WYNDHAM LEWIS (1891~1969,作家)
(エッセイ)ヴィクトリア女王のスコットランド人従僕John Brown(1826~1883)について。
174-182 The Lost Leader: KENNETH WALKER
(エッセイ)アルザスのアルベルト・シュバイツアー博士(Albert Schweitzer 1875~1965)。1948年にヨーロッバに約30年ぶりに帰還。特色マゼンダ図版1点。
♦183 CARTOGRAPHICAL
183-189 News out of England: EDWARD LYNAM
(エッセイ)各時代の古地図に見るイギリス。特色茶図版4点,黒図版2点。
♦190 FLUVIAL
190-206 River of the South: the Evenlode: DILYS POWELL
(フォト・エッセイ)オックスフォードの西,テームズ川に注ぐ小さな川「the Evenlode」周辺の田園。モノクロ写真8点。
207-213 River of the North: The Spey: ELIZABETH NICHOLAS
(エッセイ)スコットランドの川「The Spey」あれこれ。黒図版1点。
♦214 ANIMAL
214-216 Wool and Mutton: J. F. H. THOMAS
(エッセイ)イギリスの羊あれこれ。黒図版1点。特色緑・黒2色図版10点。
217-224 Purrs and Paws: EDWIN SMITH
(フォト・エッセイ)写真とテキストで構成する猫あれこれ。
225-232 Haute Ecole and the Great Days of the Circus: ANTONY HIPPISLEY COXE (1912~1988)
(エッセイ)19世紀のサーカスと馬。特色赤・黒2色図版1点。特色マゼンダ図版2点,黒図版3点。
♦233 NONSENSICAL
233-235 Olivia: or A Lesson in Geography: VIRGINIA GRAHAM (1912~1998,ラジオ・TVパーソナリティ)
(戯詩)オリヴィア嬢が結婚に至るまでの戯詩。特色マゼンダ図版3点。
♦236 FICTIONAL
236-245 The Spring: ALISON UTTLEY (1884~1976,作家。『Little Grey Rabbit』『Sam Pig』)
(小説)失われた泉を見つけるお話。祖父と孫娘。特色マゼンダ図版1枚。特色青・黒2色図版1点。
246-252 Samson in Gaza: ALAN PRYCE-JONES (1908~2000)
(小説)7歳の少女のとき以来久しぶりに訪れたヨークのお屋敷で見たものは…。特色青・黒2色図版1点。
253-264 Crossroads: R. C. HUTCHINSON (Ray Coryton Hutchinson 1907~1975,小説家)
(小説)スイスのQuatre-Cantons湖のホテルで飛行機を待ちながら…。
265-273 Sir Francis Remembers: SEAN O'FAOLAIN (1900~1991,アイルランドの作家)
(小説)ダブリンからコークへ向かう旅の途中同席したSir Francisの話。
♦274 ENDPAPER
274-280 Handsome Jack: CAROLA OMAN
(エッセイ)18世紀末に書かれた古書の献辞から繰り広げられる歴史秘話。特色赤茶図版1点。
281-288 Why Rhyming Slang?: JAMES CURTIS
(エッセイ)ダジャレに由来する俗語ライミング・スラングあれこれ。特色赤茶図版15点。
▲見返し紙のパターン。この号から見返しに献辞を書き込めるスペースが設けられ,プレゼント向きの本という性格を強めています。手持ちの本には,寄稿者の1人フレッド・ベイソンの書き込みがあって,そこに個人名が書かれていますので,その部分の写真掲載は控えます。
▲手元にある本は,前回の第7号に続いて,フレッド・ベイソンが,ロンドンを去った友人家族に贈った本のようです。見返しやフレッド・ベイソンの掲載ページに書き込みがあります。その「Basoniana」のページには「This is my table at teatime - and at it there will always Be a welcome for you Loveble people. I wish you all well in your new venture and hope we meet again, Till then God Be with you all. Fred Bason(これはわたしのティータイムのテーブル―お茶の時間にあなたがた愛すべき方々はいつでも大歓迎です。新しい仕事がうまくいくことを願っています。またいつかお会いしましょう。そのときまであなたがたに神のご加護がありますように。フレッド・ベイソン)」とあります。
照国神社の初市をのぞいた帰り道,西郷さんの銅像の前を通ったら,いつもは鶴丸城のお濠にいるアオサギが,西郷さんの上で休んでいました。
♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦ ♦♦♦
64. 1947年の『土曜日の本』(2013年2月9日)
●『土曜日の本』その7
1947年11月発行。タイトルページで,自らを「CABINET OF CURIOSITIES(珍奇骨董の陳列棚)」であり「Museum of Entertainment(娯楽の博物館)」であると,香具師の口上的に名乗りをあげています。
1947年6月に亡くなった劇評家ジェイムズ・アゲート(James Agate,1877~1947)のテーブルトークが収録されて ,故人を偲んでいます。
古書店主フレッド・ベイソンがサインを収集してきた人々の人名録,ウォルター・デ・ラ・メアの詩,ドレス作りの工程,雲の写真,農家の生活,キプロス・ラップランド・フランス南部それぞれの地域での休日,英国陶器,ロンドンのパブ,ロンドンのアパート生活,エドワード期の風俗写真,1817年のメアリ・アッシュフォード殺人事件,清教徒革命での王党派の拠点ヒルスデン,1848年の革命,英国の川港,俳優の筆跡,アメリカ南部のブルーズ歌手レッドベリー,スコットランドの鹿猟,イギリス人男性の涙,フランス人男性のファッションなど,今回も題材は幅広く楽しい読み物になっています。
■『The Saturday Book 7』の内容
The Saturday Book
being the Seventh Annual Issue of this CELEBRATED CABINET OF CURIOSITIES & Museum of Entertainment
edited by Leonard Russell
The WHOLE COPIOUSLY ILLUSTRATED and forming an Indispensable Companion for Gentlemen & Ladies
The Book Designed by Laurence Scarfe
HUTCHINSON
21s.net
ダストラッパー絵: BIRO
This book, published in November, 1947, was made and printed at the Mayflower Press (of Plymouth) at St. Albans, by William Brendon & Son Ltd. The four-colour plates were engraved and printed by the Grout Engraving Co., Ltd.
Illustrations by Philip Gough, Eric King, John Nash, Laurence Scarfe, Ronald Searle, Bernard Venables.
『The Saturday Book 7』の目次
002 Contents
003 title page
004 Editor's Note: L. R.
♦005 VISUAL
005-024 ART ALBUM PART ONE
(グラフィック)アート作品の写真帖。
006-008 THE ARTIST AT WORK 作業中の芸術家。
009-011 WOMEN'S FACES 作品中の女性の顔。
012 TO SEA 海へ。
013-015 JUVENILIA 作品中の若さ。
016 SMILES 作品中の笑顔。
017-019 THE LITTLE DOGS AND ALL 作品中の犬と猫。
020-022 CHILDREN 作品中の子ども。
023 LOVE 作品中の「愛」。
024 ATTITUDES 姿勢。
024-032 ART ALBUM PART TWO Miniatures: OLIVE COOK
(グラフィック)円形・楕円形の細密画あれこれ。カラー図版。
♦033 PERSONAL
033-048 My Who's Who: FRED BASON
(エッセイ)サイン収集家としてのフレッド・ベイソンが知り合った人名録。DR ALEXANDER ALEKHINE, SIR JAMES BARRIE, JOE BECKETT, ARNOLD BENNETT, MADELEINE CARROLL, WINSTON CHURCHILL, GEORGE FORMBY, JACK HOBBS, LORD HEWART, DEAN INGE, W.W.JACOBS, ADMIRAL OF THE FLEET LORD JELLICOE, RUDYARD KIPLING, SIR HARRY LAUDER, RAMSAY MACDONALD, W. SOMERSET MAUGHAM, CHARLES MORGAN, NONI, BARONESS ORCZY, PADEREWSKI, JAMES MASON, J. B. PRIESTLEY, SIR A. QUILLER-COUCH, BERNARD SHAW, PAUL ROBESON, A. GORDON SELFRIDGE, DAME SYBIL THORNDIKE, SIR RABINDRANATH TAGORE, TETRAZZINI, IRENE VANBRUCH, EDGAR WALLACE, SIR HUGH WALPOLE。サインを書いてもらい損ねた人も含めて。特色マゼンダ図版7点。
♦049 CONVERSATIONAL
049-061 James Agate's Table-Talk
(エッセイ)1947年6月に亡くなった劇評家James Agate(1877~1947)のディナーでのトーク。1947年2月7日にLEONARD RUSSELL, DILYS POWELL, ARTHUR J. LEE(速記)ら『土曜日の本』の編集者とともに会食時の談話。「食」について記事が少ない『土曜日の本』ですが,ここではワインについての若干の会話があります。特色マゼンダ図版3点。
♦062 LYRICAL
062-063 The Poems: Walter de la Mare(1873~1956,詩人・小説家)
(詩)ウォルター・デ・ラ・メアの詩2編「The Kiss」「The Dunce」。特色マゼンダ図版2点。
064 CELESTICAL
064-070 CLOUDSCAPES and their meaning: C. J. P. Cave
(フォト・エッセイ)雲の形の意味。モノクロ写真6点とテキスト。特色マゼンダ図版1点。
♦071 ORNAMENTAL
071-080 The Story of a Dress: LORRAINE TIMEWELL
(フォト・エッセイ)ドレスが出来上がるまで。モノクロ写真とテキスト。
081 VOCATIONAL
081-090 The Farmer's Job: ADRIAN BELL(1901~1980,ジャーナリスト・農家),wood engravings by Eric King (1911~1987)
(エッセイ)現代の農家の仕事。特色オーカー・黒2色図版3点。
♦091 RECREATIONAL
091-098 Cyprus Holiday: RAYMOND MORTIMER(Charles Raymond Mortimer Bell,1895~1980,作家・編集者)
(エッセイ)キプロスで過ごす休日。特色オーカー図版3点。
099-105 Lapland Holiday: F. SPENCER CHAPMAN (Freddie Spencer Chapman,1907~1971,探検家・軍人。第二次大戦での東南アジアマラヤ戦線での活動)
(エッセイ)ラップランドで過ごす休日。特色オーカー・黒2色図版1点。モノクロ地図1点。
106-112 South of France Holiday: Dilys Powell
(エッセイ)フランス南部で過ごす休日。
♦113 ECLECTICAL
113- Fair and Frail: EDWIN SMITH
(グラフィック)カラー写真とモノクロ写真で紹介する英国陶器。陶人形。絵付け陶器。
♦129 CAPITAL
129-135 London Pubs: NATHANIEL GUBBINS(1893~1976,コラムニスト),drawings by Laurence Scarfe
(エッセイ)ロンドンのパブについて。特色茶図版3点。
136-146 They Lived in Albany: CYRIL RAY,drawings by Philip Gough(1908~1986?)
(エッセイ)独身者あるいは独身者きどりの住む,ピカデリーにあるアパート「アルバニー」について。特色茶図版6点。
147-154 LONDON ASPECTS: Eight Drawings by Francis Gower
(グラフィック)Francis Gowerによる8点のロンドン風景スケッチ(特色茶)。
♦155 FICTIONAL
155-169 Exhibit "A": R. C. HUTCHINSON(Ray Coryton Hutchinson,1907~1975,小説家) drawings by Ronald Searle (1920~ )
(小説)イランでの軍隊生活。特色茶図版1点。特色青図版2点。特色青・黒2色図版1点。
170-184 The Major of Hussars: H. E. BATES
(小説)夏,スイスの湖のほとりにあるホテルに滞在中のできごと。特色青・黒2色図版2点。特色青図版1点。
185- The Red Doe: RUMER GODDEN(Margaret Rumer Godden,1907~1998,作家)
(小説)ヒマラヤ山中に住むイブラヒムと赤い牝鹿のお話。特色青・黒2色図版1点。特色青図版1点。
♦193 PICTORIAL
193-208 EDWARDIAN album
(グラフィック)エドワード7世在位の1901年から1910年までのエドワード期の画像あれこれ。
194-195 Votes for Women 女性参政権運動。
196 Lords and Common 1909年のロイド・ジョージの「People's Budget(人民予算)」が貴族院によって否決されたことを伝える新聞各紙の見出しで,各紙の党派性を示しています。
197-199 As they were 当時の人物ポートレイト。
200-202 The Last of Victorians 去りゆく19世紀ヴィクトリア期に活躍した人々。
203-207 Portents 次の時代の前触れ。飛行機・自動車・電話。
208 The End of an Era エドワード期の終わり。
♦209 HOMICIDAL
209-216 Unvisited Shrines: BERNARD DARWIN
(エッセイ)1817年のメアリ・アッシュフォード殺人事件。特色オーカー・黒2色図版1点。黒図版1点。
♦217 HISTORICAL
217-231 Hillesden: A. L. ROWSE(Alfred Leslie Rowse,1903~1997,歴史家)
(エッセイ)清教徒革命のイングランド内戦で王党派拠点のひとつバッキンガムシャーのHillesdenについて。
232-237 1848: The Year of Revolution: ROHAN BUTLER (1917~1996,歴史家)
(エッセイ)1848年の革命について。
♦238 TOPOGRAPHICAL
238-249 A Portrait of a Port: ROBERT HARLING(1910~2008,タイポフラファー,編集者),drawings by John Nash (1893~1977)
(エッセイ)英国の川の港について。画家ジョン・ナッシュは,画家ポール・ナッシュの弟。モノクロ図版5点。
♦250 CALLIGRAPHICAL
250-259 Notes on Writing: ARCHIE HARRADINE (1898~1974,俳優)
(エッセイ)演じる者のカリグラフィーについての考察。
♦259 ENDPAPERS
259-262 Men's Tears: C. WILLETT CUNNINGTON(Cecil Willett,1878~1961,ファッション研究)
(エッセイ)公衆の面前で泣くことを許されず。泣くことをためらってきたイギリス男性に涙のリバイバル。特色マゼンダ・黒2色1点。
263-267 Frenchmen's Fashion: HONOR TRACY(Lilbush Wingfield,1913~1989,作家)
(エッセイ)フランス人男性のファッションについて。
268-272 Let the English Alone - They Bite: PATRICK CAMPBELL(1913~1980,ジャーナリスト,ユーモリスト)
(エッセイ)英国とアイルランドの関係。
273-278 Deer Stalker: F. FRASER DARLING(1903~79,スコットランドに関わりの深い生態学者・作家)
(エッセイ)スコットランドの鹿猟について。
279-285 Lead Belly, Life and Letters: Iain Lang
(エッセイ)アメリカ南部のブルーズ歌手レッドベリーについて。
286-288 The Smith Ballad: VIRGINIA GRAHAM(1912~1998,ラジオ・TVパーソナリティ)
(エッセイ)Sir Thomas Smith 82歳のバラッド。Ronald Searleの特色オーカー図版。
▲手元にある本は,寄稿者の1人フレッド・ベイソンが,ロンドンを去る友人家族に贈った本のようです。見返しに「This edition contains my Who's Who. Although you are not in it I do hope that it will give you pleasure. Fred Bason(この本にはわたしの「Who's Who(人名録)」が収録されています。そのなかにあなたの名前はないのですが,愉しんでもらえたらなと思っています。フレッド・ベイソン)」とあります。
網版を使わないベタの2色刷は,魅力的です。
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63. 1946年の『土曜日の本』(2013年2月8日)
●『土曜日の本』その6
1946年10月刊行。第6号です。エコノミー・スタンダード仕様ではなくなりましたが,まだ戦後間もない時期の物資不足を感じます。ダストラッパーに「90ページはカラーで(with ninety pages in colour)」とありますが, カラーページのうち,フルカラーは約3分の1で,他は2色刷りです。
画家スタンレー・スペンサーと作家グレアム・グリーンの寄稿は目立ちます。1850~1914年の写真図版による風俗図鑑,貴婦人の消失,コラムニスト・ラジオ制作者・ピアニストらの仕事の実際,没後50周年のウィリアム・モリス,ジョン・エヴァレット・ミレイ,コヴェントリイ・パトモアらの1946年時点での評価,エドウィン・スミスとオリーヴ・クックのフォトエッセイ,19世紀末の探偵セクストン・ブレイク,俳優ローレンス・オリヴィエのプロフィール,ヨット,卓球,教会の鐘撞き,製陶業の現場,劇作家シェイクスピア,ジョンソン博士,高級娼婦ハリエット・ウィルソン,発明家エデ*ソンらの贋日記,手書きの筆跡など,雑多な話題を取り上げて,『土曜日の本』の,ノスタルジックで雑食的な性格を固めはじめて,1900年前後頃に生まれた世代が昔を懐かしむ雑誌という色が出てきます。たぶんその世代が読者の中心になっていたのでしょう。
■第6号『The Saturday Book 6TH YEAR』の内容
The Saturday Book 6TH YEAR
edited by Leonard Russell
with illustrations by Laurence Scarfe
with ninety pages in colour
HUTCHINSON
21s net
This book, published in October, 1946, was made and printed at the Mayflower Press (of Plymouth) at St. Albans, by William Brendon & Son Ltd. The four-colour plates were engraved and printed by the Grout Engraving Co., Ltd.
ダストラッパー図案:Laurence Scarfe
『The Saturday Book 6TH YEAR』の目次
002 Contents(目次)
003 title page
004 Editor's Note: L. R.
♦005 Social
005-064 The Social Register 1850~1914: Leonard Russell
(グラフィック)1850年から1914年まで,ヴィクトリア期とエドワード期の社会相のパノラマ。当時の写真による。
006-012 Rank 上流層。
013-025 Other Rank 中・下流層。
026-032 Marvels 驚きの見せ物・奇形。
033-043 Mechanical Marvels 自転車・自動車・気球・飛行機。
044-064 Adam & Eve ヴィクトリア期とエドワード期の男女ファッション。帽子・クリノリン。
♦065 TRANSITIONAL
065-071 Footnotes on the Last Fifty Years: SIEGFRIED SASSOON(1886~1967,詩人)
(エッセイ)1896年から1946年の過去50年のサッスーン流注釈。レミントン・タイプライターから原爆へ。挿画1点。
072-077 Death of the Gentlewoman: C. WILLETT CUNNINGTON(Cecil Willett,1878~1961,ファッション研究)
(エッセイ)ヴィクトリア期の特徴のひとつ「貴婦人」の性格とその消失について。挿画1点。
♦078 PERSONAL
078-084 The Serious Business of Being Funny: NATHANIEL GUBBINS(1893~1976,コラムニスト)
(エッセイ)ユーモア・コラム『Sitting On The Fence』を16年書き続けてきて。
085-093 Making Radio: STEPHEN POTTER(1900~1969,作家)
(エッセイ)BBCのwriter-producerが語るラジオ番組制作の現場。ラジオの時代です。
094-096 Concert Pianist: EILEEN JOYCE(1912~1991,ピアニスト)
(エッセイ)コンサート・ピアニストの練習や現場の実際。録音は「the real thing(ほんもの)」ではない。
♦097 ECLECTICAL
097-112 Rare and COMMON: EDWIN SMITH
(フォト・エッセイ)自然とアートの珍しいもの・ふつうにあるもの。カラー・モノクロ図版とテキスト。
♦113 CRITICAL
113-121 After Fifty Years William Morris 1834~1896: HOLBROOK JACKSON(1874~1948,評論家,書痴)
(エッセイ)ウィリアム・モリス没後50年,1946年のモリス評価。『世紀末イギリスの芸術と思想(The Eighteen Nineties: A Review of Art and Ideas at the Close of the Nineteenth Century)』(1914)や『書癡の解剖学(Anatomy of Bibliomania )』(1930)で知られる著作家ホルブルック・ジャクソン晩年のテキストです。
122-127 After Fifty Years Sir John Millais 1829~1896: JOHN RUSSELL
(エッセイ)画家ジョン・エヴァレット・ミレイ没後50年,1946年のミレイ評価。
128-134 After Fifty Years Coventry Patmore 1823~1896: EDMUND BLUNDEN(1896~1974,詩人。1924~27年に日本滞在)
(エッセイ)詩人・批評家コヴェントリイ・パトモア没後50年,1946年のパトモア評価。
♦135 AUTOBIOGRAPHICAL
135-138 The Revolver in the Corner Cupboard: GRAHAM GREENE(1904~1991,作家)
(エッセイ)グレアム・グリーンの寄稿。「私」が家の棚で銃を見つけた日の回想。挿画1点。後に『A Sort of Life(ある種の人生 自伝)』(1971)に収録。
♦139 SUPERNATURAL
139-144 Second Sight: ELIZABETH NICHOLAS
(エッセイ)スコットランド北西の島で見た不思議なものは…。
♦145 VISUAL
145-152 Portrait of the Painter: OLIVE COOK
(フォト・エッセイ)オリーヴ・クック構成のカラー図版。8人の画家の自画像。ギルバートとスタンレーのスペンサー兄弟の自画像も含まれています。
153- Painting the Horse: OLIVE COOK
(フォト・エッセイ)オリーヴ・クック構成のカラー図版。馬が主題の8点の絵。
♦161 BIOGRAPHICAL
161-176 The Sexton Blake File: Characteristics, methods & Manners of a great British Detective: REGINALD COX
(エッセイ)1893年に登場した英語圏で最も有名な探偵のひとりSexton Blakeについて。図版4点。
♦177 THEATRICAL
177-192 Laurence Olivier a brief chronicle: DILYS POWELL
(フォト・エッセイ)モノクロ図版とテキストで構成するローレンス・オリヴィエ小伝。
♦193 FICTIONAL
193-203 The Celestial Commuter: RITCHIE CALDER(1906~1982,作家)
(小説)時空と四次元を移動する者たちに起こったことは…・
204-210 The Golliwog A Story of the Hotel César: JOHN FULLER
(小説)パリのセザール・ホテルのフロア・ウエイター,ルイ・キャロンの物語。
211-220 Cornish Interlude: BERNARD MILES(1907~1991,俳優,作家)
(小説)映画のロケ先で出会ったカップル。彼らが話す第一次大戦の話は…。
♦221 RECREATIONAL
221-227 Sailing: RICHARD HUGHES(1900~1976,作家)
(エッセイ)作家リチャード・ヒューズが語るヨットの愉しみ。図版1点。
228-234 The Ringers: RUARI McLEAN(1917~2006,タイポグラファー)with drawings by Theo Janku
(エッセイ)Bray-on-Thamesの聖ミカエル教会の鐘つきFred Russellのお話。イラスト3点。
235-240 Table Tennis: JULIAN SYMONS
(エッセイ)小説家ジュリアン・シモンズが語る卓球の愉しみ。
♦241 INDUTRIAL
241-248 The POTTERIES: DOUGLAS GLASS
(グラフィック)製陶業の現場。モノクロ写真8点。
♦249 DEVOTIONAL
249-256 Domestic Scenes: STANLEY SPENCER
(スケッチ・エッセイ)スタンレー・スペンサーによる,日常的な主題のスケッチ7点とテキスト。スペンサーが一般誌に寄稿するのはとても珍しいことです。
♦257 SATIRICAL
257-259 MORE LOST DAIRIES with acknowledgements to Maurice Baring The Lost Diary of Shakespeare: A. A. Milne
(フィクション)A. A. ミルンによる贋作シェークスピア日記。1594年4月23日から8月2日
260-263 The Lost Diary of Dr. Johnson: DANIEL GEORGE
(フィクション)贋作ジョンソン博士日記。
264-267 The Lost Diary of Harriette Wilson: ROSE MACAULAY(1881~1958,小説家)
(フィクション)ローズ・マコーレーによるハリエット・ウィルソン(1786~1845,高級娼婦)の贋日記。1828年4月1日から4月10日。
268-271 The Lost Diary of Th*m*s A. Ed*s*n: Francis Iles
(フィクション)フランシス・アイルズによる贋作ト*マス・エデ*ソン日記。1871年2月21日から5月12日。
♦272 CALLIGRAPHICAL
272- The Art Of Writing: DESMOND FLOWER(1905~1995,10th Viscount Ashbrook)
(エッセイ)筆記体の過去・現在。エリザベス1世の筆跡ほか12点。
♦280 ENDPAPERS
280-284 Walt Whitman: C. M. BOWRA(Cecil Maurice Bowra 1898~1971,古典学者)
(エッセイ)ホイットマン小論。
285-288 On Being in The Saturday Book: FRED BASON
(エッセイ)『土曜日の本』に自分の原稿が載ること,その影響あれこれをユーモラスに語る,独身の古書籍商フレッド・ベイソン。
▲見返しには,ドガのバレエのデッサンが使われています。2~5号の見返しは無地でした。編集部はバレエに入れ込んでいたようです。
▲珍しい小物をいろいろ並べていくエドウィン・スミスとオリーヴ・クックに特徴的な誌面。オリーヴ・クックの口癖は「adorable」だったそうで,これは日本の「かわいい」というセンスに近い感じがします。男の集める骨董は,かわいげがないものが多いのですが,オリーヴ・クックがいることで『土曜日の本』のガラクタ図版には,どこかかわいらしさがあります。
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62. 1945年の『土曜日の本』(2013年2月7日)
●『土曜日の本』その5
1945年10月刊行。戦争が終わってから最初の『土曜日の本』です。第5号です。手元にある版は,ダストラッパーが破けて背も焼けて赤が色跳びしています。まだエコノミー・スタンダード仕様です。『土曜日の本』は,年1回発行の雑誌ですが,広告は入りません。読者が購入することで成り立つ雑誌ですが,読者がついてきて,制作陣の調子も上がってきています。
内容は,詩人・俳優・作家・漫画の仕事の実際,イタリアの犯罪学者ロンブローゾやべーカー街221B番地,バレエの楽しみあれこれ,ナポレオン3世の妻ユージニー,19世紀の美術商チャールズ・オーガスタス・ハウウェル,19世紀の料理本の代名詞的存在ビートン夫人,コルヴォー男爵,フローベルの『ブヴァールとペキュシェ』,ネアンダルタール人など,多彩なトピックを取り上げています。充実した号です。
『土曜日の本』のグラフィック面で重要な役割を果たすようになる写真家エドウィン・スミスと著作家オリーヴ・クックの2人組,誌内の道化役のような役割をになうフレッド・ベイソン(古書籍商,独身)が登場する号です。
■第5号『THE SATURDAY BOOK FIFTH YEAR』の内容
THE SATURDAY BOOK FIFTH YEAR
edited by Leonard Russell
HUTCHINSON
15s net
This book, published in October, 1945, was made and printed at the Mayflower Press (of Plymouth) at St. Albans, by William Brendon & Son Ltd., and is produced in conformity with the authorized economy standards. The colour plates were engraved and printed by the Grout Engraving Co., Ltd. of Bromley, who also printed the Low series of portrait.
ダストラッパー図案:Laurence Scarfe
『THE SATURDAY BOOK FIFTH YEAR』の目次
002 Contents(目次)
003 title page
004 Editor's Note: L. R.
♦005 Yesterday
005-048 1895: A Panorama
(グラフィック)『THE SATURDAY BOOK FIFTH YEAR』刊行時1945年の50年前,1895年風俗の新・旧,上流・中流・下層を写真と図版で構成。
♦049 English Institution
049-058 All Souls: A. L. Rowse
(エッセイ)英国的としか言いようのない組織のひとつ,オックスフォードのAll Souls Collegeについて。
♦059 Work
059-070 1. Poet: Stephen Spender(1909~1995,詩人)
(エッセイ)詩人スティーフン・スペンダーが語る詩人の仕事の実際。集中,インスピレーション,記憶,信(faith),うた。
071-074 2. Actor: Laurence Olivier(1907~1989,俳優)
(エッセイ)俳優ローレンス・オリヴィエが語る俳優の仕事の実際。話し方,下調べ,本能派かメソッド派か。
075-085 3. Boys' Writer: Frank Richards(1876~1961,Charles Hamilton,多作で知られる作家)
(エッセイ)少年・学園もの作家の仕事の実際。当時のだれもが知る学園もの小説「Billy Bunter of Greyfriars School」シリーズの作家フランク・リチャーズによる自己分析。
086-089 4. Comic Artist: Nicolas Bentley(1907~1978)
(エッセイ)ニコラス・ベントレーが語るコミック画家の仕事の実際。影響をうけたものと作業の実際。
♦090 Play
090-096 1. Unforgettable Days: Bernard Darwin
(エッセイ)バーナード・ダーウィンのスポーツ・エッセイ。子どもっぽくて無邪気な「snobbishness(紳士気取り)」を持っていたスポーツとゲームのヒーローたち。1890年代を中心に。
097-102 2. From Herbert Farjeon's Cricket Bag: Herbert Farjeon(1887~1945)
(エッセイ)作家エリナー・ファージョンの弟ハーバート・ファージョン(Herbert Farjeon,1887~1945)の遺稿から。クリケットについてスケッチ2編。ハーバート・ファージョンは20世紀前半のイギリスの演劇の世界で,俳優,劇作家,レヴュー作家,劇評家,ノンサッチ版シェークスピア全集の編者,劇場支配人として活躍した。
♦103 Crime
103-108 1. Lombroso: L. Radzinowicz(1906~1999,ケンブリッジの犯罪学者)
(エッセイ)イタリアの犯罪学者チェザーレ・ロンブローゾ(Cesare Lombroso,1835~1909)について。筆者はLombrosoの弟子Enrico Ferri(1856~1929)の弟子。
109-112 2. Coversation in Baker Street: Howard Spring(1889~1965,ウェールズの作家)
(エッセイ)べーカー街221Bについて。
♦113 Public Life
113-126 12 Portraits: Low
(グラフィック)デヴィッド・ロウ(David Low,1891~1963,漫画家)による12人の肖像。J. B. Priestley,A. Eden,J. Huxley,A. Bevan,H. Morrison,M. Hess,B. Russell,Q. Hog,C. E. M. Joad,W. Beverridge,H. Laski,T. S. Eliot。
127-128 A Letter to Low: Dylis Powell
(エッセイ)ロウの描くカリカチュアを賛える。
♦129 Private Life
129-144 Household Gods: Edwin Smith(1912~1971,写真家)
(フォト・エッセイ)英国の家庭用品,家具,器。エドウィン・スミス(Edwin Smith)の写真とテキスト。
♦145 Country Pleasures
145-152 Scrapbook: Douglas Glass
(グラフィック)ダグラス・グラスの写真。イングランド田園風景・人物。
♦153 Town Pleasures
153- The Anatomy of Ballet: A. V. Coton(Edward Haddakin,1906~1969)
(フォト・エッセイ)バレエの楽しみあれこれ。写真と文で構成。1948年に公開されるイギリス映画『赤い靴』へ連続する雰囲気があります。『The Anatomy of ~(~の解剖学)』は,ロバート・バートン(Robert Burton,1577~1640)の『メランコリーの解剖学(The Anatomy of Melancholy)』(1621年)に由来し,タイトルの定番の1つになっています。
♦177 Colour
177-192 Parallels in Paint: Olive Cook(1912~2002,作家)
(グラフィック)19・20世紀のフランス絵画とイギリス絵画の比較。カラー図版。エドウィン・スミスの写真のと共作で『THE SATURDAY BOOK』の主要寄稿家になるオリーヴ・クックの初登場です。
♦193 People
193-199 1. Eugenie: C. V. Wedgwood(Dame Cicely Veronica Wedgwood,1910~1997,歴史家)
(エッセイ)ナポレオン三世の妻Eugenie, Empress of the French(1826~1920)について。
200-206 2. Slight Sketch of a Wonderful Man: William Gaunt(1900~1980,美術史)
(エッセイ)ラスキン,ミレー,ホイッスラー,スウィンバーン,ロセッティらと親しかった美術商チャールズ・オーガスタス・ハウウェル(Charles Augustus Howell,1840?~1890)について。
207-214 3. Mr and Mrs Beeton: Nancy Spain(1917~1964,ジャーナリスト)
(エッセイ)ベストセラーの家政本『Beeton's Household Manegement』と料理本『Mrs Beeton's Cookery Book』の編著者Isabella Mary Beeton (1836~1865)とその夫Samuel Orchant Beeton(1831~1877,出版業)について。ビートン夫人は著者のNancy Spainの大おば。(Nancy Spain: Mrs Beeton and Her Husband: London: Collins: 1948.)
215-234 4. The Battle of Holywell: A Story of Baron Corvo: Julian Symons
(エッセイ)コルヴォー男爵(1860~1913,Frederick William Rolfe,作家)について。Julian Symonsの兄A. J. A. Symonsの著書『The Quest For Corvo』について。1895~98年,Rolfeが「Frederick Austin」と名乗りHolywellに住んでいたときのお話。2012年にA. J. A. シモンズの『コルヴォーを探して』(早川書房)が河村錠一郎訳で出ています。
♦234 Fiction
234-256 1. Welsh Rabbit of Soap: A Romance: J. Maclaren-Ross
(小説)ソーホーのはずれで出会った文学的で思わせぶりなVicky Baker22歳のお話。
257-262 2. When Miss Coles Made The Tea: Norah Hoult(1898~1984,作家)
(小説)書店に就職したオリーヴ・コールズがお茶の時間にしたことは…。
263- 3. The Other Side of the Medal: Stella Gibbons(1902~1989,小説家)
(小説)1366年,サマセット,ダンスターのThomas Colmord「病の時代」をめぐる手記。
♦269 Endpapers
269-274 1. Was Mr. Ford Right ? : Ernest Newman(1868~1959,音楽評論家)
(エッセイ)フローベルの『ブヴァールとペキュシェ』から書き起こされる「歴史」論。ヘンリー・フォードがいうところの「Hisitory is bunk(歴史はでたらめ)」は正しいのか?
275-278 2. Circe's Isle: Alan Houghton Brodrick
(エッセイ)イタリアMounte Circeo周辺。ネアンデルタール人の発見場所散策。
279-284 3. Mr Somerset Maugham: Fred T. Bason(Frederick T. Bason 1907~1973,日記記録者。モームの書誌研究家,サイン収集家)
(エッセイ)サマセット・モームについて。古書籍商で有名人のサイン収集家フレッド・ベイソン(Fred T. Bason)は『The Saturday Book』は常連寄稿家になります。
285-288 4. Music in Babel: Thomas Russell(~1984)
(エッセイ)1945年の音楽展望。国際語/国語としての音楽。
▲都市生活者の愉しみとしての「バレエの解剖学(The Anatomy of Ballet)」のページから。Brenda Thompsonのイラスト,Brassai,Merlyn Severn,John T. Knight,Peggy Delius,Sasha,Pollard Crowther,Barbara Morgan,Tunbridge-Sedgwick,Douglas Glass,Roger Woodらのモノクロ写真で構成されています。編集部はバレエに相当入れ込んでいます。映画『赤い靴』(1948年)冒頭の観客みたいな雰囲気だったのかも知れません。Peggy Deliusは作曲家フレデリック・ディーリアスの姪です。
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61. 1944年の『土曜日の本』(2013年2月6日)
●『土曜日の本』その4
1944年10月発行の第4号です。エコノミー・スタンダード仕様で,紙質は本文用の紙も図版用のコート紙もよくはありません。それでも,はじめてカラー図版が入りました。手元にあるのはダストラッパーなしの裸本です。
ちょっとした原稿差し替え事件が起こっています。この号から巻末に「ENDPAPERS」という時評的なコラムを集めた2段組のコーナーがつくられたのですが,その冒頭を飾るはずだったジョージ・オーウェル(George Orwell,1903~1950)の書評エッセイが急きょ差し替えになっているのです。目次は図版ページと同じコート紙に印刷されていたため,差し替えが間に合わなかったようで,目次には「George Orwell: Benefit of Clergy」掲載となっているのですが,本文にはオーウェルのエッセイの掲載はなく,デザイナーのLaurence Scarfeの「Incident」というテキストに変更されています。
オーウェルのテキストはサルバドール・ダリ(Salvador Dali,1904~1989)の自伝『わが秘められた生涯(The Secret Life of Salvador Dali)』(Dial Press,1942)についてのものでしたが,ダリ特有の露悪的な文章の引用を含むオーウェルの鋭いエゴイズム批判に版元の腰がひけたのでしょうか,急きょ没になってしまいました。このテキストは1946年に単行本収録という形で別の版元から発表されます。たぶんこの件で『土曜日の本』は,オーウェルという高いポテンシャルを持つ寄稿者を失いました。残念な,へなちょこぶりですが,『土曜日の本』らしいといえば,らしい出来事です。
とはいえ,1944年の戦時下に,取り上げた題材もイギリスの住宅外観,亡霊を殺した男の実話,ルードウィッヒ2世,錬金術,天文学と占星術,英語の将来など,ごたまぜ感がいい方向に回り始めた,充実した内容です。
ジュリアン・シモンズ(Julian Symons,1912~94,ミステリー作家)による兄A. J. A. シモンズ(A. J. A. Symons)の小伝も収録されています。A. J. A. シモンズの邦訳は『コルヴォーを探して(The Quest for Corvo)』(早川書房,2012年)が河村錠一郎訳で出ています。
また,『The Natural History of ~(~の博物誌)』のようなタイトルをフットボールなどに適用して『フットボールの博物誌(The Natural History of Football)』と題しているのですが,このスタイルの読み物をいろいろなトピックで掲載し始めます。
グラフィック面では,オリーヴ・クック(Olive Cook,1912~2002)とともに主要な寄稿者となる写真家エドウィン・スミス(Edwin Smith,1912~71)が初登場しています。
■第4号『The Saturday Book 4』の内容
The Saturday Book 4
edited by Leonard Russell
with illustrations by Laurence Scarfe
HUTCHINSON
This book, published in October, 1944, was made and printed at the Mayflower Press (of Plymouth), at St. Albans, by William Brendon & Son Ltd., and is produced in complete conformity with the authorised economy standards. Colour plates by the Grout Engraving Co., Ltd.
『The Saturday Book 4』の目次
002 The Contents(目次)
003 title page
004-006 Editor's Note: L. R.
1944年春の夕暮れ,『土曜日の本』の第4号編集作業中,ドイツ軍の空襲で編集部の屋根が落ちてしまいます。そのときラッセル編集長にアイデアがひらめきます。London Philharmonic Orchestra の演奏で『The Saturday Book Concert』をロイヤル・アルバート・ホールで開くのはどうだろう。それに『土曜日の本』にカラーページもあっていいんじゃないか,写真ページを増やしてもいいんじゃないか。その結果が第4号となります。
ロイヤル・アルバート・ホールでのコンサートは1945年1月6日午後2時半に開演。この演奏会ではベンジャミン・ブリテンの『シンフォニア・ダ・レクイエム(Sinfonia da Requiem)』が演奏されました。この曲は日本の皇紀2600年奉祝曲(西暦1940年)として委嘱されたものの,そのタイトル『鎮魂交響曲』が問題となって日本での演奏が拒否された曲です。日本での初演は1956年で,演奏はNHK交響楽団,指揮はブリテンでした。
♦007-064 ENTERTAINMENT ALBUM Manners and CUSTOMS of the English
(グラフィック)「イギリス人らしさ」の何たるかを「イギリス人の流儀と慣習」と題して写真とキャプションでユーモラスに,時に皮肉も込めて構成。例えば,「Well-known love of animal(よく知られた動物愛)」というキャプションで,犬と散歩する男性,帽子をかぶる馬,ペット専用の墓などの写真に続いて,狩猟で銃を撃ち放つ写真も掲載しています。「Weakness for adventurous hats(奇抜な帽子への抜きがたい愛)」「Reluctance to throw anything away(どんなものであれ,ものを捨てることへのためらい)」「Tolerance of strange statuary(奇妙な彫像に対する寛容)」といった写真キャプションが続き,楽しめます。
♦065 HUMAN NATURE
065-072 Tomorrow: the Country: H. E. Bates(小説家)
(エッセイ)英国の田舎の過去と将来について。
073-082 Tomorrow: the City: Tom Harrisson(1911~76,博識家)
(エッセイ)英国の都市の過去と未来について。
083-086 The Home of the Gael: Dr. F. Fraser Darling (1903~79,スコットランドに関わりの深い生態学者・作家)
(エッセイ)スコットランドのHighlandsとIslandsの将来について。
087-096 The English: Have They a Future?: G. I. Renier
(エッセイ)「イギリス人」の将来。英語が「イギリス人」の所有物でなくなる。
♦097 NATURE
097-128 An Alphabet of BIRDS and BEASTS: James Fisher (1912~1970,作家,ナチュラリスト)
(フォト・エッセイ)イギリスの鳥と動物。写真とテキストで構成。
♦129 PICTURES & HOUSES
129-144 Art in England-Part1/Part2: Philip Henry
(グラフィック)カラー図版14点登場。イギリスの画家の作品。スタンレー・スペンサー(Stanley Spencer)ほか。
145-160 The Domestic Shell: photographs and commentary by EDWIN SMITH(1912~71,写真家)
(フォト・エッセイ)イギリスの一般住宅・集合住宅の外観について。エドウィン・スミスは,後に結婚することになるオリーヴ・クックとのコンビで『THE SATURDAY BOOK』のグラフィック面での主要寄稿者に。
♦161 STRANGER THAN FICTION(小説より奇なり)
161-171 The Strange Case of King Ludwig II of Bavaria: Ernest Newman (1868~1959,音楽評論家)
(エッセイ)バヴァリアのルードウィッヒII世の「狂気」について。
172-177 The Public Spirit of Francis Smith: Margery Allingham (1904~66,ミステリー作家)
(エッセイ)1804年ハマースミスの亡霊を殺した男フランシス・スミスの話。
178-183 Bessemer: Derek Hudson
(エッセイ)鉄鋼のSir Henry Bessemer(1813~1898)について。
184-191 The Land of the Brudenells: Cyril Ray
(エッセイ)第7代カーディガン伯爵James Thomas Brudenell(1797~1868)のクリミア戦争体験。衣装の「カーディガン」の由来になった人です。
192-197 Afterthoughts on the Affair: Val Gielgud(1900~81,俳優。ジョン・ギールグッドの兄)
(エッセイ)1940年のドイツによるフランス占領の原因について考察。
♦198 FICTION
198-203 The Last Boat: Dilys Powell
(小説)ロンドンからパリに向けて出発した男が見たものは…。図版1枚。
204-209 The Alarm Bell: Donald Henderson
(小説)通勤途中,マッキントッシュを着た男は事件の現場に…。
210-215 The Two Retired Chess Champions and the Girl Who Prefered to Play Draughts: J. Maclarren-Ross
(小説)二人の酔っぱらいの元チェス・チャンピオンと17歳の少女のお話。図版1枚。
216-219 A Boy Hid Up: Affleck Graves
(小説)パブでの飲み語り。図版1枚。
220-229 Problems at Night: Peter de Polnay
(小説)憲兵と囚われのドイツ人軍曹・イギリス人・フランス人。図版1枚。
♦230 CREATION
230-235 Alchemy:Ancient and Modern: E.J.Holmyard(1891~1959,科学技術史)
(エッセイ)古代の錬金術から化学が作り出すナイロン・プラスチックまで。
236-241 Watchers of the Skies: Sir Harold Spencer Jones(1890~1960,天文学者)
(エッセイ)天文学について。占星術との違い。
♦242 RECREATION
242-248 The Natural History of Football: Harold Hobson
(エッセイ)フットボールの博物誌。それまで主題化されてこなかったトピックの「博物誌」は,その後『THE SATURDAY BOOK』が得意とします。
249-254 A Player of Game: Julian Symons(1912~94,ミステリー作家)
(エッセイ)ゲーム好きだった兄A. J. A. Symons(1900~41,作家・伝記作家)の思い出。
♦255 ENDPAPERS(2段組で構成)
255-259 Incident: Laurence Scarfe
(エッセイ)目次では「George Orwell: Benefit of Clergy」掲載となっていますが,急きょ差し替えで,デザイナーのLaurence Scarfeのテキストに変更されています。
259-260 A London Portrait: J E
(エッセイ)ナイトブリッジのミス・ヒルの経営する小さなお店の話。
261-264 Benjamin Britten: Desmond Shawe-Taylor
(エッセイ)ブリテンの交響曲『Sinfonia da Requiem(鎮魂交響曲)』について。
265-269 Notes from the Coversation of Two Children: Tom Hopkinson
(エッセイ)二人の少女サラとジェーンの物語の構想。図版4枚
270-274 Strange Region: Alan Houghton Brodrick
(エッセイ)フランスの離れ里Eyssalでの生活。
275-278 A Letter to Dilys: Alan Dent(1905~,劇評家)
(手紙)劇評家が英国海軍に入隊した次第。
279-280 Rembrandt of the Camera: Joyce Emerson
(エッセイ)ソーホーにスタジオを構えるProfessor Victor Maxim Moorkens。
281-283 The World of Fiction: Daniel George
(エッセイ)最近のフィクションの傾向について。
284-288 On Being Out of Date: H. M. Tomlinson(1873~1958,作家・ジャーナリスト)
(エッセイ)流行遅れになることについて考察。
▲目次には「GEORGE ORWELL Benefit of Clergy」とあるのですが,本文にはオーウェルのエッセイの掲載はありません。失態です。出版において版元の腰がひけてしまった,どたばたした現場が見られるという意味では貴重です。
▲本文255ページで,ジョージ・オーウェルのテキストを「unavoidably(余儀なく)」削除したと告げています。
オーウェル側の見解は,「聖職者の特権―サルバドル・ダリ覚え書き」(小野寺健訳)の収録された平凡社ライブラリーの『オ-ウェル評論集〈2〉水晶の精神』(2009年)の「編者解題」(川端康雄)に,少し詳しく述べられています。ダリの本からの引用が「猥褻」という理由で,版元のHUTCHINSONが没にすることを決定したようです。製本段階の決定だったようなので,もしかしたら,オーウェルの「聖職者の特権―サルバドル・ダリ覚え書き」が入った『The Saturday Book 4』も存在するのかも知れません。20世紀の雑誌にとって「猥褻」な領域は,その方向性を決める一要素でもありますが,この事件で,『土曜日の本』は自己規制をしたようです。
ところで,平凡社ライブラリーの『オーウェル評論集〈2〉水晶の精神』の「編者解題」(川端康雄)では,『サタデー・ブック』について,「レナード・ラッセルらによって,一九四一年から四二年まで毎年一冊出された文集。十二号まで発行」とありますが,赤字部分は明らかな誤りで,『サタデー・ブック(土曜日の本)』は1975年発行の第34号まで続きます。